偽りのアルカネット感想


 はい、CHiRAL MOBiLEから配信されている「偽りのアルカネット」感想です。例によってネタバレ全開で語っていくので未プレイの方はご注意ください。購入の切っ掛けは単純に携帯を変えたから、です(笑)。いえ、以前に雑誌の紹介記事を見たことがあって気になっていたから、というのが前提にあるのですが。ビジュアルノベルということでどんな感じなのかな、と思っていたのですが、読んで字のごとしです。選択肢の出ないBLゲームというか、ノベルをゲーム風に読み進めているというか。作画もストーリーに合っていて、すっきりとした絵柄が好みで良かったし、内容も昼メロ風と銘打つ愛憎劇で読みごたえがあると思います。若干、説明不足なところもありますが、携帯ノベルの文章量としては妥当かと。
 ただ、ちょっと値段が高いかなぁ、という気が。共通シナリオが300P、各キャラシナリオが400Pっていうのはどうかと。落としきりではないゲームですし、せめて各キャラシナリオも月額会員料金で買える価格設定にして欲しかったです、はい。この値段ならもうちょっとスチル増やして欲しかった…。後、画面がウィンドウではなく全体に文章表示されるのでちょっと見づらいです。ノベルなのでそういう仕様なのかもしれませんが。機能としてはスキップ可、背景濃度やフォントの調節機能付きで、セーブ数も10個と多いし、一人既読後、スチルも回想出来るので十分ではないかと。

 さて、ストーリーの方は昼メロ定番(?)の大正時代が舞台。母親を亡くし、親戚の家で育てられた主人公・敬の前にある日突然、死んだと聞かされていた父親を名乗る男が現れる。敬は父親の命で強引に高鳥家の一員として迎え入れられることになり、東京を舞台に新たな物語が紡がれる――。
 と、こんな感じで始まるのですが、異母兄弟・妾腹・家督相続争いに過去の確執と、どろどろとした人間関係が描かれます。さすがは昼メロ!(笑)主人公の敬は大雑把で直情径行、短気で手が出やすい子ですが、基本的にお人好しで根が優しい子なので好感が持てます。主人公っぽい感じの主人公ではないかと。そんな彼が人と関わっていく中で自分の進む道を見つけていくわけですが、お相手は異母兄・高鳥悠斗、悠斗の伯父で父の友人・立花栄、高鳥家執事・倉江香月の三人です。悠斗シナリオをクリアしてからでないと残り二人は購入できないので上記の順に進めてみました。では、感想というほどでもないですが、個別ルートをどうぞ。


■高鳥悠斗→取りあえず、悠斗をクリアしないと他のが読めないので悠斗からいきました。高鳥家長男・異母兄悠斗は、出会ったときにはにこやかに話してくれるのですが、次に二人っきりになったときにえらく冷たくされて、「猫かぶってたのかい!」と突っ込みたくなりました。ものっそいファザコンで高鳥の後継者として祖父に厳しく育てられ、父の役に立つ人間になりたいとそれだけを目指して生きてきた悠斗は突如現れた敬に激しく反発してきます。自分にも他人にも厳しい悠斗は自分よりも能力のない敬の存在が認められないわけですが、最初の頃の敬の言い分を全くきかない彼に「いやいや、敬のせいじゃないから! てゆーか、人の話はちゃんと聞こうよ!」としばしば突っ込みたくなりました。そんな二人が歩み寄っていく過程が描かれるわけですが、キレた悠斗に無理矢理やられたときはさすがに驚きました…。痛めつけるための手段だったわけですが、無理矢理はダメですよ、悠斗…。そういや、押さえつけられたときに共通シナリオが終わったので、他ルートではここで助けが入るんだろうと思っていたら、他のルートでもやられた設定でした…。「いや、ここは助けにこようよ!」とまた画面に突っ込みました←ツッコミ多し。
 ちなみに敬一郎が敬を引き取って後継者指名した理由ですが、そうだろうなー、と思っていたらばっちり当たって苦笑いしました。まあ、セオリーというか王道なベタ設定てんこもりなので、なるべくしてなった感じですが。
 ピアノを通じての交流やメトロノームのエピソードが好きですが、もうちょっといちゃついてるところが欲しかったかも。ラストはそれぞれお互いを認めて自分の道を歩んでいってる気がして爽やかです。余談ですが、ラストリバ臭というか、逆っぽい雰囲気があるのですが、ドラマCDでその通りになったと聞いてショックを受けました…。


■立花栄→お次は年齢不詳の大人の色気ダダ洩れ男・栄にいってみました。終始にこやかで敬に親切にしてくれるのでいい人かと思いきや、腹黒属性の人でした(笑)。これぞ昼メロな確執劇を繰り広げてくれます。復讐のために敬を利用しようと近付いた栄が敬の一途さにほだされて陥落するルートです(笑)。いきなり、男とキスしているシーンを目撃してしまったり、好きなように連れまわされて振り回される敬ですが、栄ルートは好き好き一直線な敬が見られます。悠斗ルートと比べると、恋愛色が強いように感じるのは敬から好きオーラを感じるせいでしょうか。
 他ルートでは悪役だったりする栄ですが、このルートで過去が明らかになって「そりゃ、恨むよねー」という気になりました。というか、素で酷いよ、敬一郎…! 若い頃の二人を見られたのは良かったですが、結局二人の女性を犠牲にしただけでは…。まあ、その結果、敬と悠斗がいるわけですが。ラスト近くの遊郭で首絞め〜高島邸での敬一郎との会話のくだりのあたりがめっさ好きだったり。スチルも膝枕あり、ちょっとエロめ(笑)のがあったりと美味しいです。
 ラスト、何年も一途に栄を思ってきた敬の粘り勝ちに頑張ったね、と言ってあげたくなりました〜。


■倉江香月→ラストは高島家執事で実直で誠実な倉江です。結城が一番好きなカプです。東京に出てきた敬が一番最初に会った人物で、最初は信用できないと思っていた倉江に少しずつ心を開いていく敬と、東京での辛い生活に心身ともに傷ついていく敬の手助けをしていくうちにだんだんと惹かれていく倉江との関係が描かれます。同情から愛情へと変わっていく純愛ルートです。包容力のある大人攻めに弱いので、かなりツボでした。敬がかなりいじめられるので不憫ですが(本気で使用人に腹が立った結城…せめて家では労わってあげてよ)、そのぶん倉江の優しさがしみる展開です。
 そして、手に手を取って駆け落ちするわけですが、髪下ろし倉江とか名前呼びとか萌えどころ満載。欲をいえばもうちょっと甘い逃亡生活の描写が欲しかったです。携帯アプリなので文章量の制限もあるのでしょうが、二人が逃亡に至る過程もやや説明不足な気がします。
 このルートでは栄がやたら悪役っぽくて、情念に満ちている気がするのですが、どのルートでも倉江と仲が悪いのは栄から滲み出る黒さゆえか…。栄との会話で敬一郎の不器用さというか言葉の足りなさをすごく感じたのですが、結局、栄の情念に倉江は引きずられた気がします。
 読み終えて思ったのは「何で悲恋なんだー!(泣)」でした。他のルートはハッピーエンドなのに、何故倉江だけバッド仕様なんでしょうか…。ハッピーエンドだったら、ハッピーエンドだったら、もっと悶えたのに! でも、ある意味一番昼メロに相応しいエンドかもしれません。好きな方はすごく好きそうです。


 以上、個別ルート感想でした。色々と不満も言ってしまいましたが、ストーリーは面白いので、会員の方はポイントに余裕があったら(笑)読んでみてください。





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