#56 穿孔貝と世界クラスの水族館
Boring shell and world class Aquariums
【写真】 ゴールデンゲイトブリッジとサイクリスト ゴールデンゲイトブリッジ公園のビューポイントにて
Photo above: Golden Gate Bridge and cyclists, View point near Battery Lancaster, Golden Gate Bridge Park, San Francisco, California, USA. On November 18, 2019.
国内外の水族館ではさまざまな水棲生物が展示されていますが、淡水魚等の展示はあっても館内の一部に限られ海洋生物の展示(生態展示と標本展示)がほとんどだと思います。
したがって、その立地は、大洋に直接か、または海湾に面するかというように臨海部が多いことでしょう。
もちろん、埼玉県にあるさいたま水族館のように淡水系魚類等を専門とする水族館もあります。
このページでは、私が訪問したいくつかの水族館の中で「生きている穿孔貝」を展示している大変珍しい事例がありましたので、紹介しましょう。
#56-1 モントレーベイ水族館 Monterey Bay Aquarium
モントレー市 Monterey City は、アメリカ合衆国・カリフォルニア州 California State、サンフランシスコ San Francisco のぼぼ南南東約140kmに位置しており、車で約2時間の距離にあります(図1)。そのモントレー市の北方、モントレー湾の沿岸にモントレーベイ水族館があります。
図1 サンフランシスコ〜モントレーの案内図 Google Mapより引用
Fig.1 Guide map from San Francisco to Monterey, California. After Google Map.
モントレー市の北方、レストランや土産物屋・ホテルの建ち並ぶ水族館前の沿道一帯は、 キャナリー・ロウ Cannery Row(強いて訳せば ”缶詰工場通り”)と呼ばれ、モントレーの一大観光地となっています。
キャナリーロウの先に、この水族館が位置します。運営は財団 The Monterey Bay Aquarium Foundation が行っており、イベント時の補助はあるものの州政府等からは運営資金はいただいておらず、入場料収入や寄付金、土産物やレストランの売り上げ等で賄っているそうです。
館のホームページによれば、年間入場者は約180万人、2016年までの累計入場者数は約6000万人とのことです。
この水族館は、魚( サーディーン sardine;イワシの幼魚)の缶詰ブランド PORTOLA をPRする大きな看板が正面下部の壁面に貼ってあったり、また屋根には背の高い煙突が何本かそびえていて印象としては水族館に似つかわしくありません。
外観はまるで何かの工場のようです(図1)。それもそのはず、このモントレー沿岸では、かつて多くの缶詰工場が操業していた歴史があり、それを踏まえた外観にしているのです。当然ながら、シルバーの煙突からは缶詰を作る際の煙は決して出ていません!
図2 左:モントレーベイ水族館の正面玄関 建物の外観は往事の缶詰工場風に仕上げられている
右:モントレーベイ水族館のエンブレム ジャイアントケルプのデザインになっている
Fig.2 Entrance of Monterey Bay Aquarium beside Cannery Row. This outside looks like the ancient cannery. Note that a commercial signboard of " PORTOLA BRAND SARDINES" on the wall is conspicuous because of bigger than the sign of the Aquarium.
The Aquarium having some tall silver chimneys as the old cannery never produce the cans of any kind of fishes! I visited the Aquarium with my son on Saturday, November 17, 2019.
入館してわかったのですが、この水族館の建物が往事の缶詰工場を意識した外観になっているばかりではなく、水族館ではあるものの、館内にはきちんと 缶詰工場の設備や歴史に関する広い説明・展示コーナー substantial exhibits about the history of cannery row and many equipments of the factory があるのです。
館内の展示を詳しく記せば、エントランスから入って直ぐのところに缶詰工場の内部が一部再現され、缶詰を作る機械や蒸気釜や配管などの実物展示や工場の歴史に関する説明板は理解を助けてくれます。このように街の歴史部分をしっかりと水族館内で学習できるようにした配慮には頭が下がります。
モントレーは、実はサンフランシスコがいわゆるゴールドラッシュ等で栄える以前、税関などの政府機関が設置され、カリフォルニア一帯の中心地でした。さらに遡るとスペインの領地であった時代もありました。
メキシコに近いこともあり、水族館内にはスペイン語表記が目立ちます。
もちろん、館内にはラッコ sea otter をはじめとする海洋性の哺乳動物、魚類・イソギンチャク・貝類、海藻などの動植物、海洋生物が数多く飼育・展示されている こともあり、この水族館は大変人気が高く、小さな子どもから大人・高齢者までおおぜいの人たちが訪れています。
私がこの水族館を訪問したのは、2019年11月15日(土曜日)の午後です。
大人一人の入場料は、なんと49.95ドル!(約5,345円)です。残念ながら、まだ私はシニア料金(39.95ドル)には該当しませんでした。
それほど事前知識を持たずに出かけたのですが、展示されている生物の種類と工夫された展示方法には大変感激しました。館内レストラン(これもすばらしい)での昼食を含めて結局3時間も持てなかった滞在でもその充実した展示・設備の良さから入場料がとても高いとは思えませんでした。
ゆっくりと見ていたこともあって、この日は海面につきでた館外テラスも含めて1階部分しか見学できませんでした。
まず、最初の海洋生物の展示フロアーは、"The Ocean's Edge" という名称です。この名称には、とても親近感を持ちました。と言うのも、海洋生物に関する入門書、かつ私のお気に入りの洋書である、レイチェル・カーソン著"The Edge of the Sea"の題名と全く同じ意味だからです。それに私は岩石海岸で地質調査や生物調査をしているからとも言えます。
図3 1階の展示場 "The Ocean's Edge" の入り口
Fig.3 The entrance of "The Ocean's Edge" at the first floor. I had a special affinity to this name. Because I thought that this name is very similar to the title of the book on marine creatures,"The Edge of the Sea", my favorate book written by R. Carson, published in 1955.
1階では、ジャイアントケルプ Giant kelp の入った大型水槽、沿岸の海洋生物(貝類などの軟体動物やイソギンチャクなどの腔腸動物、カニなどの甲殻類、魚類など)、波しぶきや潮の干満の動的展示、そしてシギといった野鳥の飼育展示を見学できました。
図4 ジャイアントケルプの展示水槽 魚類など他の生物も飼育されている
Fig.4 The bigger aquarium of Giant kelp, many kind of fishes, and other marine creatures in bigger aquarium. The Giant Kelp growing area is like land forest, so to speak.
このような展示に混じって、何と!意外にも!生きている穿孔貝の生態展示 ecological exhibit of living rock-boring shells があって、これには大変驚くとともに心底感激しました。
#55に紹介しましたように、私は海から離れている内陸部の埼玉県東南部において約1ヶ月間の穿孔貝等の飼育経験がありますが、この穿孔貝はずっと大きく、大変りっぱです(もちろん、種類が異なります)。
やや大きめの水槽に展示されていた穿孔貝は、次の2種です。
英語名 Piddock shell、 学名 Chachiea ovoidea
英語名 Piddock shell、 学名 ?(モントレーベイ水族館に問い合わせ中 )
* Under inquiry about both English common name and scientific name of these rock-boring bivalves to the Aquarium. Immediately after getting the reply, the name will be introduced here.
おそらくモントレー湾の潮間帯から潮下帯の岩礁から基層である泥岩の塊とともに穿孔貝をそのまま採取してきたものでしょう。
穿孔貝の餌は海水中のプランクトンですからそれほど飼育は難しくないと思います。餌に気を使うことの多い、世話のやける哺乳動物と違って、とても飼育しやすいことでしょう。なにせ臨海の水族館ですからそばの海からいくらでも新鮮な海水を汲み上げて循環させればよいのです。
私の観察では、どの穿孔貝も大変元気でした。元気と言ってもカニのような移動性の表生生物 Epifauna のように動きまわるわけではありません。白い水管部分をしっかりと貝殻後端から伸展して膨らませ、大きめの入水口から海水を取り入れ、小さめの出水口から吐き出しています(図5)。
展示や説明の都合上、本来岩石内部にある貝殻と水管部分は周囲の岩を取り除いて見えるようにしています。本来の生態としては、海底面(岩石表面)において水管部分が見えるだけです。私の見立てでは、図5の手前に見える貝は本来の棲管における場合と比較して倍以上の太さに膨らんでいると思います。
岩を剥がされ露出状態の穿孔貝が生息上有利か不利か私には言及するだけの知識や経験がありませんので、何ともいえません。ただ、外敵の肉食性魚類や巻き貝等が一緒ではないので、食べられる危険は全くなく、安心できると言えますね。ある意味、楽園ですね
図5 生きている岩石穿孔性二枚貝類の展示状況 周囲の岩盤をかなり剥がして貝を露出させている
Fig.5 The exhibit of living rock-boring bivalves. Rock, which is called substrate by scientists, around the shell and the siphon, is removed partially for visitors in order to observe their shell and their activity of these bivalves.
The milky long siphon extrude from posterior end of each shell. Notice that each tips both inhalant and exhalant siphon is black or brown. A pair of white arrows added show the movemnet of inhalant and exhalant current.
In a sense, this small aquarium may be a paradise for these naked bivalves without predators; carnivorous fishes, snails, etc. But, their reproduction in artificial condition of the aquarium is questionable or imperfect, I think.
私の感激はこの飼育展示だけではありません。水槽横の解説版には石油掘削のドリルビット(刃先)と貝殻の模型が並列展示されているのです(図6)。岩を削る道具の違い(特殊合金 vs 貝殻)や穿孔能力・スピードの違い(約2分 vs 約8年)というように両者の比較がなされていて、いかに穿孔貝が粉骨砕身かつ地道に頑張っているかがわかります。
穿孔貝の調査研究をしている私の立場からは、生態展示と合わせてただただすばらしいと感激するばかりでした。
大変残念なことに、この穿孔貝の展示コーナーに立ち止まって水槽をのぞき込み、説明板にうなづく入館者はほとんど見受けられませんでした。
図6 石油掘削のドリルビット(左)と岩石穿孔性二枚貝類(右)の比較説明
Fig.6 A "special" explanation plate of the differences between oil drill-bit and shell of living rock-boring bivalves. Instead of their shell softer than the drill-bit made of special hardy alloy, these kinds of rock-boring bivalves used to bore the harder substrate, for example siltsone, in order to get their safety space from the predator and the destruction of strong wave for their lifetime.
I think that this exhibit and correlation are very excellent from the point of view for our correct understanding of their ecology and evolution.
このようなすばらしい体験が得られたことから、日本への帰国後しばらくしてこの水族館に感想のメールを送らずにはいられない衝動に駆られました。とても拙い英文でしたが、真意は伝わったようです。その証拠に、直ぐさま展示担当者からお礼の返信がありました。
この穿孔貝の展示の先にも、さまざまな海洋生物が生きた状態で展示されています。
ウニ Sea urchin; 一般名:Sand dollar 学名:Dendraster excentricus の展示水槽の中には数多くのウニがいて、中には砂底に斜めに突き刺さったものもありました。
水槽上部の説明文によれば、静水下では砂底に斜めに突き刺さり、粗い海水下では、海面に平坦にしているか、砂底下に潜るそうです。さらに、成体は骨格自体が重いので海流と戦えるけど、幼体は、重い砂を飲み込んで自身の体重を増やすとのことです。
図7 ウニの展示水槽 砂底に残されているウニ(a)の移動痕とウニ(b)との衝突(ウニのカーリング?)
一方、ウニ(c)はなぜか砂底に斜めに突き刺さっているのが不思議です。
Fig.7 Sea urchin; Sand dollar, Dendraster excentricus in the aquarium. Sea urchin(a) is moving on the sandy bottom as the bulldozer to leave its track and to have a collision with other sea urchin(b) finally. "Curling Game by Sea urchins"
A passage made by single Sea urchin(a) remained on the surface of the bottom. As strong bottom current would take place inside this aquarium, this trace colud continue to be same shape for a while, but other urchin could deform this trace.
In other words, this wide and flat passage wiht both side banks and terminal banks may be a characteristic trace of this urchin, I think.
○ここで、一つ疑問が生じてきます。
このような平たい形態をした骨格で、ウニ(c)のように海底面にどのように、そしてなぜ斜めに潜り込むのでしょうか?
Here, I have one question; How and Why do some urchins(c) dig into the sand bottom obliquely not in rough water but in quiet water ?
そして、ここでも感激がありました。
1匹のウニ(a)が砂の表面を移動した痕が形成されていたのです(図7)。また、ウニ(a)はウニ(b)に衝突して停止したのでしょうか、ウニ自身のカーリングゲームみたい curling game by sand dollars ですね。 両側および端部にみられる土手のような盛り上がりと、幅広い平坦部のセットは一部始終を見ていなくとも移動痕で判断して間違いありません。
現生生物の痕跡は化石の痕跡(生痕化石)を理解するのに大いに役立ちますので、この痕跡はおもしろいです。
古生物学者の中には、生痕化石の理解のために、わざわざ海に潜って現生の海棲生物の生態やその痕跡の観察を行う人もいるくらいです。
この水槽の底には、砂を移動させるほどの流れが発生しないと考えれば、この現生生痕はしばらく形を留めていることでしょう。しかし、他のウニが移動してきて破壊してしまうことも十分予想できます。
次の展示に移りましょう。
魚類や甲殻類等の水槽群が並ぶ、照明の暗いエリアの先には何やらカラフルにデコレーションされた太くて丸い柱が何本かあります。これは、水中ないし半水中の柱(木製やコンクリート製)に様々な付着生物 sessil organism、
たとえば大小のフジツボ barnacle やカキ oyster 、イソギンチャク sea anemone などが暮らしているという説明でした(図8)。
潮間帯から潮上帯にかけて設置された沿岸部の柱(コンクリート製ないし木製)には、高さによって付着生物の種類と数が異なっています(図8左)。つまり、帯状構造 Zonation がよく表れています。
この部分の説明には目を通していないのですが、生物の個体数や種数、高さの点から主に3つのゾーンに分けられるようです。
つまり、@灰色の生物(生物名?)の個体群からなる最上部のゾーン、A黒い巻き貝(タマキビ?)の個体群の多い中間のゾーン、B白いカキ?や色彩豊かなイソギンチャクやヒトデなどが数多く群がっている最下部のゾーンです。
また、図8右の写真のように大型フジツボの模型がたくさん付着している柱がありました。大型のフジツボの頂部〜底、さらに付着基部となる柱まで貫通した穴が開いています。つまり、フジツボの内部から見た外の(海中)世界が体験できるものですが、面白い発想ですね。
そう言えば、木製の柱はフナクイムシの食害を受けるのですが(#0-2 材に穴をあける貝 Bivalves boring into wood)、その説明はここにはなかったように記憶しています。
図8 岸辺の水没する柱への付着生物に関する展示 左の柱には帯状構造が表現されている
右の柱には大型のフジツボが展示されているが、反対側からのぞくことができる
Fig.8 Sessil creatures on the Pillar. The groups of the creatures on the pillar could be divided to main three zone based on the number of individuals and species of creaturs, and the height of the zone. The reason is that sea level can change from low tide line to high tide line in a day.
モントレーベイ水族館の展示をすべて見学できた訳ではありませんが、1階部分の展示を見ただけであってもこの水族館の展示レベルの高さやとてもよく工夫された展示方法がよくわかりました。
例えば、大量の海水が一度に透明な強化プラスチック製の天井を滝のように流れ下り、波に打ち付けられる雰囲気が体験ができる(疑似体験)施設があったり、またハンドルを回して人工的に強い潮流surge channel, surging waterを発生させてイソギンチャクの触手を左右に動かすという体験もできます。
また、海洋生物に触れられるコーナー(タッチプ−ル TOUCH POOL )では、インタープリターの方々(水族館ボランティア?)がていねいに説明してくれます。私が通りかかった際には、ジャイアントケルプの上部先端にある「浮き部分」を説明していただきました。
At crowded TOUCH POOL, a woman staff with a genuine Giant kelp, maybe an interpriter or a voluntary worker, told me that an inflated part of Giant Kelp like a ball was the float of it on the top.
したがって、この水族館訪問をみなさまに強くお勧めします。
Although I visited the Aquarium for only three hours, I recommend the Aquarium because of many sophisticated and high level exhibits of marine creatures around Monterey Bay and, of course, the hospitality of staffs and the beautiful facilities.
あいにく今回の訪問日の天気はときおり切れ間から日が差すもののほとんど霧で、海が遠くまで見渡せませんでした(図9)。また、干潮に向かって潮が引いていく中、GREAT TIDE POOL という名のタイドプ−ルが現れました。
岩盤が現れていますが、地質(岩石)は何でしょうか?
モントレー付近の地質図(Jeseph C. Clark ほか,1997)をウェブでみると火成岩(白亜系の花崗閃緑岩 Cretaceous granodiorite )のようです。縮小された地質図のため、正確にはわかりません。
いずれにせよ、この水族館は大変頑丈な岩盤の上に建てられていることがよくわかります。
次回は青空の下でモントレー湾を一望しつつこの水族館を見学したいものです。私はできるだけ早いうちに2回目の訪問を実現させて、ラッコにもぜひ会いたいと思っています。
実現の曉には、続編を書きたいと思います。
図9 霧の日、モントレーベイ水族館の海側の外観 タイドプールが現れている
Fig.9 Outside view of the Aquarium beside Monterey Bay under foggy weather, sometimes sunlight through the slit of the clouds. Parts of the Aquarium is constructed on the rocky shore with some piles. A wide tide pool named "GREAT TIDE POOL" appears on the ebb.
What is the geology of this rocky shore? Maybe an igneous rock judging from the color and rock facies. According to the Geological Map of Monterey (Jeseph C. Clark, et al.,1997), Cretaceous granodiorite.
2日以上の入館を考えた場合、1年間有効の「メンバー Membership」になるのが良いようです。メンバーになると、入館料を払う人たちで混みあう通常のエントランスを避けて専用の入り口から入館できるようです。加えて、シニア料金があり好都合です。
ウェブサイトから入館チケットの事前購入やメンバーの登録と支払ができるシステムになっていて、大変便利です。
【参考】(2020年2月現在)
メンバー料金 Membership 大人一人 95ドル、シニア(65+) 75ドル
モントレーベイ水族館のウェブサイト Website of Monterey Bay Aquarium → こちら,here
【キャナリー・ロウ 街並みの紹介】
図10は、水族館正面入り口から南方をみたキャナリーロウです。手前のオーバーブリッジは、右の白い建物に水族館のエンブレムが見えますので、道路の両脇にある水族館の建物同士をつなげているものです。
道路の両脇には、この先約800mにわたってレストランや土産物店、ホテルなどが並び、人通りや車の往来の多いエリアになります。雰囲気の分かるもっと良い写真を撮れば良かったと反省しています。
図10 キャナリー・ロウ 水族館入り口から見る
Fig.10 View of Cannery Row. Photo in front of the entrance of the Aquarium. Seafood restraunts, Suvenier shops, Hotels, etc stand in a row on both sides beyond a front bridge over the road.
次に、図11は水族館の南約300m先にある、モントレー湾に面したシーフードレストラン FISHHOPPER です。レストランの建物は、モントレーベイ水族館の館内レストラン一帯と同様に岩場に建てた多数のコンクリート製の基礎と木製の柱で支えられていることが分かります。
海沿いの他の建物も同様に、コンクリート護岸やピラーとなっていることでしょう(陸側からは覗けませんが・・・)。恐らく満潮になれば半分くらい没するものと思われますが、台風や大型低気圧が来ない限りこの状態でも安心ですね。海を眺めながらこの地でのシーフード堪能は次回回しにしました。
図11 岩礁に一部立脚している海沿いのシーフードレストラン FISH HOPPER
Fig.11 Outside view of a seafood restaurant; Fish hopper beside the shore of Monterey Bay along Cannery Row. Note many pillars under the building, which may be submerged in the flood tide.
次の図12はキャナリー・ロウに直行する道路・プレスコットアベニュー Prescott Ave. で、丘の上の方向を見ています。坂がかなり奥の方まで続いていますが、手前から3、4台目の車が駐車しているあたりに一段、狭い平坦部があるのがお分かりになるでしょうか。これは海岸段丘の段丘面の一つです。したがって、直交する道路は段丘面をつなぐものとなっています。
図12 キャナリー・ロウに直行する道路・プレスコットアベニューの眺め
モントレー市に隣接する、パシフィックグローブ市の高台の方向を見る
Fig.12 View of Prescott Ave. which crosses at a right angle against the Cannery Row. Although we can not see a few set of slopes and flats here, the coastal terraces develope around Monterey and Pacific Grove.
Therefore, geomorphologically and geologically the surface of Cannery Row is called "Ocean View coastal terrace"; the lowest part of the Pleistocene coastal terraces, one of six in this area.
The other five from lower to higher are "Lighthouse ", "Peninsula College", "Sylvan", "Monte Vista", and "Huckleberry coastal terrace".
ウェブで入手した地質図(上記)で確認すると、6段からなる第四紀更新世の海岸段丘 Pleistocene coastal terraces であることが確認できます。
そして、キャナリー・ロウ一帯は海抜が最も低い地域ですから、"オーシャンビュー面 Ocean View coastal terrace"と呼ばれる最下段の段丘面にあたります。
ほかの5段は、低い方から順に
"ライトハウス面 Lighthouse coastal terrace"(北西部に灯台があり、これが乗る高台からくる名称か?),
"ペニンスラ・カレッジ面 Peninsula College coastal terrace"(市の中央部にある大学名に由来するのか?),
"シルバン面 Sylvan coastal terrace"(名称の由来不明),
"モンテ・ビスタ面 Monte Vista coastal terrace"(名称の由来不明),
"ハックルベリ−面 Huckleberry coastal terrace"(このモントレー半島の高台上部にはハックルベリ−の生る公園があるようです。)になります。
今回の観光では、オーシャンビュー面のキャナリー・ロウを水族館から南に歩き、緩い坂を上がって一段上のライトハウス面に出て、この面を走る道路を歩って水族館に戻りました。このようにわずかですが、海岸段丘を体験したことになります。
グーグルの衛星写真を見ても、モントレーやパシフィックグロ−ブ周辺の地形的な段差はよくわかりません。おそらく段丘面同士の比高が小さく、かつ段丘崖の傾斜が比較的緩いため、崖地(岩盤露出地)や緑地、未利用地として残ってはおらず、ほとんどが住宅地等に開発されているせいではないしょうか・・・
政府や州発行の地形図が手に入らないため、地形図の読図からの考察につなげることもできません。
このモントレーベイ水族館以外にも、生きている穿孔貝を生態展示している水族館が世界のどこかにあるかもしれません。もし、訪問する機会が持てましたら続編を以下に記したいと思います。
【写真】 サンフランシスコ湾にみられたカモメの仲間、レストハウス WARMING HUTの近くの波止場にて
Photo above: A kind of seagull at Torpedo Wharf near WARMING HUT, San Francisco Bay, California, USA. On November 18, 2019.
since:March.11.2020
last update: March.11.2020