第7巻感想




 はい、進撃の巨人、第7巻感想です。表紙は巨人化したエレンVS女型の巨人+リヴァイ班です。このシーンは実際にはないのですが、こういう場面も選択が違えばあったのでしょうか。7巻の展開を考えればこの表紙を見ると胸が痛くなってきます(泣)。
 森を守る新兵たちの様子から始まりますが、104期の中で状況が理解出来ているのってアルミンとジャンだけのようです。イヤ、描かれてないだけで実は判っている人もいるのかもしれませんが。アルミンから団長の考え――今回の作戦の真の目的が話される訳ですが、早い段階で団長の考えに気付いていたアルミンの推察力は凄いと思います。アルミンってやっぱり参謀タイプというか、作戦立案能力に長けていると思うので、実戦ではなく後方支援向きですよね。
 女型の巨人の捕獲――兵団内部にいる諜報員のあぶり出しですが、ここでまた以前にも思った疑問が湧いてきました。進撃世界の戸籍ってどうなってるのでしょうか? 兵団入りする兵士って身元を調べられない訳がないと思うんですよね。訓練兵の試験を受けられる年齢は12歳からと決められているようですから、進撃世界の文明レベル的に年齢を証明するのって戸籍しかないと思うんですけれど。ウォール・マリアが陥落してその辺の書類が紛失し確認が出来ない、といった可能性もありますが、審議所での報告ではエレンの身元は事細かく調査出来ていたので、資料が全部紛失してしまったとも考えにくいです。この辺の調査って憲兵団がやっていそうな気がするので、元々身元調査が杜撰ということなんですかね?
 五年前に壁内に侵入したと思われる壁を壊そうとしている一派が、巨人になれるだろう三名のみなのか、もっと大人数いるのかはこの時点では不明ですが、目的はエレンのようです。壁を壊す<エレン図式ですが、最初の巨人化の後、エレンを掻っ攫うとか、その後隙を見て拉致するとか出来なかったんですかね? 壁外に出るのって危険が伴うと思うのですが……。
 後、団長が試した線引きの五年前以降の兵士への問いでもある、ソニーとビーンの殺害ですが、これ、いまだに何で殺したのか結城には判らないんですよね。いくら慎重に行動したとしても目撃される可能性があった訳ですから、その危険性を冒してまでも何故殺さなければならなかったのか。あの二体が巨人に関する重要な情報を持っていたとは思えないのですが(実際に今までの研究結果以上のことは全く判らなかった訳ですし)、これ以上巨人の情報が兵団に渡るのを防ぎたかったのでしょうか。うーん。
 強く残るアルミンの台詞「何かを変えることができる人間がいるとすれば、大事なものを捨てることができる人だ」――人間として大事なものを捨て去ってまでも団長はこの道を選んだ訳ですが、凄いと思うのと同時に寂しさを感じます。この位置に近いのって104期の中ではアルミンだと思うのですが、アルミンには人間性を捨てて欲しくないなーと思います。大事なものを捨てられるという意味ではミカサも同じだと思いますが、ミカサは「エレン以外」という注釈がつきますので。そして、エレンはおそらく大事なものを完全には捨て去れないと思います。
 女型の巨人の捕獲現場ですが、ハンジさんが活き活きとしてます。やはり、ハンジさんはどこまでもハンジさんです。そういうところ好きです(笑)。戦っている兵長はやはり格好良いなーと思います。兵長の強さは規格外ですよね……。
 断末魔の叫びのような奇声を発する女型の巨人。サシャの「森なめたら死にますよ」にちょっと笑いました。サシャって結構可愛い顔してると思うんですが、中身のあれさが際立ってるのでその辺誰も気に留めてなさそうです。
 女型の巨人に群がる無数の巨人。巨人を呼び寄せる能力で自分ごと食わせて証拠隠滅をはかるとは……総てを捨て去る覚悟があった、という言葉は団長にも当てはまると思うんですが、凄まじいです。


 作戦失敗、総員撤退命令を出す団長。兵長の「エレンや俺達はどうなる?」にリヴァエレ的にちょっと萌えました(笑)。「俺達やエレン」ではなく「エレンや俺達」というところが。いや、特に意味はないのだとは判っていますけれど。兵長にガスと刃の補給を命じる団長はやっぱり先が見えてるんだなーと思いました。
 撤退するリヴァイ班たちの会話が楽しいです。「ピクニック」発言に進撃世界でもピクニックってするのか、と余計なことを考えていたら、いきなりのグンタさん死亡に衝撃です。巨人化した後そこから抜け出し、再び巨人化出来るという団長の推論(元はハンジさんの推論ですが)通りに、再び巨人化してエレンを追ってくる女型。ここで巨人化して戦うか、先輩方の言葉を信じて先に逃げるか――再び選択を迫られたエレンは葛藤の末、「仲間を信じる」を選択。その結果として待っていたのはリヴァイ班の全滅。ここは本当にうわあぁ!と叫びたくなりました。リヴァイ班……!(号泣)
 女型の巨人の方が戦いに慣れていたというか、一枚上手だったからの結果で、進撃世界では死亡率高いのは判っていましたが、全滅は痛いです。エレンは自分の選択が間違っていたと言っていますが、それは結果論であって、エレンがあそこで違う選択をしても変わらなかったかもしれないし、エレンを責めることは出来ないと思います。当事者としてはそうは思えないのでしょうけれど。
 巨人化したエレンVS女型の巨人、力は互角っぽく見えたのですが、一瞬の隙をついて女型が勝利。エレンが見せた隙でまた嫌な予感が……。エレンを口に含み、逃走しようとする女型に追いついたミカサ。ミカサはやはり王子様のようです。


 エレンの声を聞きつけ駆け付ける兵長と、無残な遺体となったリヴァイ班の班員達。彼らを見る兵長が無表情なのが、より痛さを感じます。エレンのことになると冷静さを失くすミカサはブレがないです。この盲目的なまでの執着がちょっと怖いなーと思わなくないのですが。以前やっていた某キルゴンで、余りにもキルアがゴンだけに執着しすぎていて心配になったのを思い出します。カプとしては攻めが受けを一番大事にして溺愛しているのが前提なんですが、受けしか大事なものがない、というのはどうなのかと。二人だけの世界というか、相手だけいれば他には誰もいらないというのは、当人には幸せなのかもしれませんが、それはとても閉じた世界で、健康的ではないというか……他にも大事なものがあって、その中で一番大事なのが受け、というのが結城的にはベストです。相手だけの世界だと相手に何かあった場合どうなっちゃうんだろう、と思いますので。いえ、ミカサはエレンが死んだと一度聞かされときにそれでも生き抜くと決意しましたし、別にカプという訳ではないですが。
 冷静さを欠くミカサと合流する兵長。女型を仕留めることは諦めてエレン奪還のみに集中することに。ここでも兵長は規格外の強さを披露――やはり、兵長は人類最強なのだと思います。そして、ここでミカサが作戦を無視して女型を仕留めにいったのが意外でした。ミカサはエレン至上主義だと思ってましたので、倒しにいくとしてもエレン救出を優先すると思ってました。エレンを連れ去った女型に対する憎悪が勝ったのか、たくさんの仲間を殺されたことに対する怒りか判りませんが、仕留めにいって攻撃に遭い、庇った兵長は足を負傷した模様。それでもエレンを救出するあたりがさすがに兵長だと思いますが。
 兵長の「大切な友人だろ?」にミカサは「ちがう…私は…」と呟いてますが、これは「友人」ではなくミカサがよく言っている「家族」だということなのか、それともこの辺りで実は恋愛感情的なものが芽生えてるような振りなんでしょうか。私的にミカサは余り女の子女の子した描写はして欲しくないので、家族路線を貫いて欲しいのですが。どっちにしろ、ミカサにとってエレンが特別な存在というのには変わらないのでしょうけど。
 去っていく二人+エレンと静かに涙を流す女型。女型が何を思って涙を流したのかは不明ですが、静かなシーンが印象的でした。
 帰還した調査兵団一行。エレンの「またお前に助けてもらったのか?」に、「兵長も一緒だったから。むしろ、メインは兵長だったから!」と言いたくなった結城です。イヤ、リヴァエレ的にはそこは主張しないといけないかと(笑)。エレンが幼い頃に見た光景の再現――逆の立場になったエレンの胸中には色々なものがあるのだと思います。そして、ペトラ父の登場が更に痛いです。多くの失われた命には多くの家族や大切な人がいて、多くの悲しみが生まれる。それを判っていても断行できる団長は揺るがない強い意志を持っているんだと思いますが、その重責と孤独さはどれほどものなのか。団長は決して後悔はしないでしょうけれど。荷馬車で泣く様子が痛々しいエレンですが、作戦でエレンの有用性の証明が出来なかった今、その身はどうなってしまうのか。ドキドキしつつ(これ書いてる時点では知ってますが)8巻へと手を伸ばしたのでした。



2014.12.8up




←back