#45 サンゴ骨格を穿孔する巻き貝 <イシカブラとムロガイ> Coral- boring gastropods;Magilus antiquus and Leptoconchus sp.
このページでは、私が所有している標本2種を用いて穿孔性巻き貝であるイシカブラとムロガイについて解説します。
#45-1 イシカブラ Burrowing coral shell: Magilus antiquus in coral
図1の写真は、イシサンゴ類に穿孔しているイシカブラ、英語名 Burrowing coral shell 学名 Magilus antiquusですが、左側の写真はよくある置き方で殻と棲管を、右側の写真は殻を示しています。
ある年、池袋のサンシャインシティ文化会館で開催された東京ミネラルショーで展示・販売されていたものですが、現生にしても化石にしても穿孔性巻き貝の実物を見ることが初めてなので、販売担当者と短い会話ののち直ぐさま、この標本を購入しました。残念ながら領収書もメモも残っていないので、購入価格は不明です。
後日販売業者が、購入時点では不明だったこの標本に関する情報をメールで届けてくれました。
産地はインドネシア・中央ジャワのソロリバーで、化石サンゴ中に入っていたものではないかということでした。
確かに、曲がりくねった棲管 tube の横断面を見ると、棲管内部は方解石 calcite で充填されており、他の棲管部分も空洞ではなく同様に充填されていると思われます。このような状況は十分に化石を証明しています。
図1 ミネラルショーで購入した、サンゴ骨格に穿孔しているイシカブラの化石 棲管と殻
略号 Abbreviation; S.殻 shell, T.棲管 Tube , K.竜骨 keel, A.殻頂 apex
Fig.1 A specimen of Magilus was sold at the Japanese dealer on the Tokyo Mineral Show, Sunshine City Bld., Ikebukuro, Tokyo.
The dealer told me that both coral and snail are fossils from Solo River, Central Java, Indonesia, by e-mail after shopping.
Although the age and the formation's name were unknown, this sample is very precious for me. Because this sample tell me snail's position in coral.
Many Magilus in coral are exhibited usually "apex-up" in the museum of the natural history like a leftside photo.
Abbreviation; S,shell, T.Tube, K,keel A,apex
標本としての価値を考えた場合、標本に対して正しい名称(学名や和名)が付いている他に、産地や産状、地層や年代、さらに採集年月日や採集者がはっきりしていることが要件ですから、地層や年代に関する情報の欠けたこの標本は不十分と言えます。それでも、サンゴに穿孔する巻き貝の実態がよくわかりますから貴重な標本として扱っています。
なお、イシカブラの分類上の位置は、バイ目、サンゴヤドリ上科、カブラガイ科になります。Massin, C. (1982)によれば、イシカブラ属は6種が提示されています。
○購入標本の検討 Examination of my purchase; fossil coral specimen from Indonesia
古生物学の大家である大森昌衛先生は、南太平洋・バヌアツへの研修旅行参加者がサンゴ塊から採集し、後日先生自身に提供されたイシカブラ標本1個体を、Massin(1982)等を参考にして検討されています(大森、2005)。そこで、これらの 論文を参照しつつ、私が購入した標本について点検していきましょう。
まず、Massin(1982)と大森(2005)を参考にして、この標本における部位の名称を確認してみます。
4層のコマ形の殻 shell、石灰質の棲管 tube、石灰質の棲管表面には細かい「しわ」、そして竜骨 ventral keelがわかります(図1)。
螺肋(らろく)が貝殻の下部から棲管の一部にかけて連続して確認できます。
また、大森(2005)は、殻および棲管をそれぞれ本殻および偽殻とも呼んでいます。
次に、貝殻および棲管の、サンゴ骨格に対する位置関係の検討です。私の標本は“不完全”ですから、この点を考察する必要があります。
イシカブラの棲管は最終的にサンゴの表面と平行になり、かつ竜骨が上方を向くという、大森(2005)やMassin(1982)の記述、および棲息姿勢を図示したMassin(1982)のFig.1に基づいて生時の状況復元を意識して標本を置き直すと図2のようになります。
つまり、殻頂 apex が最下部に向くように巻き貝の貝殻自体が棲管に対して下方に位置します。 このような貝殻の姿勢を "the apex down and the rostrum up"と言うそうです。したがって、貝殻を上方に向けた博物館等の展示やネットでみる写真は悪い置き方ではありませんが、正しくはありません。
なお、黄色矢印は標本採集時に剥がれたであろう、石灰質棲管の痕跡、言いかえると穿孔痕の雄型を示します。
Massin(1982)のFig.1は著作権上そのままではここには掲載できません。その代わりにその図をさらに概念化し、図3を作成しましたので、参考にしてください。
私たちが普通に見る巻き貝は螺塔先端を上にして、または傾けて海底面や岩石表面を這って生活している姿からすると全く上下逆さま upside down であり、どこか不思議さを覚えます。
図2 論文(Massin,1982)を参考にして棲息状態に置き直したイシカブラ標本 黄色矢印は棲管の痕跡を示す
Fig.2 Shell and tube of Magilus are replaced in their original posion inside the coral by referring to Fig.1 of Massin(1982). Massin(1982) mentioned that the tube of Magilus spp. is generally nearly parallel to the surface of the coral.
Therefore, when this specimen should be replaced again, the tube of Magilus is perpendicular and the shell is located at the lowest position.
Yellow arrow may show the remain, ie. the cast of the horizontal burrow (boring).
少々主題からそれますが、このようなイシカブラの棲息姿勢(体化石ないし生痕化石)は、地層の上下判定 に使えるのではないでしょうか。また、化石の現地性・異地性の観点でいえば現地性になります。
ただし、サンゴ塊がレキとなっている場合は除くことになります。
さらに本標本の状況を詳しく観察しますと、図2の矢印が示す凹み部分は棲管の付着していた跡、つまり棲管の雌型と考えられます。したがって、断面はその先の細長い凹み部分(図2の矢印部分に)曲折して続くようです。
一方、サンゴ骨格の成長方向は図2の下から上の方向と考えられますから、結局棲管本来の姿勢はこの解釈で問題ないはずです。
大森(2005)が図7として引用しているMassin(1982)のFig.1には、棲管に続いて末端の最上位には軟体部(一部または全部?)が収まる半球状の空隙 hemispherical cavityや、外部の海水域との通路である煙突状突起 chimneyが描かれていますが(図3)、この標本の場合でも bの先端右上方には両者に続く棲管がさらにあったと思われます。
もしくは、失われて化石になったのではないでしょうか。
図3 Massin(1982)の図表類を参考にして描いたイシカブラの生息状況の概念図
Fig.3 A conceptional diagram on the posion of the tube, hemispherical cavity, and etc. of Magilus antiquus.
Modified after Fig.1 of Massin(1982) .
イシカブラについては、ネット検索するときれいな写真がいくつも出てきますので、ぜひご覧ください。
ただし、今のところ部分的な標本です。
つまり、大森(2005)の図7、すなわちMassin(1982)のFig.1に相当する、貝殻から殻口までの棲管が全てそろっていて、かつ半球状の空隙や煙突状突起まできちんと確認できる、「サンゴに含まれた棲息状態を示す完璧な標本」は残念ながら見当たりません。
多くの標本は打ち上げられたサンゴ塊中から取り出されたものと思われ、半球状の空隙や煙突状突起を含むサンゴ部分はたぶん波によって破壊されて残っていないのでしょう。
また、鹿児島県立博物館のニュースにもイシカブラの話題が掲載されていますので、ご覧ください。
私の標本よりも、ヘビを思わせるほど棲管がず〜と長いものです。
ただし、置き方は、殻が上部になっています(特に誤りとは言えません)。
『鹿児島の自然だより第50号』(平成22年7月1日)、“鹿児島の動物21 サンゴの中にヘビ? 「イシカブラガイ」”
○鹿児島県立博物館 Kagoshima Prefectural Museum → こちら;click here
鹿児島県立博物館 → 「発行物」 → 『鹿児島の自然だより』 → 「平成22年度」 → 『第50号』
○イシカブラはどのようにサンゴを穿孔するのでしょうか?
Mistery of boring mechanism of Magilus in coral
巻き貝は円筒形をしている形態をみると、ドリルのように貝殻を回転させてサンゴを掘るのではないかと考えるのは、機械の回転ドリルを見ている我々からすると自然な発想でしょう(専門家は何と浅はかなと、笑うかもしれませんが・・・)。
貝殻が下に位置するのが正解とした場合、上からサンゴ内部を下方に向かって掘り進んでいくように思えるのも無理がないですね。
実際に棒の先端に巻き貝の貝殻を固定し、棒を回転させると軟らかい岩石に穴を開けられるでしょう。しかし、貝殻表面にはカモメガイなどの前区のようなヤスリ状の彫刻は一切なく、そもそも巻き貝は岩石等の表面に対してそのような回転運動はできないので、そのアイデアは無理です。
穿孔方法を知るには、他の穿孔貝同様何と言っても生貝を観察・飼育するのが一番ですね。また、どんな化学物質を分泌して穿孔にしようしているかも解明できるでしょう。
大森(2005)によれば、軟体部は貝殻本体部分を離れて移動するといいます。そして、機械的手段も含めながら化学的手段を中心として穿孔するのではないかと述べています。とにかく、イシカブラの穿孔方法は、十分研究されていないとのことですから、今後の解明が待たれます。
私がイシカブラに関して不思議に思えるのは、以下の点です。My questions about Magilus in coral
(1)前述のように貝殻の天地が逆の点です。進入した最初からそうのか、稚貝がサンゴ塊の凹みに入ってしばらくしてから逆立ちしたのでしょうか?
Why is the shell of Magilus up side down in coral?
(2)サンゴに埋没しきらないようにサンゴの成長に合わせて棲管を作っていったと考えられますが、サンゴの成長と棲管築造のバランスはどんなものなのでしょうか?
How does Magilus adjust her own growing up and make her own tube according to the growth of coral?
(3)また、棲管が垂直方向時に煙突状突起はどのように位置していて、言いかえればどこに開口部を持って海水を出し入れしていたのでしょうか?
Where is the chimny of Magilus located inside coral at the time of making a perpendicular tube, for her respiration?
標本を眺めているといっそう悩んでしまいます。これらの点もいずれ海洋生物学者や古生物学者が解明してくれることでしょう。
These are worrying problem for me. I hope that scientists will solve them in the near future.
#45-2 サンゴ骨格中のムロガイの仲間 Leptoconchus sp. in coral
千葉県館山市の、とある砂浜海岸でサンゴの小片を拾いました。そのサンゴの表面には滑らかですが、不思議な穴がたくさんあいています。
一方、裏面はゴツゴツしています。
この海岸は、縄文海進時に形成された珊瑚化石を含む地層「沼サンゴ層(隆起サンゴ層)」が背後の山に分布する半島の一部ですから「化石の可能性」も踏まえましたが、
沖合いにはサンゴが棲息する海域もあることから海底から砂浜に打ち上げられたもの、現生とみています。
実は、このサンゴ塊に巻き貝が何個体か入り込んでいるのが、ルーペを使用した現地観察でわかりました。以下、自宅に持ち帰った後の観察結果です。
○採集標本の詳細な観察Detailed examination of coral samples
まず、このサンゴ塊表面にみられる多くの穴が気になりました。これはいった何でしょうか?
このような穴が全く見られないサンゴ塊ばかりをそれまで採集してきましたから、初めて見る多数の穴はとても不思議に思えます。
ひょっとして何かの穿孔痕とだろうか・・・?
穴の入り口(開口部)の形態は、円形(径 1.5mm前後)ないし楕円形(短径 1.5mm×長径 3〜4mm程度)で、比較的滑らかな石灰質の内壁が確認できます。
深さは正確には未測定ですが、10mmは越えないようです(∵サンゴ内部に留まり、貫通はしてないことから)。
図4 ムロガイの仲間や多毛類による穿孔痕等がみられるサンゴ骨格 表側(上写真)・裏側(下写真)
だ円形、円形の穴は多毛類の穿孔痕(上写真)、黄色矢印の先にムロガイの穿孔痕が認められる(下写真)
Fig.4 Many holes in circular or elliptical shape on the coral suface may be the traces created by a kind of polychaete,for example, chrismas tree worm.
On the otherhand, we are able to notice several small circular holes on the opposite side (the aboral side?).
These are the borings created by gastropods; Leptoconchus sp.
This coral specimen was collected by me at a small beach in Tateyama City, Chiba Prefecture on summer sunny day.
The coral may be washed out to the beach from the bottom of the offshore. Same as the surface of coral was eroded by wave action, the entrances of these holes became wide. So, a few shell must have been released from own hole. By my little work, a single shell appeared from the hole. See fig.5,
調べたところ、どうやらこの穴はゴカイの仲間イバラカンザシ chrismas tree worm ; Spirobranchus giganteus/の棲管のようです。
ネットで見るとイバラカンザシは とてもカラフルな傘、鰓冠(さいかん)を広げたような姿を見せてくれます。緊急時にはこの「傘」を畳んで、棲管の中に引っ込めるとのことです。このゴカイの仲間が、サンゴ塊を穿孔するのかしないのか、意見が分かれているようですが、しないという意見が強いようです。
私見では、ある状況証拠から少なくとも穿孔痕とみています。
次に裏側を確認します。
前述、表面と同じ穴と棲管があったり、管棲ゴカイの石灰質棲管が付着している一方で、穴の内部に見慣れない巻き貝が「幽閉されている」のに気づきます。 表側にも戻ってカウントするとその総数は大小9個ありました。
サンゴの縁をピンセットで少々破壊してコロンと転がり出てきた巻き貝一つは、初めてみるものです。貝殻のてっぺん(殻頂)はすり減って穴があいています。
また、穴の内部は球形をしているのがわかりました。
図鑑で調べたところ、巻き貝はムロガイの仲間で、イシサンゴに穿孔する種類とわかりました。
図5 サンゴ骨格の穴の内部にムロガイの仲間の殻が2つのぞける(左の写真;青点の上、赤点の左)
別の穿孔痕から取りだしたムロガイの貝殻(右の写真;多少破損している)
Fig.5 Two shells of Leptoconchus sp. can be seen in each boring inside coral(Left photo). One is beside red two dots, the other is upper of blue dot. A shell in right-side circlular photo is Leptoconchus sp. taken from its hole.
今回ムロガイの仲間について紹介する当たって、Massin, C. (1982)、Massin, C.(1983)、A. Gittenberger and E. Gittenberger(2011)の3本の論文を参考にしました。なお、これらの論文は、ネットから取得できました。
これらの論文によれば、ムロガイの仲間は種類が多く、また貝殻の変異が大きいようです。
Massin, C. (1982)はムロガイの仲間14種を提示するとともに、2種を新種報告しています。穿孔痕(論文中は"burrow"としている)について考察しています。
また、Adriaan Gittenberger、Edmund Gittenberger(2011)は、DNAシーケンス分析に基づいてさらに新種14種を記載・報告しています。
なお、ムロガイに対してMagilus striatus の学名で表示するケースがありますが、調べてみるとM. striatus はLeptoconchus striatusのシノニムとのことです。
○ムロガイに関する疑問 My questions about Leptoconchus in coral
ここで、次のような疑問がわいてきます。
(1)ムロガイは、どのようにサンゴ骨格を穿孔するのでしょうか、イシカブラ同様に化学的に穿孔するのでしょうか?
How does Leptoconchus bore coral? chemically?
(2)イシカブラと違って、石灰質の細長い棲管は作らないのでしょうか?
Does Leptoconchus make tube or not?
(3)ムロガイの浮遊幼生がサンゴに着床するにあたって、サンゴは刺胞動物ですから刺胞による攻撃を受けないのでしょうか?
How does young Leptoconchus protect oneself from the nematocysts of coral?
(4)ムロガイはどのように子孫を残すのでしょうか?
What is the reproduction strategy of Leptoconchus in coral?
上記の疑問について、上記の3つの論文を参考にすると現段階では以下のようにまとめられると思います。
(1)ムロガイの穿孔について
山本(1961)は、ムロガイが貝殻を使って機械的に穿孔する としています。Massin, C. (1982)も同様な意見で、ムロガイを active boer とするとともに、
回転運動 rotary motion of the shell が穿孔のメカニズムであるとしています。そのため、サンゴの骨格がむき出しになっています。
イシカブラの項目でドリルのように貝殻を使えるはずがないと、私は述べましたが、ムロガイの場合は貝殻を用いていることになります。
(2)ムロガイの棲管について
ムロガイは、ほぼ球形の居住する空間は作る ものの、イシカブラのような長い棲管は作らないようです。Massin, C.(1983)は少々移動した穿孔痕もあるとみています。サンゴの成長との関係は不明です。
(3)サンゴの刺胞からの防御について
apex down の姿勢であれば、貝殻がシールドの役割をするとか・・・(あくまでも私見です)。Massin, C.(1982)は刺胞に対して免疫 immunity を持つに違いないと述べています。
(4)ムロガイの生殖について
E. Gittenberger他(2011)によれば雌雄で大きさが異なる 、つまり、ムロガイの仲間は性的2型 sexual dimodal とのことです。
一般に雌は卵のカプセル capsules of egg を抱えるため殻は大きく、雄はそれよりも小さい殻になっているそうです。
E. Gittenberger他(2011)のFig.6〜Fig27の図では、雌雄の貝殻がカラー写真で掲載されています。
雌の貝殻2枚(側面と上面)、雄の貝殻1枚、計3枚を1セットとして14種毎に順に掲載されているのをみると雌雄の大きさの違いが歴然です(ただし、雌雄で貝殻の大きさに大きな違いがない例もあります)。
貝殻形態を見ただけでは、私には、小さなある種の雌と大きなある種の雄は区別が付けられそうにありません。
また、雌雄の間には通路が形成されているそうです。雌雄の貝が連絡する細い通路(穴)を作って受精する(らしい)とは、おもしろいですね。
#45-3 今後のサンゴ穿孔性巻き貝の調査について
My further research on the coral- boring gastropods at the beach of southern Japan
さらに、関東地方以南においてサンゴ骨格の打ち上げのある海岸でサンプリングを続けて、イシカブラやムロガイの穿孔痕について調べたいと思います。
また、皆様からの情報をお待ちします。
●イシカブラやムロガイに関するお勧めサイト Recommened site
@"オゴクダの貝" → こちら;click here
打ち上げサンゴから取りだした、きれいなイシカブラが紹介されています。ムロガイは別ページになります。
【追加情報】 Added information on March.11, 2020
このウェブサイトの管理人は和歌山県串本町在住の方で、今回イシカブラの写真数枚を提供していただきました。その中から特に優れた写真2枚を紹介させていただきます(図6)。
何とこのイシカブラは採集時に生きていたそうです。図1にならって、私の判断で棲管の部位等を記号で表示しておきました。
なお、「オゴクダ」とは、潮岬の西方にある長さ100m程度の浜の名称で、ここでは多種類の貝殻が拾えるそうです。管理人様は1300種を越える貝を収集されているとのことです。
潮岬は、本州最南端の岬で、目の前の海は黒潮 Kuroshio Current が1年中流れているので造礁性サンゴ Reef-building coral
が棲息しているそうです。台風等の大波で破壊されたその骨格の一部が、多数の貝殻(二枚貝や巻き貝)などとともに打ち上げられるそうです。
図6 串本町橋杭産のムロガイの仲間、殻と棲管(生貝から標本化). 提供していただいた写真
《記号の説明》 K:竜骨(キール)、T:棲管、S:殻、O:蓋(フタ)
Fig.6 Shell and Tube of a living Magilus from Hashikui in Kushimoto, the most southern town, facing the Pacific Ocean, Wakayama Prefecture. A brown or dark brown thin particle on the cotten is an operculum of this snail.
Abbreviation; S.shell, T.calcareous tube, K.keel A.apex, O.operculum
Courtesy of a manager of the website;"Ogokuda no Kai (Various Seashells from Ogokuda beach, Kushimoto, Wakayama Pref.)"
A"トレジャーハンター「場末のたこやき」が淡々と綴る貝殻拾い&釣り&アクアリウム&石掘り日記"
→ こちら;click here
打ち上げサンゴから取りだした、きれいなムロガイやイシカブラ、そしてツクエガイが紹介されています。
【参考文献 References】
山本愛三、1961、穿孔貝の穿孔法について、ちりぼたん 1, 209-214,
大森 昌衛、2005、南太平洋のニューヘブリデス諸島のサンゴ礁に穿孔する巻貝イシカブラ(Magilus antiquus Montfort),とくにその穿孔活動について、化石研究会会誌、第38 巻、第1 号、p22〜25
(注)大森 昌衛、2005の引用文献一覧では、Massin, K. (1982)とあるのはMassin, C. (1982)の誤りである。
Massin, Claude, 1982, Contribution to the knowledge of two boring gastropods with an annotated list of the genera Magilus Monfort, 1810 and Leptoconchus Ruppell, 1835. Bull. K. Belg. Inst. Nat. Wet. 53(17): 1-28, 1 pl.
Massin, Claude, 1983, Note on the genus Leptoconchus Ruppell, 1835(Mollusca, Gastropoda, Coralliophilidae) with the description of two new species, Leptoconchus vangoethemi sp. n. and Leptoconchus cyphastreae sp. n., from Papua New Guinea.
Bulletin de l’Institut Royal des Sciences Naturelles de Belgique,Biologie, 55, 1-16.
Adriaan Gittenberger, Edmund Gittenberger, 2011, Cryptic, adaptive radiation of endoparasitic snails: sibling species of Leptoconchus (Gastropoda: Coralliophilidae) in corals、Organisms Diversity & Evolution、March , Volume 11, Issue 1, pp 21-41
since: December.12.2018
last update: March.13.2020