桐秋さんの「盟三五大切」レポート

配信ありがとうございました。
セリフが聴きとりづらく、人間関係をつかむのが一苦労でしたが、貴重な画像、心行くまで味わわせていただきました。ありがとうございます。以下、感想です。

全くの予備知識なしで見ました。昔ながらの、芸者の身請け話なのかと思っていたら、大星由良之助やら塩谷判官だのというセリフが出てきたので、「あ、これは、忠臣蔵、というか、仮名手本忠臣蔵を知らないと、よくわからない芝居なんだな」と気づきました。主人公の侍が、身請けに百両を騙し取られるところなど、迫力ありましたね。でも、どう見ても、主人公は侍なのに、題名は、盟三五大切なんだろう…と思いながら、見続けました。

そのうち、誰が誰それの実は兄弟だったり、誰それの世を忍ぶ仮の姿だったり、と、複雑な因果物独特の展開が始まり、オハナシについていくのがやっとという状態になってしまいました。あらくれ者だった三五が、いきなり忠義者になったり、最後には、自責の念から腹を切ったり、侍は、人を斬りまくり、子供まで殺してしまう、という、江戸時代の血塗れ錦絵のようなご都合主義の展開は、今の時代からすると、「ちょっと、どうなのよ…」という気もしましたが、後でネットで調べてみると、これ、鶴屋南北なんですね。どうりで、四谷怪談と同じ、忠臣蔵外伝のシリーズものだったのですね。

青年座のスタンスは、古典ものの「超訳と省略」という、これまで見てきた「三文オペラ」「カルメン」などに通じるものがあるなあと思いましたが、これは、原作のとんでもなさに引きづられて、そのドロドロさ加減を、そのまんまさらけ出してしまったように思いました。江戸期の演劇は、持って回ったようなセリフ回しと、見栄を切るといった様式美で観客を魅了したのでしょうが、セリフが現代的になり、ストーリーがそのままでは、ちょっといびつな舞台になってしまったかなあという印象です。

全体的に古めかしい筋立ての中で、樋口さんの音楽の入るとこだけ、現代的になるような感じを受けました。かろうじて現代に通じる部分というか、古い時代からの架け橋めいたものを、かもし出しているような…。
同じ時代ものでも、「弥次喜多」のような、諸行無常をフィナーレで爆発的に歌い上げたような爽快感はありませんでしたが、これはこれで、南北の世界を翻案した、野心的な舞台だったと思います。