樋口康雄×上田知華 LAST WORKS

上田知華 40周年記念コンサート
〜All About KARYOBIN〜
with 金子飛鳥ストリングス



リハの準備
お父様の納骨を終え、一段落した知華さんでしたが、咽頭炎を罹ってしまい、樋口さんに送る予定の「ステンドグラス」を歌ってみることができず、キーの確認ができませんでした。print music も、表記ができなかったり、設定がうまくいかなかった点がいくつかあったのですが、樋口さんからは「ほとんど気にしなくて大丈夫。こちらではオリジナルのスコアと比べながら修正するので、極端な話、音符さえ打ちこんでもらえば全て直しておく。ただ、パート譜などのレイアウト(譜めくりなど)は、移調すると全部キャンセルされるので、できればキーが確定してからパート作成をしたい」という返事。知華さんは、演奏記号まで省略してしまうと「そちらで見直すのも大変ではありませんか?」と心配しますが、樋口さんに言わせると、ダイナミックなど、いろいろ直したりしているので、音符があればOKなのだとか。パート譜の精査も多少面倒ではあるけれど、短い曲は簡単なのでキー決めもギリギリ最後でなければ大丈夫だということでした。

予定されている弦カルの初顔合わせ用には、「バス・ステーション」「ピアノクインテット」「メヌエット」の3曲を用意しようということになりました。リハは、翌週月曜日(5月21日)に新宿のスタジオで17時半から約3時間。弦カルだけのリハというのが条件だったので、今回は樋口さんは遠慮して、知華さんとキョードー東京のプロデューサーが20時頃に行って、挨拶と、その時に聞かせてもらえるような状態に仕上がっていれば聞かせてもらうという段取りです。ちなみに、リハは春はこの日だけ。あとは秋に弦だけのリハが1日、知華さんと一緒が 1日、そして最終ゲネプロのスタッフ全員参加が半日だけです。

オープン・ザ・ウィンドウ
その後も知華さんは写譜に励み、その日のうちに樋口さんに「ピアニッシモ」の譜面を送りました。次に取り掛かることにしたのは、懸案の「オープン・ザ・ウインドウ」です。この曲は、弦楽の楽譜が見つからなかったので、耳コピして楽譜を1から書き起こさなくてはなりません。知華さんは、「聞きやすい録音があるし、細かいところは樋口さんが私の作成した大体の譜面を見て、ああ、ここはこうだった!なんて思い出してくださることを期待しています」と、わりと気楽に考えていたのですが、樋口さんは、そう簡単にはいかないだろうと懸念していました。そして、その懸念はみごと的中。「すべてを聞き取ることは不可能でした。こんなにリバーブあったっけ?という感じ」というのが、その時の知華さんの感想です。 と同時に、「この曲、編曲、本当に素晴らしくて、耳コピするのに聞いていても鳥肌が立ちます。ライヴでもう一度演奏できることが本当に楽しみです」と改めて、この曲の魅力を認識していたのでした。

一方、リハの日程が少ないことを知った樋口さんは、当日までに、できるだけ多くの楽譜を揃えた方がよいと思い、さらに2曲の修正した楽譜を知華さんに送りました。しかし、移調前の楽譜を渡すのは得策ではないと考えた知華さんの判断で、メンバーへの楽譜の配布は見送られました。
また、樋口さんは、ピアノはいつでも合奏できるように常に弦と一緒にいたほうがよいという考えだったので、弦だけのリハに少々懐疑的でしたが、弦カルのリーダーである飛鳥さんを全面的に信頼する知華さんの「彼女にはメンバーを統括しておいてからピアノとの合奏に挑みたいという気持ちもあるのではないか。私(知華さん)が飛鳥を信頼し、飛鳥はメンバーを信頼するという信頼関係が、より良い演奏になると信じて、少ないリハ時間を乗り切ろうと思っている」という返事を聞いて、その方針を快諾したのでした。

to be continued


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