20才の音楽マルチ人間…樋口康雄
「ベテランのような自信をもって…」


1972年Guts 9月号 ガッツ・レポート@


 

歌、演奏、作曲、編曲をこなし、完成されたともいわれるべき自己サウンドをひっさげ登場。マルチ人間といわれる樋口康雄とは…

 「面白い質問ですね…。」
 身長、体重、その他のサイズは?と聞いたところで彼はそういって笑った。
 樋口康雄(ひぐちやすお)昭和27年10月13日生まれ。当年とって20才。
NHKの番組、ステージ101でピアノを弾きながら歌う彼の姿を見た人もいると思うよ。
 彼はピアノを弾き、歌うだけでなく、作曲、編曲もやってのけるんだ。
 ん?
 シンガー・ソング・ライターなら誰だってやることだって?
 いやいや、最近出した彼のアルバム「ABC Pico First」を一度聞いてくれたまえ。
 サウンドとしては、いわゆるフォーク・ソングとは違うけど、音にはちとうるさい君も耳を傾けるハズだ。
 その才能は、この度ステージ101のスタッフとなり、番組の音楽を担当することになったことをみてもわかるだろう。

マルチ人間とは

出身地、東京
身長160p、体重48sの小柄な彼は上智大学に在籍する大学1年生だ。
小さい頃は医者になりたかったというが今は経済学を学ぶ。
作曲に、テレビにと忙しい彼だが、学校だけはキチンと行く。
ヒマな時には、なにをしてますか?という質問には「作曲」という答えがかえってきた。
 趣味は?いつも持ち歩いているものは?というような質問には退屈そうに応対していた彼だが、あこがれの異性のタイプは?という問いには、ちょっと考えた後、うれしそうに「中野良子、テレビの『天下御免』のくれないさんになった人。」と生き生きとした返事がきかれた。
 好きなアーティストは、外国ではビートルズ、日本ではフォー・リーブスだとか。
 フォー・リーブス?と問い直すと、「だってあれ見ていて楽しいもん。」だそうである。
 幅広い彼の音楽趣味の中で、唯一嫌いなのがカントリー&ウェスタンだとか。生理的に受け付けないそうである。
 “何事にも手を抜かない”というのがモットーで、その彼が今、一番やりたいことは、ガキバンド、つまりガキを集めて、インストゥルメンタルのバンドをつくることだという。
 彼を評して“マルチ人間”という人がいる。
 この意味は、ただ1つのことに満足せず、いろいろな方向にその才能を向けていく、ということだそうだ。