第17回 国民文化祭 とっとり2002
夢フェスタとっとり開会式・オープニングフェスティバル 番外編

2002/10/12 鳥取県民文化会館


【実録・とっとりへの道】
県をあげての大イベント「夢フェスタとっとり」のオープニングフェスティバルの会場、鳥取県民文化会館に到着したのは入場締め切り5分前だった。すでに会場のまわりに人影はなく、係員の「入場されるかたは急いでくださーい」という声に、私とSACHIKOさんは猛タ゜ッシュでホール入口まで走った。
なぜこんなに遅くなったかと言えば、実はぎりぎりまで駅前のジャスコでファンレターを書いてたからなのだった(核爆)。
いや、本当のことを言えば、宿をチェックアウトする前から書き始めていたのだが、生まれてこのかたファンレターなんて書いたことがないものだから、文章がまるで思い浮かばない。おまけに最近ほとんど字を書くことがないので、ただでさえ下手な字がますます下手になり、書いた文字を見てはどっと落ち込む。
結局、6時間近くかかって書きあげたのは便箋わずか2枚の小学生の作文みたいなファンレターだった(欝)。
だが、このことが結果的には私たちに幸運をもたらすことになったのだった。

広いロビーに到着すると、すでにそこにも観客とおぼしき人の姿はなく、揃いの黄色のジャンパーを着た異様に多い係員の姿だけが目に付く。およそ30人、いや50人はいたかもしれない。
入口を入るや否や、金属探知機によるボディ・チェックを受ける。先に進んでいくと今度は「こちらで荷物を預けてください」と呼び止められる。貴重品の入ったバッグだけを手にその場をあとにしようとするとバッグも預けてくれと言う。
「えっ、貴重品も預けるんですか?まだ、お化粧だって直してないのに」
顔の崩れは直せなくても、せめて化粧の崩れは直したい。そう思って係員に掛け合うと「では、必要なものだけこちらに移しかえてお持ちください」と透明のビニール・バッグを渡された。よくデパートの店員さんが休憩時間に持ち歩いているあれである。
荷物を移しかえ、パンフレット一式の入った紙袋と座席表を受け取った私たちは、そこに書かれている座席番号を見て小躍りせんばかりに喜んだ。「やった!3階席よ!」約2000人を収容する会場の、おそらく最後のふたりの入場者になった私たちにあてがわれたのは、舞台から最も遠い3階席だった。
3階席になって喜んでいる私たちを怪訝そうに見つめる係員の視線を背に受けながら、大急ぎで3階を目指してへダッシュする。すると再び係員に呼び止めらた。2度目の金属探知機によるボディチェックだ。この日、皇太子ご夫妻を来賓に迎える会場は厳重なまでの警備態勢が敷かれていたのだった。

樋口さんが「夢フェスタとっとり」で指揮をとることを知ったのは春まだ浅い今年初めのこと。
もしかすると一生一度の生の樋口康雄を見られるチャンスかもしれない。そう思うと、何が何でも鳥取へという気分になった。だってそのときはシングアウトが再結成し、ピコが喫茶ロックジャンボリーで歌うなんてことはこれっぽっちも知らなかったのだから。
だが、日が流れ、いろいろと情報が入ってくるにつれ、だんだんと鳥取行きの雲行きは怪しくなってきた。
まず、葉書の抽選に当たらなくては観覧できない。しかも、運良く抽選に当たったとしても、オーケストラ・ピットでの演奏は客席から見えるという保証はできないという。それにいざ調べてみれば鳥取までの航空運賃は片道2万円以上。九州に行くより高いのだ。しかも、その日に限って鳥取市内のホテルはどこも満室に近い。
姿を見られる保証のない鳥取に5万・・・せこい私は頭の中で電卓をはじきながら、「いっそ抽選に外れてくれれば諦めがつくのに」と思うのだった^^;
そして喫茶ロックジャンボリーのニュースを知ってしまうと、いつのまにか頭の中は「遠くの鳥取より近くの野音」モードへと切り替わっていった。「とりあえず、鳥取のことは野音が終ってから考ることにしよう・・・」

7月。喫茶ロックジャンボリーは最高だった。これを観たら鳥取は諦めがつくはずだった。でも、なぜかそうはならなかった。喫茶ロックジャンボリーに不満があったわけではない。でも、これが私の観たかった樋口康雄だったんだろうか?なにか満たされない思いが胸の中に残った。喫茶ロックジャンボリーのほとぼりが冷めると、その「なにか」が何なのかはすぐに気づいた。そう、私がずっと観たいと頭の中で思い描いてきたのは、オーケストラを指揮する樋口康雄だったのである。

8月。鳥取の入場整理券が送られてきた。もう、このときには気持ちは決まっていた。姿は見えなくても音は聴ける。生で聴けるこの機会を逃したら、この先また後悔することになるだろう。とにかく鳥取へは行く。でも、姿が見えなかったらやっぱり悲しい。本音を言えばやっぱ姿が見たい訳だから(みーはー)。
考えた挙句、この際、鳥取旅行にしてしまおうと思いついた。「とっとりフェスタ」だけのために行って姿も見れずに帰ってくるより、鳥取旅行のついでに「とっとりフェスタ」を観たと思えば、たとえ姿が見れなくても精神的打撃は少ない(勝手な論理展開)。幸い、安いツアーも見つかった。「・・・・というわけで、鳥取旅行をしようと思うんだけど、お金は私の小遣いから出すから一緒に行こうよ」と夫を誘うとあっさりOKが出た。実は「私の小遣いから・・・」といってOKをとり、費用はちゃっかり家計費から落とすのがいつもの私の手なのだが、幸いにして妻のこの悪行は今まで一度としてバレたことはない。

こうしてオープニング・フェスティバルより1日早い10月11日、私たちは鳥取に向けて出発した。
機内のスカイオーディオのプログラムでニューヨーク・シンフォニック・アンサンブル(指揮 高原守)を聴いた。鳥取駅では偶然、皇太子ご夫妻に遭遇した。駅前のイベント会場ではケーブル・テレビのインタビューを受けた。
明日はきっと樋口さんの姿が見られる。なんだか知らないがそんな気がしていた。

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