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・ 江渡狄嶺 「 場論研究会 」 発足 80年記念
・ 江渡狄嶺 著 「 農乗家黌・牛欄寮 講義案農乗図録
を出すについて 」 〔影印版〕
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・【 はじめに 】
・〈場〉の思想家・江渡狄嶺(1880~1944)が、「場論研究会」を始
めたのは、昭和16年6月のことである。その年の12月には、
太平洋戦争がはじまる。したがって、今年〔2021年〕は、太平洋
戦争開戦80年であると同時に、狄嶺の「場論研究会」の発足80年
のとしにあたる。
・その戦乱のさなかに、狄嶺は「場論研究会」を3年間にわたって
おこなっている。その内容は、『場の研究』(江渡狄嶺著作集、第一
巻、昭和33年刊)に収録されている。しかし、その難解を極める
ところの『場の研究』の解読作業は、狄嶺の直弟子たちも困るほど
のものであることは、夙に知られている。
・狄嶺の『場の研究』を、理解するための糸口は、狄嶺の第三著作
『地涌のすがた』(青年書房、昭和14年刊)の中にある。
・しかし、今日、その『地涌のすがた』も極めて入手が困難である。
そこで、このたび、この中の論考である「講義案農乗図録を出すに
ついて」(安藤昌益にデジケートしたもの)の「影印復刻版」を
作成し、江湖に公開することにした次第である。
・なお、「講義案農乗図録を出すについて」を読むための参考文献
としては、拙著『場論的世界の構造―江渡狄嶺の哲学』の「第一
章 『百姓はかく考える』―『行』と『場』の思想の確立」を
参照願いたい。
2021年12月25日 和田耕作
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・狄嶺の 『地涌のすがた』 は、「 単なる思想の書には非ず、人生の座右の書なり。 」
・〔江渡狄嶺著『地涌のすがた』、表紙、昭和14年、青年書房刊〕
・ 装幀 = 津田青楓
・〔和田文庫蔵本より〕
・〔PHNの会(C)、無断転載厳禁〕
・ 以下の 解説文などは、和田耕作によるものである。
・ 哲学的精神 ・ 科学的精神 ・ 人類的精神 に学んだ江渡狄嶺 ・ 「場論」は、物の見方、考え方のコペルニクス的転回である。
・ 〈場〉の哲学 は、「 人類的精神 」 = 「 世界人類哲学 」 である。
・ 人類の知的遺産のすべてに学んだ狄嶺。したがって、「○○と狄嶺」という論考を書くことはたやすいことである。しかし、それらは
あくまでも「助証」に過ぎない。私たちは、狄嶺の〈場〉の哲学 のオリジナリティ―をしっかりと理解し、そこから さらに 現代の
「世界人類哲学」 の創造に向かうことが求められるのである。
・ ここの文章に関連する内容の記述が、『場の研究』の「第19章 場の考え方のコペルニクス的転換」にある。ここでも、まず安藤昌益・
二宮尊徳・佐藤信淵・田中正造の四農に学ぶべしと書かれている。「助証」(ものごと)に対するものは、「正衣」(ありどころ)である。
と同時に、「ものごと」と「ありどころ」の関係は、縦と横の関係である。これを教育において、あてはめると「ものごと」は「教材論」
であり、「ありどころ」は「学校論」である(『場の研究』、p183参照)。
・ 次に、読むべきは、『場の研究』の「第6章 ありどころの学」(pp67~79)と「第7章 ありどころの教」(pp79~83)である。
・ この「ありどころの学」の内容解説については、拙著 『場論的世界の構造―江渡狄嶺の哲学』の「第6章」の「4 『ありどころの学』
とは何か」(pp241~245)を参照されたい。
・ 図の解釈の基礎
・ 円〔○〕=全体性、 四角〔□〕=現実、 三角〔▽〕=知識
・ 最深最高の教育的眼目は、 「 人類的精神 」 = 「 世界人類哲学 」 の啓発にあり。
・ 単なる智識、技能の習得は、教育正当に非ずして 教育テクノロジーである。
・ 狄嶺の教育哲学については、拙著 『場論的世界の構造―江渡狄嶺の哲学』の「第2章 狄嶺の教育哲学と方法論―『単校教育理念』の発見
と『教育のコペルニクス的転回』を参照されたい。
・ 「場論」と「行論」の独立と関連、そして「組論」から「農乗学全体」へ ・ 場論 = Feldologie ( フェルドロギー )
・ 「地涌のすがた」は、「百姓生活そのもののすがた」である。 ・ 「生活」と「思想」との一元論が、「場の哲学」である。
・物理学と数学との暗示から、電光の如く感得し、「場」の考え方を導入した。 ・「家稷」(生活の組的事拠)の探究が、「家稷農乗学」である。
・ 「場所」の概念から出立する西田哲学を超えた狄嶺の「場論」 ・ マルクスを超えんとする「家稷農乗学」の創造
・ 「独創なものは、新しい鍵を見出し、そして、過去の知識を断つ力であらねばならぬ。」(p60、参照)
・ 狄嶺と西田哲学については、拙著 『場論的世界の構造―江渡狄嶺の哲学』の「第1章」の「7 農想論―『場』の哲学の核心」(p43)
および「第4章」の「8 狄嶺の西田哲学批判」(pp175~177)を参照されたい。
・ 狄嶺と西田とが対面したことについては、拙著 『場論的世界の構造―江渡狄嶺の哲学』の「第3章」の「3 西田幾多郎と江渡狄嶺の対面」
(pp116~118)を参照されたい。
・ 「家稷農乗学」の骨組みが、狄嶺の 曼荼羅図 「 Agrayana Orbis Mandrus 」 である。
・ ここには、レオナルド・ダ・ヴィンチとゲーテの創造力に学んだ狄嶺の独創的世界がある。
・ この狄嶺の 曼荼羅図 は 江渡狄嶺著 『地涌のすがた』 に収載されている。
・ この曼荼羅図の「拡大印刷版」が、拙著『場論的世界の構造―江渡狄嶺の哲学』のカバーの裏面に収録されている。
・ 「 農乗囑文 」 に、 「 行 (ぎょう) の正儀 」 を示した。(p64、参照)
・ この遺文 「 農乗囑文 」の「原文」と「書き下し文」は、江渡狄嶺著 『地涌のすがた』 に収載されている。
・ 『地涌のすがた』からの 「農乗囑文」の「原文」は、和田耕作著 『場論的世界の構造―江渡狄嶺の哲学』に収録〔影印版〕されている。
・ p66、一行目 上から「金井浩さんに、」 ・ 郷土青森県の先覚者・ 陸羯南(1857~1907) を敬慕する 江渡狄嶺
・〔出典 :江渡狄嶺著 『地涌のすがた』、昭和14年、青年書房刊〕
・〔和田文庫蔵本より〕
・ PHN (思想・人間・自然) 第50号、
2021年12月28日 PHNの会 発行
・〔PHNの会・和田耕作 (C)、無断転載厳禁〕