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Ka・Chi・Kan/アンナ・バナナ

    
音楽の父も唸る斬新なアレンジ

シックスティ LRS-2050 (PROMO)
1989.11.10 09L3-4128(CD)

クラシックの曲をポップスにアレンジした作品は珍しくありません。古くはベートーベンの「エリーゼのために」⇒「情熱の花」「キッスは目にして」、記憶に新しいところではホルストの「木星」をアレンジした平原綾香の「ジュピター」の大ヒットがありました。この曲のヒット以降、モーツアルトの「アンネ・クライネ・ナハトムジーク⇒KREVAの「国民的行事」、エルガー「威風堂々」⇒SEAMO「Cotinue」、平山綾「来て来てあたしンち」と、めだってこの手の作品が増えてきたように思います。しかし、非常によくできた作品がある一方で、原曲に日本語の歌詞をのせただけで、アレンジの妙味が感じられないクオリティの低い作品も数多く見受けられます。

クラシックの曲をポップスにアレンジすることにおいては、樋口氏は他の追随を許しません。また、作品のクオリティという点においても完全に頭ひとつ抜きん出てています。個々の作品については、追々紹介する予定ですが、今回は、その中からアンナ・バナナの「Ka・Chi・Kan 」をご紹介します。

アンナ・バナナは、樋口氏に見出され1989年7月、シックスティ・レコードよりアルバム『甘蕉ケ丘-Banana Hill-』でデビュー。「Ka・Chi・Kan 」は、「こわれもの」に続くセカンドシングルで、原曲はバッハの「管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV1067 ロンド」です。管弦楽組曲のなかでは第3番 ニ長調 BWV1068 アリア」…"G線上のアリア"が最も親しまれていますが、この曲もクラシックファンには非常によく知られた曲です。バッハは、ジャズやポップスに編曲されることが多いのですが、その理由のひとつは、バッハの音楽は、一貫したリズムの刻みが曲を支配しており、一定のテンポが持続するからです。つまり、ポップスでいう「4ビート」とか「8ビート」といった感覚です。実際、樋口氏も、この曲以外に「管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV1067 バディネリ」「主よ、人の望みの喜びよ」といったバッハの曲をポップスにアレンジしています。

まずは、「Ka・Chi・Kan 」の原曲、「管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV1067 ロンド」を試聴してみてください。

では、次に「Ka・Chi・Kan 」をお聴きください。



いかがですか? おそらく一聴しただけでは、この曲が「管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV1067 ロンド」とは気づかないのではないでしょうか。樋口氏はみごとなまでに、この曲をポップスにアレンジしており、原曲とはまったく異なる魅力をもつ新作に仕立て上げています。しかも、間奏に「ジェームズ・ポンドのテーマ」が差し挟まれているのですから、その遊び心たるや、あっぱれというよりほかにありません。クラシックをポップスにアレンジするなら、やはり、こうでなくっちゃね。

ところでこの「Ka・Chi・Kan 」は、1991年に香港を代表する人気女性歌手アニタ・ムイ(梅艷芳=2003年没 )によって「教父的女人」というタイトルでカバーされました。クラシックを原曲とするポップスは、原曲が世界中で知られているという点で、今後、もっと発展してもよい分野なのではないかと思います。さて、その「教父的女人」の珍しいカラオケバージョン(フルコーラス)が、香港のサイトで公開されています。興味のある方は、こちらもぜひお聴きになってみてください(少々、接続に時間がかかります)。



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