“ピコ”がもどってきた・・・「あいかわらず、女の子とまちがえられています」
樋口康雄(19)が再スタート

1972年 女学生の友9月号


「このあいだ、ある預言者から“キミは若死するよ”って断言されちゃったんです。だから、うっかり恋人をつくるわけにいかないんだ」なんて、ニクイことをいう樋口康雄クン。「ステージ101」で人気を集めたピコが、1年半ぶりにあなたの前にもどってきた…  

ピコはこういうが、それほど悲しそうでもない。“女の子みたい”と、いわれるのを、かえってよろこんでいるようなのだ。
 ピコの事を“ユニセックス時代の旗手”というひともいる。ユニセックスーつまり、男性も女性も同じ、ということ。新しい時代のひとつの現れ方なのである。
 ピコには、このように時代の流れを感じさせる、新しいフィーリングがある。
 ピコーあなたは覚えているだろうか? 3年ほど前、NHKの人気番組「ステージ101」に出演し、その独特の才能で注目されていた樋口康雄のことだ。
 ピアノをひき、自分で作曲し、そして歌もうたう。そのすばらしい才能が注目されていた17歳の少年だった。“シング・アウト”というバンドの一員として、、おとな顔負けの、すばらしい演奏を聞かせていたものだ。
 だれがつけたのか、いつしか“ピコ”というニックネームのほうが知られるようになっていた。ピコ−イタリア語で“おちびさん”という意味。身長160センチのかわいらしさにぴったりのニックネームではないだろうか。
 そのピコが、「ステージ101」から去ってから、2年近くたっている。麻布高校という受験校に通っており、大学受験と歌をいっしょにしていた、ということを知っているひとは、ピコも大学にはいって、芸能界から離れたのだろうとと思っていたのだが…。
 いま、樋口康雄の作曲、編曲による「ABC」というLPがトツゼン発売されたのだった。
 ピコは、私たちから離れてはいなかったのだ。
 「みんなの前に出なかったのは、大学にはいるっていう大きな仕事があったからなんですよ。1年間浪人したりしたから、けっこう忙しかったんです」
 いま、ピコは上智大学の学生だ。高校生か大学生になっても、ピコは少しも変わっていない。あいかわらず女の子みたいだし、歌声は前と同じようにやさしいし…。
 「ぼくのいまのタイプは生まれつきなんですよ。おばあちゃんがピアノの先生だったし、おやじさんは、僕を子どものころから音楽をやらせようとしていたし…。中学生のころから、自分は音楽で生きるんじゃないかな、という予感はあったんです」
 その予感が、いまぴたりと的中したのだ。
 「まだ19歳でしょう。これから、どんどん新しい音楽を作りますよ」
 ピコは、かわいらしい顔をしてこういう。
 ピコなら、私たちも安心していられる−。