Le Velvets
「Shall We Sing? すべてを忘れる、内緒の時間」

サントリ-ホール 2013/03/02



数少ない読者のみなさん、お待たせしました。ようやく本編です。

セットリスト
第1部
01. 夜想曲 第20番遺作
02. グレゴリオ聖歌
03. Ave Maria(マスカーニ)
04. O Sole Mio
05. 闘牛士の歌
06. わすれな草
07. 乾杯の歌
08. Typewriter
08. Ichi Liebe DIch
09. VIVERE
10.Time to say goodbye
-interval-

第2部
11. Unforgettable
12. It’s only a paper moon
13. Yesterday
14. The Letter To My Mother~母への手紙~
15. 津軽のふるさと
16. Danny Boy
17. Queen Must Go On
18. The Beat Of Love
19. MI VIDA ~My Life~
20. 勝利への道
-encore-
21. Nessun Dorma!
22. 第九

サポート
バンドメンバー=遠藤徳光、渡辺友義、大串友紀、ただすけ、石村順
Le Velvets Strings=桜井雅彦、田中光、須賀大輔、富山宏基、千葉裕之、吉田弦


3月2日、Le Velvetsのサントリーホールの公演に行った。“クラシックの殿堂”サントリーホールで、樋口さんの仕事ぶりが聴けるかもしれないとなれば、ファンとしては黙って見過ごすわけにはいかない。降板劇を得意とする樋口さんのことだから、絶対に聴けるという保証はどこにもないが、一か八か、ここは勝負に出るしかない。ファンにとって、樋口さん絡みの公演は、常にAll or Notingのギャンブルなのだ(笑)。

それにしてもオーチャードホールのアンコール公演から1カ月半というインターバルはいかにも短い。それも理由のひとつだと思うが、残念ながら今回は「サントリーホール満員御礼」とはならなかった。当日券が100枚ほど発売されており、2階席後方は空席が目についた。それでも9割方の座席が埋まっていたのだから、これは快挙と言ってもよいかもしれない。しかし、4月に同ホールで行われるインストゥルメンタル・ユニット「TSUKEMEN」のチケットは即日完売。それに、“クラシックの殿堂”とは言っても、サントリーホールの座席数は約2000人。収容人数では、ライブハウス最大のZEPP TOKYOの2700人にも及ばない。まだまだ、Le Velvetsはファンの裾野を広げる必要があるだろう。

開場の際、スタッフの誘導の不手際で、ちょっと不愉快なできごとがあったが、なんとか無事に客席へ。件のRAブロックの座席に着いて周囲を見渡すと、そこには、これまで見たこともない風景が広がっていた。ステージは想像していた以上に近かった。視線を下に落とすと、譜面台に置かれたストリングスの楽譜が目に入る。さすがに音符までは読みとれないが、五線紙に音符が並んでいることくらいは肉眼でも認識できる。さらに通常の座席では、絶対に見ることのできないノートパソコンの画面、モニタースピーカーの陰に蛍光ペンで色分けされたセットリストと思しき紙が貼ってあるのも見えた。たしかにこの席は、視覚的におもしろい。

定刻から遅れること約10分。聴き覚えのあるカラオケのイントロが会場に響き渡る。「なんだったっけ、この曲…」よく知っている曲なのに咄嗟にタイトルが出てこない。「ほら、あの有名な…」必死に思いだそうとするが、そうこうしているうちにピアノソロが始まる。「あ、思ったほど悪くない」。音が懸念される真横の席、特によくないと聞いていたピアノの音は一番気になる点だった。

実は、当初、私はLAブロックの座席を購入するつもりだった。過去2回のオーチャードホールの座席がいずれも右寄りだったのでバリトンに近い位置で見て見たかったのと、前回と楽器の配置が同じなら、LA側のほうがピアノに近いというのがその理由だ。ところが、ネットでチケットを購入する際、うっかりLとRを間違えてポチッとしてしまった(^_^;)。だが、結果としてLAではなく、RAブロックで正解だった。バリトンのふたりは対角線上のRAブロック側からのほうがよく見えたし、ピアノはRAブロック側にセッティングされていたからだ。

大屋根を外したピアノの音は、思いのほか、よく聴こえた。それに安心すると、再び、この曲のことが気になった。単に有名なクラシック曲だから、私はこの曲に聴き覚えがあるのではない。私は、この曲を、このアレンジで、どこかで聴いたことがある。それも1度ではなく何度も。だとしたら、それは樋口さんがアレンジした曲でしかあり得ない。それに気づいたら、正解にたどり着くのは早かった(笑)。思い出した、豊田裕子だ! この曲はショパンのノクターン(NO.20)というより、「精霊たちのノクターン」なのである。もちろん豊田さんのときとは編成が違うので、アレンジに多少の変更は加えられている。が、大筋は変わっていない。フルオケの豊田版のスケールには及ばないが、少人数の編成で、それに劣らぬ雰囲気を醸し出しているのはさすが。中には固さと感じる人もいたかもしれないが、いい意味で緊張感のある演奏は私は好ましいと思った。また、ただすけさんのピアノも、豊田版を聴きなれた耳にも違和感はなかった。惜しかったのはパーカッション。軽快なワルツのリズムに気分ものってきたところだっただけに、ワンテンポ出遅れたのは響いた。

さて、ショパンのノクターン(NO.20)は、ショパンの曲の中でもよく知られた人気曲だ。そういう意味では、この曲をオープニングに持ってくるというのは良いアイデアかもしれない。ただ、個人的には、コンサートの幕開けとしては少し曲調が暗いと思う。これから始まるコンサートに高揚する気分を沈静させてしまう、そんな気がするのだ。オープニングをストリングスの演奏で飾るのはもちろんいいと思うが、メンバーの声を休ませる意味や場面転換の意味で、途中にストリングスの演奏を挟む構成というのもあっていいような気がする。あくまで私見だが、ショパンのノクターンは、オープニングよりも、むしろ、そうした中間部分で演奏するとよかったかもしれない。
それはそれとして、ボロディン、ショパンのノクターンと来たので、次はぜひリストのノクターンでお願いします(笑)。

ショパンのノクターンに続いてステージにLe Velvetsのメンバーが登場し、「グレゴリオ聖歌」をアカペラで歌う。一昨年、モツレク合唱に参加したおかげで、歌詞のラテン語が少しだけ聴き取れたのがうれしい。ストリングスの演奏をバックに歌われた「Ave Maria」も静謐の穏やかさに心癒されるものだった。このあと、佐賀さんの開会挨拶と、歌われた3曲の曲紹介があった。実は、このあたりまで、音のことはほとんど気にならなかった。楽器に関しては、生音が結構、聴こえていたし、MC]も聴きとれた。肝心の歌は多少、エコーがかかったように聴こえてはいたが、それがあたかも教会で歌っているような雰囲気を醸し出していて、「グレゴリオ聖歌」や「Ave MAria」を歌っている分には、まったく気にならなかった。

事態が一変したのは「O Sole Mio」から。まるでお風呂場で演奏しているかのように、歌もバックの演奏もウォンウォンして聴こえる。音量は十分なのに、間接音として聴こえてくるからなのだろうか、音の方向や距離感がまったく感じられない。そのくせシンバルは生音直撃。音に問題があるといっても、まさかこんな聴こえ方をするとは・・・。左右の音のバランスが悪いとか、2階席の下の1階席は響きが悪いとか、そういう音の悪さとは全く異質だ。「失敗した」そのとき私は、はっきりとこの席を選んだのは失敗だったと気づいた。あとから知ったことだが、サントリーホールは、ステージ裏では声が聞こえないので声楽のコンサートは多くの場合Pブロックに観客は入れないのだそう。だとしたら、Pの両脇のLAやRAも、程度の差こそあれ、似たような状況だと悟るべきだった。演奏ばかりに気をとられ、肝心の歌がどう聞こえるかをよく考えなかった自分の愚かさには、あきれるばかりだ(-_-)/~~~ピシー!ピシー!。

「闘牛士の歌」は、バリトンの2人の歌が新鮮だった。会場もおおいに盛り上がり、とてもよい選曲だったと思う。私の席は、まったく音が飛んでこないので、さっぱりわからなかったが、おそらく正面で聴いた人は、2人の声の迫力を肌で感じることができたのではないだろうか。ただ、歌の出来は必ずしも良いとは思えなかった。声が走ったり、歌いだしが遅れたり、全体に雑な印象を受けた。その点、「わすれな草」は、丁寧に歌っているのが好印象。「乾杯の歌」の出来も前回に負けず劣らず。日野さんのお母さん、今回もありがとう(笑)。

この日、最高のパフォーマンスは、なんといっても黒川さんのソロ「Typewriter」だろう。この曲はルロイ・アンダーソンの有名曲だが、これを黒川さんのソロとしてやるというアイデアがすごい!もちろん場内は大喝采。なにか、アンディーウイリアムスショウとか、エドサリバンショウとか、ショウ・ビズの本場アメリカのエンターテイメントを見ているような感じ。久しぶりに音楽が提供してくれた良質の笑いは、今、思い出しても楽しくなってくる。

「Ichi Liebe DIch」は初めて聴く曲だった。佐藤さんは何を歌わせてもうまい。そして声が本当に魅力的。この曲もとてもうまく歌いこなしていた。コントラバスの入ったアレンジを聴いているとジャズのようにも聴こえたが、アンデルセンが作詞をしたクラシックの曲だという。家に帰って調べてみると作曲はグリーグ。グリーグと言えば、一昨年の玉三郎さんのコンサートで演奏された「ホルベルト組曲」を思い出すが、この曲もまた、「精霊たちのノクターン」同様、Le Velvetsのコンサートで演奏されることがあるのかもしれない。

たしかこのあたりでストリングスのメンバーと樋口さんの紹介があった。前回、アンケートに文句を並べてきた甲斐があったのか、今回はアナウンスから大河ドラマもボストンフィルも消えていた(爆)。

ここまで第1部は、クラシック曲が続いた。サントリーホールというシチュエーションを考えたら、これは当然の選曲と言えるだろう。曲の並びが気になるようなところもなく、プログラムのバランスもよかったと思う。音響に関してド素人の私が言うことだから、あてにならないが、私の座席は生音はよく聴こえているようだった。一方、マイクを通した音は、 正面の壁に反響してから届くのでステージが近いのに歌声が遠い。そのような状況下で聴いたせいか、ストリングスの演奏は終始クリアに聴こえた。ストリングスの演奏だけに限って言えば、RAブロックは決して悪くなかったかもしれない。途中、富山さんと桜井さん?のソロがあったと思うが、これも無難に決めた。

「VIVERE」も「Time to say goodbye」も、お客さんの反応を見ていると、かなりよい出来栄えだったのではないかと予想できた。しかし、なんせこちらに聴こえているのは間接音。直接音を聴いている人とは似て非なるものを聴いているので、体験を共有できないのだ。会場の大多数のお客さんが大喝采を送っているのに、そのリアクションに同調できない自分。おそらく、この惨めな孤立感は体験した人にしかわかるまい。

音の問題もさることながら、コンサートの楽しみが激減したのは、メンバーの表情が見えなかったということも大きい。メンバーは途中、何度も後ろを振り返ってくれたが、その時間は、前を向いている時間と比べたら、わずかなもの。メンバー目当てで行ってるわけじゃない私でさえ、これでは全然おもしろくないと思った。厳密にいうと、あるメンバーは後ろからスポットライトが当たると、一部禿げてみえるといった発見があり(爆)、全然おもしろくなかったと言うとウソになるのだが、でも、まあ、あの場所から見て、おもしろかったことといったら、それくらいのものだ。正面から見ている時は、当たり前に思って気にしたことさえなかったが、歌っているときの表情やしぐさが見えて初めて、コンサートは楽しめるものなのだということを、私は、この日初めて知ったのだった(遅っ!)

悲しいことに、第2部には、さらなる悲劇が待ち受けていた。

to be continue

   

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