・開催決定!
毎年、元旦には、樋口さんの元に知華さんから新年の挨拶のメールが届くのが常だったそうです。2018年のメールには、新年の挨拶に続けて、こんな一文が付け加えられていました。
あけましておめでとうございます
とうとうデビュー40周年の節目の年が明けました
今あるすべての力を発揮し、
その名にふさわしい年になるよう
身を引き締めて過ごします
本年が樋口家のみなさまにとって
穏やかな一年となりますように
お祈りいたします
2018年 元旦
上田 知華
*昨年暮れ、40周年記念コンサートの日程と会場が、10/20(日)日本橋三井ホールに決まりました詳細をあらためてメールいたしますが、1月中にさっそくお目にかかれればと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします!
CU E Entertainment / Chika UEda
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知華さま
今年もよろしくお願いします。ついにコンサートやりますか。それにしても40年とは、時の過ぎる速さには恐ろしいものがありますね。
樋口康雄
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こうして「上田知華 40周年記念コンサート ~All About KARYOBIN~ with 金子飛鳥ストリングス」の準備はスタートすることになったのです。
・ミーティング
1月中に樋口さんとのミーティングを計画していた知華さんでしたが、2月は次々と突発事項が起きて、次に樋口さんと連絡がとれたのは、3月半ばのことでした。そして、ミーティングは3/20に決まったものの、当日になって日程を延期しなければならい事態が起きてしまいます。前夜に知華さんのお父様が他界されたのです。
さらに、お父様の葬儀の帰り道、知華さんの携帯に届いたのは大森昭男さんの訃報でした。アメリカから帰国して以来、音楽に関するすべてのことで大森さんにお世話になっていたという知華さん。樋口さん宛てのメールには、「これからも良い音楽を続けることが、大森さんへのせめてもの恩返しでしょうか」と記されていたといいます。
そのようなわけで、ようやくミーティングが実現したのは、4/4のことでした。ミーティングとは、他でもないKARYOBINの楽曲/楽譜についてです。10/20のコンサートではKARYOBIN時代の曲を18曲〜20曲くらい演奏する予定になっていました。
・楽譜制作
楽譜制作の作業はまず、樋口さんが所有している楽譜をコピーして、知華さんの自宅に送ることから始まります。A2版の楽譜はコピーするのが難しいので、メヌエット、二人のディナー、インスト曲2曲は、樋口さんがfinaleで書き出すことになりました。「天才が書いた美しい譜面」は、これから楽譜制作ソフトを駆使して、樋口さんと知華さん2人の共同作業でデータ化されていくのです。
しかし、ここで1つ問題がありました。樋口さんが通常使っている楽譜制作ソフトfinaleには新旧2つのバージョンがあり、それぞれ拡張子が違います。また、知華さんが通常使っているのはmuse
scoreで、finaleとは互換性がありません。そこで知華さんは、finaleの旧バージョンと互換性のあるprint musicを動員して、楽譜のデータ化を進めることになりました。
最初にとりかかったのは「バス・ステーション」」でした。しかし、finaleより安く、機能の少ないprint musicでは、音符の符頭を取った旗だけの記譜ができない、ストリングスのポルタメントを記すツールがない、フォントが可愛くない(知華さんいわく)など、早々に様々な欠点が露呈します。それでも致命的な欠点はないので、知華さんは樋口さんとやりとりするときは、互換性を考えてprint
music、自身のピアノとボーカルの楽譜は、いつも使っているMusesocreで楽譜を作ることにしました。
続いて「二人のディナー」です。この時点で、当初、インストの候補となっていたアルバンベルクは、他人の曲なので取りやめることが決まりました。かわりに、やる・やらないは別として「ピアノクインテット」の楽譜の作成を進めようということになりました。
いよいよ本格的にスタートするかに思えた楽譜制作ですが、またしても知華さんのもとに訃報が届きます。それは、10月のコンサートの照明をお願いしていた方の訃報でした。知華さんの悲しみは深く、葬儀が終わるまで楽譜制作は、少しの間、お休みすることになりました。
4/13、ようやく楽譜制作が再開されました。樋口さんがfinaleで書き出したA3版の「二人のディナー」は、知華さんの元でも問題なく見ることができたので、総譜はこの形で進めていくことになりました。ただ、知華さんにとっては、自分用の譜面やパート譜などは普段から使っているmusescoreの方が簡単で見やすいので、拡張子をxmlで保存してコンバートする方法を試してみたところ、これがなかなか上手くいき、樋口さんも気に入ったので、この方法を採用することになります。
こうして、finale,printmusicのやりとりで音の修正を徹底的にやろうという当初の方針にのっとり、知華さんが書いたファイルを樋口さんが修正・調整して送り返すという作業を繰り返し、できれば4月中に楽譜を完成させたいという目標のもと、作業を進めようということになりました。
to be continued
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