樋口康雄/星まり子/嘉手苅林昌/渚まゆみ
この音楽人間に注目!
@天才と呼ばれる樋口康雄の頭脳構造の特異さ
1973年 週刊プレイボーイ 5/22号


いまヤングの間で評判のミュージシャンといえば樋口康雄。なんていったってまだ弱冠20才。むろん、日本の作曲家としては最年少である。
 さきごろ、ポルノ界の鬼才・藤田敏八が作った東宝映画「赤い鳥逃げた?」の音楽を担当して一躍話題にのぼった。
 関係者はそろって、カレのことを天才と称する。
 顔をみると、どうしようもない童顔。ちょっと質の悪い女にかかったら、「坊や、遊ぼうか」なんて声でもかけられそうだ。

 寝る子は育つというけれど、この樋口クン、実によく眠る。
 パンパンパンとおたまじゃくしを考えてたかと思うと、ゴロッと横になる。すぐさまグースカだ。ひょいとまた起き上がるとメロディを口ずさむ。ヤッてるなと思うと、また眠っちまっている。
 古今東西、天才なんていうのはそういう体質になっているのかもしれない。

 麻布高校のとき、グループ“シング・アウト”のメンバーに入った。これが1970年、合歓ポピュラー・フェスティバルに優勝する機縁となる。
 根っからの音楽好きのクセに東大をすべり、一浪して上智大の経済学部に入った。役者もやる。いま、NHKの連ドラ「銀座わが町」に板前・圭太の役で出演中だが、とにかく、ある日トツゼン、まったく途方もないコトに興味を持つ。この男にとって、計画とか、見栄とかはなきにひとしい。あるのは霊感と衝動のみ。
 これも天才の資質かも…。