Q. お酒は何を飲まれるのでしょうねぇ?? 私は甘い系お酒専門でして、カクテルとか梅酒とか杏酒なんかが好き。あと「紀州梅のチューハイ」。樋口さんのお気に入りのカクテルなんかあったら知りたいなぁ。

A. ぼくも最近はチューハイ専門です。ビールはスーパードライとモルツのCMをずっとやっていた関係で、それにしています。サントリーやニッカのウィスキーCMはやりますが、のむのはバーボンです。ワインにはまる人はまわりにわりと多く、どうも薀蓄先行になりがちで面倒なので、ドライシェリとかグラッパにしています。日本酒もはまってアル中になる人が多いので、誘われたときだけにしています。飛行機のファーストでドンペリを2本半空けたことがあります。そのときたまたまクインシージョーンズが近くの席にいましたが、あちらは離陸から着陸までずっと寝ていました。どうもタダのものに弱い自分を反省しています。


Q. シングアウト時代、ビートルズの曲で特にお気に入りの曲はどれでしたか?アルバム「abc」には、初めに影響を受けたのは、「All You Need Is Love」 だったとありますが、お好きな曲を伺ってみたいです。

A. その当時、好きなビートルズの曲は何ですかという質問に対して、いつも「ベイビーユアリッチマン」と答えていました。ほとんど知られていない曲をわざと言っていたのではなく、ぼくの領域外のテイストの曲だったからそう言っていたのです。今でも好きかはわかりません。abcに初めに影響を受けたとあるみたいですが、それはアルバムのライナーかなにかに書いてあるのでしょうか?ぼくは「オールユー〜」に関しては、中学生のときに行ったエデュケーショナルクルーズというところで、毎朝かかったのが印象的だったという思い出はあります。ビートルズに関してはいろいろお話して行きたいです。
*エデュケーショナルクルーズに関してはBiographyに記載しています。


Q. ピアノ(キーボード)以外にどんな楽器を演奏することができますか?ピアノを含めて、録音時に楽器を演奏した音源がありますか? (レコード化されている楽曲でも、CMや劇伴音楽でも)特にピアノに関してですが、「上田知華+KARYOBIN〜樋口康雄作品集」のライナーノーツでは、「これは絶対に(弾き語りが)出来ないだろう」と書いた曲があるようですが、そんな超絶技巧の曲ってご自身で演奏してみるのですか?それとも頭の中でシュミレーションしただけで書けるのかな?樋口さんの生演奏って、一応昨年の日比谷野音で聴いているのですが、ソロで聴けたら最高!もしも「樋口康雄を聴く会」にご参加いただける日が来るなら、ぜひピアノ(キーボード)を用意してほしいです。曲の進行のことについて、ちょこちょこっと音をなぞって説明してくださったり、最後は樋口さんの演奏で皆で歌ったりして。。。。


A. また聴く会のようなものがあって、それに参加できたらそうするつもりでした。ぼくは楽器だけでなく、何でもすぐそこそこできるようになるのですが、それ以上にはなりません。オケの編曲をする人にとって2つの説があります。すべての楽器に熟知していたほうがよいという説と、あまり知りすぎるとすごいものは書けないという説です。前者はともかく、後者の意味は演奏家に対してある程度無謀になったほうが進歩的、革新的なことが書ける、つまり自分で楽器を演奏する技量以上のものは書きにくいだろうということです。ぼくもそう思います。楽器に関してまるで知らないというのは困りますが、知りすぎているのも面白くありません。そういう意味でも、楽器には触って親しむ程度がよいのです、ぼくのような仕事には。楽器の中ではピアノが一番わかっているつもりなので、超絶的な技巧でも決してできないものは書いていません。「演奏困難」なものは書いても「演奏不能」のものは書きません。録音時に楽器をやっているかというご質問ですが、じつはいろいろ遊びでやっています。70年代に「カモメのジョナサン」というLPを五木さんと作りましたが、そのなかでオモチャのピアノを弾いています。昨今のシンセサイザーにはトイピアノというサンプリング音源がありますが、当時はだれもそんなものをレコーディングで使おうとは思っていませんでした。


Q. 樋口さんは末盛さんというディレクターからの言葉がきっかけで、スコアを書き出して、当時NHKにたくさんあったたくさんの楽譜を見て勉強されたそうですね。

A. 末盛さん*と初めて会ったのは中3の時でした。クラシックのオケのスコアというのは以前から父の蔵書にあったので見ていましたが、ポピュラー・ミュージックのスコアはどうやって書かれているのかをどうしても知りたかったのです。歌番組の音楽の編成はいわゆるビッグ・バンドが基本にあって、それに足したり引いたりしたものだったのですが、そのような「様式」は当時では一般の書物などにはいっさい書かれていませんでした。もちろん諸外国にはドン・セベスキの著書のようなものは既にあったのでしょうが、たとえば日本でトム・ジョーンズ・ショウのスコアがどういう様式で書かれているのかを知る術は普通にはありませんでした。ところがその手がかりが、なんとNHKの制作の戸棚に無雑作に置かれていたのです。そのスコアだって、だれかがアメリカの番組のスコアを見てきて、それに習って書き始めたのがみんなに伝播していったはずです。とにかく、それらの術を知る手段は日本のアカデミックな場所にはなかったのですよ。ぼくにとっては大発見だったし、それができるなら、番組に出て、いやな思いをすることがあるかもしれないにしろ、まあ妥当かなと思ったわけです。
*末盛さん・・・「ステージ101」の初代プロデューサー、末盛憲彦氏


Q. 血液型を教えて下さい。


A. たぶんAだと思います。ずっと知らなかったのですが以前CMの仕事の合間に盲腸になったとき、病院からそう教えられた気がします。そのときの話しですが、CM(三菱ミラージュ「光のトンネル」)の打ち合わせがあった日に緊急手術ということになり、夜中の2時から5時までかかって大騒ぎをしました。ただの虫垂炎に3時間もかかった理由は、局部麻酔が効かず急遽全身麻酔に切り替える必要があったのですが、なんせ深夜ですから麻酔医を呼ぶのに時間がかかり、そんな長時間になってしまいました。アル中のひとに麻酔が効かないことがたまにある、と医者は言っていました。


Q. グラフNHKのステージ101特集に“学業成就と安産のお守りを 持っている”と載っているのを見てから、ずーっとお聞きしたかったのですが、安産のお守りはどんな経緯で手に入れたのですか。 又、そのご利益(たとえば、創作上の産みの苦しみがなくなったとか)はありましたか?

A. すみません。この記事のことは全く記憶にないのですが、たぶん大ウソだったと思います。当時はめちゃくちゃなことをよく言っていました。いまもだけど。かさねがさねすみませんでした。


Q. ステージ101出演当時、「これはサボりたかった」あるいは「実はサボってた」ことはなんですか?


A. 当時はほとんどのものをサボっていました。学校には「仕事」があるといってサボり、仕事では「学校」があるからといってサボっていました。すみません。とくに極めつけは、ぼくは101のリハーサル(スタジオに入る前のリハーサル室での稽古)にはほとんど行ったことがありませんでした。渋谷の放送センターのまわりは東京オリンピックの跡地で、空き地がたくさんありました。その一角にはゴーカート乗り場がありました。これはほとんど知られていなかったのですが、じつは、ぼくは毎日そこにいました。学校が終わるとNHKに駆けつけるという構図になってはいましたが、じつは、ぼくはゴーカート場から駆けつけていたのでした。かさねがさねすみませんでした。


Q. 以前、ピコが絶対音感の持ち主と何かで読みました。人によっては、警報機までがドレミで聴こえ、音楽を楽しめなくなると聞きます。耳障りな音と楽しめる音楽、そのあたりは絶対音感の持ち主はどんな風に感じているのでしょうか。

A. どんな音にも一番強く出ている音程(楽音?)を感じます。しかしふだんはそういうことをあえて感じないで過ごすことができます。困ることもあります。もしある譜面(簡単な歌の譜面とか)を渡されたとして、それがその譜面に書かれているのと違うキーで演奏(伴奏)されたとして、それを歌うどころか、その音符を追うことすらできません。オケの移調楽器については、いちいち頭のなかで移調しなければ読めません。ドレミを追うこともできません。極端なはなし、楽曲はそのもともとのキーで認識しているので、違うキーで演奏されたりすると、よほど慣れた曲以外は判別すらできないほどです。


Q. 私はやはり樋口さんとは呼びにくくてすみません。樋口さんは「一葉」さんというイメージ。年下の人間や知らない人にPicoと呼ばれることはどんな気持ちでしょうか。嫌な感じですか?恥ずかしい?


A. そんな変な感じでもないですが。でも業界にいるひとのほうが、そう呼ぶことを躊躇していることが多いみたいです。