『母の日』2019年5月10日号
 

 毎年、『母の日』になると思い出すことがあります。

いつも、真っ黒になりながら木炭を作りに行っていた母に、少しでも美味しい物を作っておこうと
冷蔵庫を開けたら、アスパラと人参と竹輪が入っていました。人参は切って油で炒め、そこに、竹
輪を切って、マヨネーズで和え、仕事から帰ってくる母を、今か今かと心待ちに待っていました。

母が帰って来て、「わぁーいい匂い」その時の笑顔は五十年以上経った今でも鮮明に覚えてい
ます。次の瞬間、鍋の蓋を開けてびっくりしたような顔。

「アスパラ入れちゃったの?」

私は味噌汁を作ろうとして、中に入れる具をアスパラにしたのでした。

「あらぁ、初めて食べるけど美味しいわね」

その時の、母の一言が今の仕事に繋がる、私の創作料理の原点だったのかもしれません。

一人の力だけで、新たな発想が自然と生まれてくる訳ではありません。日常の中で飛び交う何
気ない一言が、自分の発想力や思考を補うきっかけになる時があると思うのです。

今になって思えば、私が受けたように、人に対してもそのような心遣いがあったのだろうかと思
い返す時があります。子育てにおいても、認めてあげて、褒めてあげる。私には、足りなかったか
なと、反省することもありました。

人は、無意識の内に、誰かに認めてくれることに喜びを感じます。誰かが認めてくれたら、生き
る希望もたくさん湧いてくるはずです。美味しい料理を作り、会話を通して、お客様と向き合いなが
ら、心も体も健康でいたいなぁと思うのです。

おそらく母は、そんな私をにっこりと見守ってくれていると思うから・・・。