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彼と会えるのは決まって週末。
それは彼が学生だから仕方ないことだと分かっている。
もし平日に会えたとしても、彼が俺の部屋に泊まることはない。
彼は家族と住んでいて、真面目な息子として通っているから。
だからといって彼との関係を今更なかったことにはできない。
たとえ彼と会えるのが平日の数時間であっても、週末の一晩だけであったとしても。
俺はそれで十分だ。
彼と離れていたとしても、俺は彼に縛られているし、支配されている。
これは変わらない事実であり、俺の自信だ。
たとえそれが普通とは違う示し方だったとしても・・・
「なあ、これ」
彼が手にしていたのは、女性がするイヤリングのようなものだった。
少し違うのは、小さな鈴が付いていること。
”イヤリングに鈴?”
俺は首を傾げながら、彼が寄越したものを手に取る。
揺らしてみれば、”チリン”と小さいが澄んだ音が耳に心地いい。
「それ、明日付けて行って」
「え・・・どこに?」
「どこって仕事場しかないだろ」
俺は彼の言葉をどこか人ごとのように聞いていた。
もう一度手の中で鈴を鳴らしてみる。
「でも、こんなの・・・男の俺がイヤリングって・・・」
しかも鈴のお陰で音まで出る。
彼は今時の若者らしく、耳が隠れるぐらいに髪が伸びている。
その分イヤリングをしていても目立つことはないだろう。
しかし、俺はそういうわけにはいかない。
俺の髪型は男らしさを強調する意味もこめて、短髪だった。
角刈りとまではいかないが、耳を隠せるほどの長さはない。
そんな俺が鈴の付いたイヤリングなんて・・・笑い物になるのは間違いない。
「あんたさ、それどこにするか分かってる?」
「え?」
彼の方を見ると、笑っていた。
それは彼が次に発する言葉に俺がどれだけの反応を示すのか、楽しみにしている時の顔と言っていい。
こんな時、彼は間を置く。
その間に俺はといえば、いろんなことを考える。
イヤリングをする場所を・・・
「さあ、耳以外にどこにするもんだと思う?」
「・・・・えっと・・・鼻?」
「違う。あんた、それ付けて牛にでもなりたいの?」
「そ、そんなわけない」
「じゃあ、どこ?」
俺はまさかと思いながら、
「乳首?」
とさっきよりも小さな声で尋ねる。
彼の表情を窺うと、さっきよりも笑顔が深くなった。
それに擬音を付けるとすれば”ニヤ”という言葉がピッタリだ。
そんな彼の表情を見てしまえば、俺の答えが正解だったんだと分かってしまう。
「そう、それはあんたの乳首に付けるためのもの」
「で、でも・・・これは、音が」
「出るよ」
「そんな・・・」
俺は服の下、乳首に付けたそれが俺が歩くのと同時に”チリン、チリン”と涼やかな音色を奏でるのを想像してしまった。
誰かにその音色を聞かれてしまったらどうしよう。
『なあ。なんかさ、鈴の音が聞こえてくるんだけど』
『俺も、俺も・・・どっかから聞こえるよね』
俺が歩くたびに、何人もの生徒がそう囁き合う。
それだけじゃない。
俺には授業がある。
しかも、体育だ。
身体を動かすたびに鈴がうるさいぐらいになるかもしれない。
そうすれば生徒達は気づくはずだ。
その音の発信源が俺だと・・・
「あの・・・」
俺はできないと答えるつもりだった。
「何?」
彼の顔に笑顔はなくなっていた。
もしできないと俺が言えば、彼は
『そう、じゃあ他の奴にやらせるからいいよ』
と、あっさりと許してくれるかもしれない。
しかし、その瞬間から俺は彼の中で存在を消されてしまうだろう。
俺に、選択の余地は最初からないんだ。
「朝は、俺が自分で付けるのか?」
俺がそういうと、彼の表情はまた変わる。
笑顔がそこに戻る。
「俺が付けてやりたいんだけどさ・・・あんた、仕事場には車通勤だしな。俺は電車だし・・・」
「付け方・・・」
「しょうがないか。今、ちょっと試しにするので我慢するわ」
そう言って、彼は2つのうちの1つを手に取る。
俺は彼に言われる前に、着ていたシャツをたくしあげる。
全部脱いでしまうこともできるが、それでは色気が半減すると彼が言うのでしない。
彼が俺の右胸に手を当てると、乳首だけではなくその周りの皮膚も一緒に掴む。
「くっ」
たったそれだけのことで俺の身体は期待で震えてくる。
唇を噛みしめ、落ち着こうと短く息を吐き出す。
「ちょっと起たせてから付ける方がいいから」
彼は冷静に、そして淡々と俺の胸を何度か揉む。
女と違って乳房が発達しているわけではなく、それは少し痛みを伴う行為だ。
それなのに、俺の身体はその刺激で乳首も・・・そして下半身までも起ってくる。
「は、早く・・・」
俺は早く済ませてしまいたかった。
きっと今日、彼は俺を抱いてくれはしないだろう。
明日、俺が彼の命令を果たすことができてようやくご褒美がもらえる。
だから、変に刺激されると困る。
「何が?」
俺の気持ちを彼は分かっている。
分かっていて、わざと分からないふりをしている。
「早くして・・・・」
「しょうがないな。今日は時間もあんまりないし」
思わず俺はホッとしてしまう。
しかし、それを彼に気づかれたくはない。
彼は気づいているだろうが、それをあからさまな態度で示してしまえば
『そんなに俺のすることが嫌なら、優しくしてくれる奴を探せ』
と言われてしまう。
それでもいいじゃないかと思うこともあるが、そう思うのは一瞬だけ。
どうしても彼から離れられない自分がいる。
それが現実。
「じゃあ、俺の乳首を弄ってビンビンに起たせてくださいって言って」
「え・・・」
「ほら、早く」
彼が俺に恥ずかしいことを言わせようとしているのは明らかだ。
ここで俺が恥ずかしげもなく、スラスラとその科白を言えば彼はどう思うんだろう。
喜んでくれるのだろうか。
しかし、実際の俺はなかなか言葉を口にできないでいた。
「俺の・・・俺の・・・」
「ち、く、び」
「ち、ちく・・・び」
俺は乳首という単語を言うのも恥ずかしかった。
そして、その後の単語はさらに恥ずかしい。
「ほら、早く言ってよ」
「ビンビン・・・に、た、起たせて・・・」
「40点」
精一杯の勇気を出して言った科白に点数がつけられる。
それが何点満点中の40点なのか分からない。
いつもは点数を付ける側なのに、なんて皮肉なんだろう。
「次は、俺のいやらしい淫乱乳首に鈴を付けてください」
「まだ・・・」
”まだあるのか”ということを言いたかった。
俺は十分恥ずかしい言葉を言ったつもりだったが、彼はまだ求めてくる。
俺は
「淫乱・・・な、・・・・ち・・・・くび・・・・に・・・・ずを・・・・ください」
たどたどしく言葉を並べる。
「良くできました」
俺は恥ずかしさに顔を真っ赤にさせていた。
そんな俺は彼にどう映っているのだろうか。
ただ、彼は
「良くできました」
と褒めてくれた。
その後、彼は俺に正式にはニップルクリップと言われるものの装着方法を教えてくれた。
「ほら、できあがり」
俺の乳首には鈴のついたクリップが取りつけられることとなった。
クリップといっても、イヤリングのような仕掛けで自分できつさを調整できる。
「明日は1個だけしていって。で、あとの1個もちゃん職場に持って行くんだ。忘れるなよ」
思っていた通り、俺に装着方法を教えた彼は早々に帰ってしまった。
乳首に付けられたままのニップルクリップと、完全に自己主張してしまっている俺の下半身をそのままに・・・
俺には彼を責めることはできない。
それよりも、明日のご褒美を考えるようにする。
ただ、どうして彼が残りの1個も職場へ持って行くように言ったのか考えもしなかった。
まあ考えたとしても、俺は彼の決めたことに逆らうことはできないんだから同じだ。
翌日の朝、俺は着替える前に乳首にクリップをつけた。
その上からシャツを着る。
いつもよりぴっちりとしたシャツにする。
少しでもクリップが揺れて、鈴が鳴るのを防ぎたかった。
ただ、身体のラインが出るということはクリップの形もうっすらと映るということにもなる。
それはシャツの上から薄いセーターを羽織ることで誤魔化す。
学校に行けばシャツの上にジャージを羽織れば分からないだろう。
俺はドキドキしながら、出勤する。
踏み出す一歩も慎重に、音が漏れないか注意して。
今日の授業は3コマ。
2年を主に担当しているが、3年の2クラスも教科担当として受け持っている。
午前中、2コマをこなす。
生徒達にはバスケットをさせ、審判もバスケ部所属の生徒に任せる。
俺は声を出して指示を飛ばすだけ。
まさか一緒になってするわけにもいかない。
そんなことをすれば、胸の鈴が鳴り響くのは間違いないだろう。
いつもなら生徒と一緒にスポーツを楽しむこともある。
生徒達はそれを知っているため、
「先生、珍しく見学かよー」
「もしかして腹痛かよ」
とからかってくるが、それにも「バカ、ちゃんと身体を動かせよ」と返す。
多少は生徒に不審がられながら、やり過ごした。
昼食は生徒達に交じって学食でとる。
コミュニケーションを図る目的と、一人暮らしで弁当を作る器用さがないからだ。
いつもなら昼食を済ませた後、職員室に戻り時間を潰す。
俺は職員室に向って廊下を歩いていた。
その一歩にも慎重になりながら。
「先生」
まさか体育教師の俺が呼び止められるとは思わなかった。
でも、その声には聞き覚えがあったし、周りには俺しかいないんだから・・・呼ばれているのは俺だろう。
俺が立ち止まり、振りかえればそこには思っていた人間がいた。
「先生、はい」
「え?」
俺を呼びとめた人間は彼の友人だ。
さらに、俺と彼との関係も全て知っている人間。
その彼は俺に携帯を差し出している。
”出ろってことか?”
俺は意味が分からないままに、その携帯を手に取る。
画面表示には通話中の文字。
「もしもし」
『乳首の感じはどう?』
聞こえてきた声は、昨日の夜以来の彼だった。
俺だって携帯を持っているのに、なぜか彼は友人の携帯に電話を掛けたらしい。
直接掛けてきて欲しかったという気持ちは多少あるが、友人を介してでも電話をくれたことは嬉しい。
「ちゃんと、ついてる」
『ホントに?こっそり外してないだろうな?』
「外してない」
この会話は学校の廊下でするべき内容ではない。
そんなこと分かっているが、俺には彼の質問に正直に答える方が重要だった。
『もう1個のクリップ、忘れずに持ってきてるよな』
「持ってきてる」
『それ、臣の前で付けて』
「え・・・?」
『動画撮影して、俺に送ってもらって』
「それって・・・・」
確かに俺は彼の言いつけどおり、残りのクリップを持ってきていた。
しかし、まさか彼の友人の前で・・・それも自分で付けるなんて。
朝は自分一人だったからできた。
それを今度は彼ではない、他人の前でしなくてはいけないとなると恐怖さえ感じる。
『臣はあんたがクリップを付けてるのを知ってる。でも、それ以上のことは俺からは何も言ってない』
「それじゃあ」
『もちろん、あんたが臣にお願いするんだ。クリップを付けるところを見てください。武治さんに動画で送ってくださいって』
「そんな」
『もし、俺にその動画が送られてこなかったら褒美は無しだ』
俺はゆっくりと目の前に立ったままになっている彼の友人を見る。
友人の彼は、何の表情も顔に出ていなかった。
『じゃあな』
彼はそれだけを言うと、俺の言葉を待たずに通話を断ち切ってしまった。
残された俺は携帯を持ったまま、立ち尽くしていた。
そんなに長い時間ではなかったはず。
「携帯」
俺のそんな様子をどう思っているのか。
もしかして、何も考えていないかもしれない。
ただ彼は俺の手にまだ残っている携帯を返せと手を伸ばしてきた。
”言うべきか・・・・でも、彼ではない人間に・・・・”
俺は迷っていた。
たとえ彼の命令であったとしても、好きな人以外の前で乳首につけたクリップを見せることが嫌だった。
嫌と言うよりも怖かった。
その状態を見せた時、どんな反応をされるのか、どんなことを思われるのか。
彼は携帯を持ったままの俺に焦れたのか、無言で携帯を俺の手から取って行く。
そして、背中を向けて歩き始めた。
どうしようか、迷っている時間はもうなかった。
「あの・・・」
俺が今日の授業を終え、職員室に戻って行く。
机の上には携帯を放置していた。
表示を見れば、メール受信の知らせ。
『今日は、たっぷりあんたの尻の中に精液を注いでやる』
たったそれだけで俺は身体を震わせる。
それは恐怖からではなく、期待と喜びの意味を持っていた。
※ あとがき ※
8万hitお礼小説は「ペット」番外編2でした。
この2人のテーマは「玩具」です。
まさしく大人の玩具がテーマになっております。
今回使ったのは、ニップルクリップです。
しかも、クリップの先には鈴が付いているんですよ!
拍手コメントで、ペット番外編をというのがありまして、嬉々として書いてしまいました。
ただ、最後は勝手に想像してもらえるようにという意味で、あえて描写しませんでした。
みなさん想像を膨らませてくださいませ。
次にまたこの2人をというリクエストがあれば、また違う玩具を使わせたいな・・・
って、そんなリクエストをしてくれる人がいるのか分かりませんが。