第10巻感想




 はい、進撃の巨人、第10巻感想です。表紙は塔に残された104期組+エレン&ミカサで、またもやアルミン仲間外れ(笑)。いえ、このシーンは作中にはないのでイメージなんでしょうが、ミカサが物凄く凛々しい顔立ちで描かれていて、ぶっちゃけ攻め面……げふげふ。ミカサが男だったらなーとは今までに何度も書いてますが、やはり、毎度思ってしまう結城です。まあ、ミカサは女の子だからこそのキャラなんだと思いますけれど……自分が作者でも編集でも絶対に女性キャラにしたと思いますし。もうこれを書くのはお約束ということで(笑)。
 話は前巻から引き続き、塔に残された組のターンです。夜でも動ける謎の巨人との戦闘開始。ナナバさんやゲルガーさんの戦いっぷりはさすが調査兵団で生き残ってきた兵士、という感じですが、この古そうな塔がいつまでもつのか。夜でも動けるということは巨人の活動停止中に逃げることは出来ないということで、巨人を残らず倒すか、もしくは異変を感じた援軍が来てくれるまで籠城するしかないと思うのですが。……と、思ったら入口を破られて巨人が塔内まで侵入。確かに木の扉くらいじゃ簡単に破られますよね。真っ先に巨人の侵入を確認しに行くライナーは兄貴!と呼びたくなります(笑)。扉を破られそうになったときの回想は五年前のですかね? ライナーを庇って巨人に食われた少年はライナー達の友人なのでしょうか。……と、ここでふと疑問が。前にエレンにベルトルトはウォールマリアが陥落した時、明け方に物音に気付いて窓を開けたら巨人がいて、皆で混乱しながらも馬に乗って村から逃げたって言ってましたが、この回想だと三人ともどう見ても徒歩なんですが。馬なしでは逃げても助かる可能性は低いし、どうやって巨人から逃げたのか。
 ライナーを助けるベルトルト。二人が「俺達の故郷に生き延びて絶対に帰る」という強い絆で結ばれているのが伝わってきます。皆で巨人を食い止めたのも束の間、侵入されたもう一体の巨人に襲われそうになるコニー。体張って助けるライナーは男前です。ライナーの手当てをするクリスタを見てユミルが私も怪我を……って、ライナーが羨ましかったのでしょうか、ユミル(笑)。
 その後のコニーの昔からライナーはこうだったのか、という問いに対してのベルトルトの返事は「昔のライナーは戦士だった。今は違う」……この言葉、前から嫌な予感はしていましたが、やはり、これは確定なのかなーと、ここで思いました。アニが成り損ねたという戦士とベルトルトのいう戦士が同じならですが。前述の発言と回想のずれもありますし。ライナーの返しの戦士って何のことだよ、とは余計なことは言うなっていう意味なのか……うーん。
 厳しい状況の中で善戦していた先輩達ですが、突如飛んできた岩によって二名死亡。先に馬をつぶしたところからして、知能あるものの仕業か、と思ったらやはり、あの謎の獣の巨人のようです。ナナバさんの最初から遊ばれているような気分だ、という台詞の通りに獣の巨人からは無邪気な残酷さを感じます。雄叫びを上げている姿からも中身はやはり子供なのかなーと思うのですが。アニも無慈悲に調査兵団の兵士達を殺していましたが、アニにはいろんな葛藤があったと思うんですよね。でも、この獣の巨人にはそれが感じられない気が。この巨人がアニ達とは別勢力なのか、または同じだとしたらこれがアニの言っていた「戦士」としてのあるべき姿なんでしょうか。


 ナナバさんとゲルガーさんが死亡。進撃の死亡率の高さは判ってはいても辛いものがあります。一緒に戦って死ねるのに、というクリスタに自分がどうやって死んだら褒めてもらえるのかばかり考えているだろうと指摘するユミル。そこから雪山の訓練の回想に入るわけですが、雪山で訓練する必要性ってあるんでしょうか? 巨人は南から来ると言われていて、北側からの襲撃は少ないので雪山で戦うことはまずないと思うのですが。体力と精神力を鍛える一環で実技とは関係ないんですかね?
 そして、懐かしの名前のダズ(笑)。トロスト区での戦いで戦いたくないと言っていた以降出てきてないですが、あそこでの戦死は免れたんでしょうか。生き残っていたとしても調査兵団に彼が入ったとは思えないので出てこなくても不思議はないんですけれど。ユミルとクリスタとくればサシャが入っているイメージが強いのでこの三人で班行動しているのが意外でした。まあ、教官が成績や能力で振り分けた結果なのかもですが。
 ユミルのクリスタの行動は周りから良い子だと思われたいがためのもの、という台詞を見て納得がいきました。何というか、クリスタはいい子なんですが、いい子すぎるんですよね。初めてクリスタを見たときはいい子を演じている、とかではなく、テンプレ的な優等生タイプのキャラなんだと思っていました。実は結城は一昔前の少年漫画に出ていた可愛くて優しくて周りから好かれている優等生なヒロインタイプが苦手なので、どちらかというとそっちよりなクリスタは若干苦手意識がありました。が、この巻でがらりと印象が変わったというか、いい方向に転んでくれたので助かりました(笑)。
 クリスタがいい子でいようとしているのには生い立ちが関係あるようです。妾の子であるがために跡取りに相応しくない――いっそ殺してしまえって随分乱暴ですが、進撃世界ではよくあることなのかも。ここでまた疑問が。ニック司祭はクリスタが総てを知る権利があると言っていましたが、つまりはクリスタを殺そうとした家の跡取りが総てを知る権利があるということなんでしょうか? なのにあっさり殺そうとしたのが判らないのですが。他に跡継ぎがいるってことなのか、と思いましたが、それならそっちに総てを決める権利があるはず。その辺の関係がこの時点では謎です。
 更にユミルは自分の生い立ちがクリスタと似ていたと話してますが、ユミルにはどんな事情があるのでしょうか。ユミルとして生まれたことを否定したら自分の負け――元の名前のままイカした人生を送ってやると言い切るユミルは潔くてカッコいいです。ユミルがクリスタにこだわるのは自分と共通する部分が多いからなのでしょうか。
 その後の衝撃のユミルの巨人化。変身前にクリスタに向けて言っていた胸張って生きろ、はユミル自身がそうありたいと思っていた生き方なんじゃないかな、と思いました。ユミルの独白の自分は産まれてこなければよかった、と思っていた。存在するだけで世界に憎まれた――だから大勢の人の幸せのために死んであげた、の意味するところは何でしょうか。ユミルが世界から憎まれた理由が巨人になれるから、かとも思ったのですが、回想で今のユミルは新しく生まれ変わって第二の人生を歩んでいると言っていたので、巨人化能力は関係ないのか。ユミルの民のこともあるし謎です。
 そして、ライナーとベルトルトの友人を食べた巨人はユミルのようです。どういった状況だったのかは判りませんが、これが五年前だと仮定すると、ユミルも五年前に壁内に侵入してきたものの一人、ということなんでしょうか。


 ユミルの変身に動揺する104期組。エレンのように何も知らない訳ではなく、巨人の力について何らかの知識があり、なおかつ巨人化出来るユミルに疑いの目を向けるのは当然の反応だと思います。ただ、ユミルはアニのように人類に敵対する勢力とは違う気がします。何らかの事情は知っているのかもですが、ユミルの言動や行動を見ていると、本当に自分のやりたいことをやって生きてやると思っているだけに思えます。
 大勢の巨人を前に一人で戦うユミル。自分一人なら逃げられるのにそうしないのは皆を守るため――いや、この場合クリスタを守るためなんでしょうね。クリスタが元の名を名乗って、胸を張って生きることがユミルの望みで、そこまで執着するのってミカサがエレンに対してみせる執着に似てるような気がします。
 塔の上でユミルを鼓舞するというか、キレるクリスタに初めて彼女の素を見た気がしました。こっちの方が断然いいです。塔を倒して巨人を潰し一安心と思ったら窮地に立たされるユミル。まだ自分の本当の名前を教えていない、話していないと駆け寄るクリスタを救ったのはやはり王子様ミカサ(笑)。その後の巨人を倒して討伐数一、と喜ぶエレンが可愛いです。よっぽど倒したかったのか……やはり、エレンの頭の中には巨人駆逐しかないようです(笑)。
 救い出されたユミルに自分の名前はヒストリアだと教えるクリスタ。満足そうな笑みを浮かべるユミルが印象的でした。……ここで、余談ですが、本名が判明したクリスタをどっちで呼ぶべきか話を書く上で悩んでたりします。原作沿いは大体判明する前ばかり書いているので(リヴァイ班が生きている時期に集中してるので)クリスタなんですが、現代パロの場合はヒストリアでいくべきなのか……って、どうでもいい話ですが。


 到着したエレン達一行に壁を調べていたハンネスさん達も合流し、壁には穴がなかったことが正式に判明。ということは、やはり巨人達は壁の外から侵入してきたわけではないということで、壁内に発生した巨人は元は村人だったとは確定でしょうか。獣の巨人もいつの間にかいなくなっていましたし、不気味さが残ります。
 穴がないなら仕方ないとトロスト区に戻ることに決めた一行。もう故郷に帰れるというベルトルトとライナーに疑問符を飛ばすエレンですが、結城も同感です。そして、衝撃のライナーの告白。「俺が鎧の巨人でこいつが超大型巨人ってやつだ」……正直、固まりました。え、いや、何あっさり言っちゃってんの?と物凄く突っ込みたくなりました。いや、そういう重大な事実をあっさり告げて驚かせる意図なんだろうなとは思うんですが、アニのときがもっと緊迫感あったのでこうもあっさりばらすとは思ってもみませんでした。ライナーは人類すべてに消えてもらうことが目的だった、と言っていて壁を壊した行動からもそれは納得出来るのですが、エレンを故郷に連れていけば壁を壊さなくてもいいという理由が判りません。エレンでなくても全然わかんねぇぞ!と叫びたくなります。
 そして、エレンの回想でずっと気になっていた戸籍管理がいい加減だということが判明。アニ、ライナー、ベルトルトは同郷だと言ってますが、三人が壁外からやって来たとなると杜撰さを利用してでっち上げたってことですよね? なら、別々の村の戸籍は入手出来なかったんでしょうか。その方が疑いをかけられずにすんで良かったと思うんですけど。
 そして、二人がずっと言っている故郷の村ってどこにあるんでしょう? 彼らが壁の外からやって来たとすると、壁外に彼らの故郷があるというわけで、そこに暮らしているのなら壁外には巨人に襲われない区域があるという話になるのですが。ライナー達は巨人の襲撃にあっているし、その村の人間は巨人には襲われないという特殊体質というわけでもないでしょうし。謎です。
 アルミンの推測――女型の巨人にエレンの居場所を教えたのはライナーだというのは結城もそうじゃないかと思っていたことですが、刃で掌に文字を刻んだとは思いませんでした。何かしらの合図を送ったのかなーと予想していたんですが。確かに合図などの素振りは見られる可能性がありますよね。
 ライナーにそう言われてはい行きますって頷くわけがないと告げるエレン。確かに!と誰もが頷くと思います。この三人のやり取りでのエレンが何か可憐な女の子に見えるのは気のせいでしょうか(笑)。いや、ライナーとベルトルトが大きいので並ぶとエレンがすごく華奢に見えます。
 ライナーの言葉のここに長く居すぎた、俺達はガキで何一つ知らなかった〜の一連の台詞でライナーの葛藤が垣間見えます。ライナー達の事情は判りませんが、彼らにとって壁の中にいる人類を殺すことは正しいことという認識だったのだと思います。それが仲間として接触するうちに揺らいできたということなのでしょうか。ここで決めるというライナー達に襲い掛かるミカサ王子←王子決定?
 が、急所を逸れたせいで巨人に変身する二人。エレンと重傷のユミルを掴んで逃亡――エレンに言ったように彼らの故郷を目指すつもりなのか。捕まったエレンはあっさり巨人に変身。え、アニのときは戦うの散々躊躇ってたじゃん、割り切ったの?とツッコミを入れつつ、次の巻を待つことになったのでした。




2015.5.5up




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