英里子さんの「聴く会」レポート

天気すこぶるよし。

有楽町にある国際フォーラムの会議室603号にピコファン・樋口ファン、そしてなぜだかワカファン、合わせて15名が集結した。
ご本人ご登場しないのに、樋口康雄の音源を聴きたいがために、九州、金沢、新潟、仙台と遠くから飛行機、または新幹線を乗り継いでやってきたのだ。

しかし、それに値する濃い内容だったのは全員が一致するところだろう。
会議室入り口には「樋口康雄を聴く会」の電光掲示板。女将さんが登場するや、すぐにも聴きたい気持ちを抑え、全員の自己紹介。20代から40代と思われた。

1.ステージがはじまる前から「シングアウト」で知っていた、もしくはステージ101の初期からのピコファン
2.卒業後、ゲストとして出演していた頃からのファン
3.101終了後、作曲家、アレンジャーとして知った
4.「火の鳥」のサウンドトラックや劇伴から樋口康雄フリークとなった
5.CD「ABC」を聴いてファンになった こんな構成だった。

プログラムの1は、シングアウト、101時代だ。1のファンは、アイドル?時代を知っている。私もそのひとり。30数年ぶりに聴いた「水の歌」(水がいっぱい)は、ものすごく懐かしく(それ以外の人たちは、のけぞったかも)、また、何を聴いてもピコが歌っている映像が目に浮かぶ。
家庭用VTRがない時代だから、その思い描く映像が正しいかどうかわからないが、当時、一回だけ聴いた曲でも歌詞がすらすら出てくる。

2のファンはピアノの弾き語りをするピコのイメージの方が強いのでは。ピコであり樋口さん。Alone Againに涙涙(ちょっとおおげさ)。
それにしても、映像で観たい、聴きたい。

3〜5のひとたちも、「こんな過去があったのね」「かわいい声」「信じられない」と感嘆符つきで喜んだ。
アーチーのテーマを聴くのも久しぶり。確か、今月の歌みたいなのがあったが、あの音源はどこにあるのだろう。

また、ワカ(バロン)ファン(私)のために、関連音源を用意してくださった女将さんに感謝。
バロン+ピコでミニミニショータイムがあったこと、その時のピコの演奏シーン(少し首をかしげ、笑みをたやさず)や、ヒロ<河内・芹澤広明>(口元だけでフフンとニヒルに笑う)、クニ<清須邦義>(赤ちゃんのような顔でギターに集中)、ワカ<若子内悦郎>の、ハッ、ウッの声まで聞こえてくるような懐かしい世界にタイムトリップさせてもらった。


第2部は映像。「喫茶ロックジャンボリー」シングアウト完全版からはじまった。ビルばっかり映ってる(あたり前か)。
ピコは?ちらり。「あれ、セリとピコは?」との声。あれも観たかった。

アリナミンA80〜89」全30本と西武スペシャルCM2本。
これは樋口氏が提供してくださった。この作品群が樋口康雄氏のものと知っていた人はひとり。当時の新聞記事で知っていたという。ほかのメンバーは、「言われればわかるのに、あの当時は気がつかなかった」とくやしがる。ファンの何人かは、CMで「樋口さがし」を趣味としている人もいる。そのくやしさはいっそうだ。

資生堂CM2本は、日本海一のファンreikotさんが社内販売で手に入れた貴重品。101時代と違い、この頃の活動はファンに情報が入ってこない。CMなどの音楽を聴いて、「もしやこの作曲は樋口康雄では?」となる。各社の広報室にたずねても、歌手の 情報はあるが、作曲・編曲者まで答えられるところは少ない。ファンは長い間、耳をすましてCMを聴いていたのだ。

ここで樋口氏差し入れのケーキをいただく。「ピコにおごってもらえる日がくるなんて」と感涙。また、皆さん郷土の銘菓をご持参 くださった。それを見ると、本当に日本各地から集まったことを実感した。

第3部は劇伴やCMソングなど。もうこのあたりは、時間が推してきて、一曲でも多く聴きたいので曲のさわりだけで次にいくことも多くなる。
しかし、不二家ルックチョコレートだけは度聴いた。「あ、私が録音したのとバージョンが違う」という発言もあり、秒と15秒、 またはラジオとテレビなどで違うものがあったのだろうと話し合う。

日活ものは、微妙な男女の会話のバックに音楽が。以前、女将さんが、日活ロマンポルノ「四畳半〜」で「樋口康雄・音楽」と言うのを知り、レンタルビデオ屋へ行き、恥ずかしながら借りたら、違う「四畳半〜」だったという話を思い出した。

そして第4部は時間の許す限り、インタビューなどの声を聞いた。 101時代を知らないファンは、しゃべる樋口康雄に感動していた。それにしても、全国にこんなに熱いコアなファンがいる、それも年代がさまざまというのは、樋口康雄の音楽のもつ求心力だろう。

今回、ファンが持ちよった音源は、30年前にテレビの前でオープンリールのテープに採ったものをダビングするなどしたため、 音質が悪かった。
それでも聴きつづけたのは、それを聴く手段がほかになかったから。CMや劇伴などは、打ち上げ花火のようにその場にいたものだけが 楽しめるものかもしれない。しかし、あの花火をもう一度鮮やかに再現してもらいたいと、誰もが期待している。

そして、2次会次会と続いた。その中の話は誰かに譲るとして、飲みながら出た話題をいくつか。
「ねえ、ピコって結婚してるのかな?してたのかな?」
「お酒飲むと思う?飲むとどんなになるのかしら」
「作曲するのがすごく早いと聞いたけど、メロディはピアノを弾きながらつくるのかな?頭の中で思い描いて譜面にするのかな」
「普段、どんな音楽を聴くのかしら」

音楽の話だけでなく、とりとめなく話題がつづき、深夜の帰宅となった。