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闇の中。
目を開けていても、そして目を閉じていても同じ。
真っ暗な闇に俺は包まれている。

息を殺し、人の気配を探る。

五感のうちの一つ。
たったその一つが使えないというだけでも、こんなに人は不安を感じる。
そして、残された他の感覚で情報を得ようと普段よりも敏感になる。


「ひっ・・・冷た・・・」


不意に何かが皮膚に触れるのが分かる。
それが何なのかは分からない、分からないがゆえに過剰に反応してしまう。

ただ、冷たい何かだというのは分かった。

一瞬”氷”の文字が頭に浮かぶが、それが果して合っているのか・・・

その冷たいモノは仰向けに寝かされている俺の、ちょうど胸に触れる。

触れたのは一瞬で、俺が声を発した時にはすでにそれは離れていた。


人の気配を感じようと、耳を澄ませる。
そして大きく息を吸い、自分とは違う人間の香りを探る。

手は・・・拘束されている。




そもそも俺がこんな状況に陥っているのはどうしてだろう。



いつ何をされるのか分からない状況で、身体は極度の緊張状態を強いられている。

それなのに、頭は意外と冷静に今の状況を分析しようとする。
いや、頭は冷静ではないんだろう。
もし冷静だというのなら、今ここからどうやって逃げればいいのかを考えるはずだ。

しかし、そんなことを考えようとしない俺の頭は少しイカレテいるのかもしれない。


目隠しをされ、手を拘束された状態でベッドに寝ることになったのは俺が悪いんだろう。


そうだ、全部俺が悪いんだ。

俺の性癖が悪い。
俺が男だから悪い。
俺があの店に行ったのが悪いし、俺があいつの誘いに簡単にのってしまったのが悪い。


悪いと分かっているのに、それを直すことができない。


「あぁ・・・」


いつの間にか俺は自分のことを考えることに夢中で、身体から力が抜けていたらしい。

その緊張感が緩んだのを見計らったかのように、またソレが触れた。
しかも、さっきとは場所が違う。

「くぅ・・・んん・・・」

それはすぐには離れては行かなかった。
俺の背中にそれを当てたまま、腰へと移動していくのが分かる。

身体はそれから逃げようと揺れる。

いくら俺が身体をくねらせようと、それは離れることはなかった。

そして、一本の線を描くように移動していく。


移動した後、皮膚は熱をもったかのように熱くなった。
さっきまで冷たさを感じていたはずなのに、今は逆に火照るように熱い。


そのままお尻の割れ目、その少し上まで線を引くとまたそれは離れて行った。


「ふぅ・・・」


身体から力が抜けて行く。


しかし、


「あ・・・ぁあ・・・」


また別のモノが触れる。
さっき描いた一本の道を辿るように。

ソレは熱かった。
そして、少し湿っていた。


身体が再び緊張する。


「く・・・ぅ」


でもその緊張はさっきとは違う意味のものだ。


緊張と興奮。
それは紙一重な感覚かもしれない。


熱く湿ったソレは、お尻までくるとやはり離れてしまった。


「な・・・んで」


俺は思わず呟いてしまった。
明らかに落胆の色が濃かっただろう。

目では見えないが、相手が身体を震わせているのが何となく分かった。

きっと声を殺して笑っているんだろう。

なんとなく、そこまで分かってしまう。


「・・・そこは!」


俺の声を聞いてどう思ったのかは分からない。
分からないが、気分を悪くしたわけではないだろう。

その証拠に、俺の胸に再び冷たいモノが触れる。
それは右の胸、乳首の周りをクルッと一周する。

俺の身体は面白いようにビクッ、ビクッと跳ねてしまう。

ただ、今度はそれだけでは終わらなかった。

冷たいモノが離れると、すぐに熱い何かに包まれる。


「あぁ・・・あつ・・・ぃ」


俺は感じたままを言葉にする。

熱い何かに包まれ、そして湿ったモノで乳首の先端を突かれる。
それだけではない。

「あっ・・・噛まないでくれ」

カリッと音がしたような気がした。

俺の乳首は相手に噛まれ、少し引っ張られたのだ。


意識が右の乳首に集中していると、不意に左の乳首に冷たいものが触れた。


「ダメ・・・だ・・・そんな・・・」


熱さと冷たさ。


その両極端な感覚を同時に与えられ、俺の思考は混乱する。

それがどういう作用をしているのか、俺の脳はそれを快感だと勘違いし始めたらしい。


「く・・・くるし・・・」


俺の下半身はすでに大きく昂っていた。
いつでも射精できるほどにまでなっていたが、そこまでの刺激は与えてはもらえていない。


目に見えない相手に訴えてみるが、すぐに許してもらえる程優しい人間ではないことは十分に分かっている。

分かっているのだが、訴えずにはいられないのだ。


左の乳首は冷刺激によって、感覚がなくなってきている。


すでに冷たかった何かは離れて行ったのに、まだそこにあるかのような錯覚も覚える。
ジンジンとした痺れだけが残った。


「ふ・・・ふぅ・・・」


次に右の乳首が解放される。


噛まれ過ぎた乳首は、きっと真っ赤に腫れあがっているだろう。
もしかして血が滲んでいるかもしれない。

目が見えない分、右の乳首に血を滲ませた自分が容易に想像できた。

想像の中の俺は眼隠しはされていない。
しかし、今と同じように手は拘束されている。

その表情は・・・・驚くほど穏やかだった。

痛みに悶えている様子もなく。
言うならば、少し喜んでいるようにも見えた。

そして、もっと触れてほしいと俺自身に訴えかけてくる。


「ひっ・・・それはやめ・・・」


ただ、そんな妄想に捕らわれている時間はほとんどなかった。

俺の思考を奪い取るように、また冷たい感覚が・・・
今度は身体の中で一番敏感だと思われる場所に当てられる。

俺の分身ともいえる場所はその刺激に、萎えていくように思えた。

が、それは思っただけで実際はそんなことはなかった。

すぐにそれは離れて行ったが、その後俺のそこは燃えるように熱く感じた。
熱くて・・・熱くて・・・

また同じようにして欲しい・・・一瞬そんな気持ちになるほどに・・・


「あぁあ・・・」


その願望は裏切られた。
嫌な風に裏切られたわけではなかった。

俺の分身はさっきとは違い、熱いモノにすっぽりと包みこまれた。

何をされているのか、それはいくら視覚を奪われている俺でも分かる。


包み込まれただけで終わるわけがない。


先端から根元にかけて、ヌルっとしたものが這いまわる。


”もう・・・ダメだ”


そう思った。

そして、それは口にも出てくる。


「ダメ・・・もう、ダメだ・・・イかせて・・・」


俺は見えない相手に向って精一杯の気持ちで頼み込んだ。

前に組まされたままの手を伸ばす。
しかし、その手には何も触れなかった。
それだけではなく、火傷する程の熱に包み込まれていたはずなのに、いつの間にか放り出されていた。


「な、なんで・・・イかせて・・・イかせてくれよ」


俺は相手を探すように首を左右に振る。
そこに少しでも気配を感じたかった。

「なあ・・・おい・・・」

呼んでも返事は帰って来ることはない。

どうしたらいいのか分からず、俺はどうにか上半身を起き上がらせる。

「いるんだろ・・・」

ベッドの上で膝立ち状態になった俺。

もう一度、次はもっと大きな声で呼ぼうと息を吸い込んだ時だった。




俺の耳元で、微かに声が聞こえた。



それに俺は従う。

上げていた身体をもう一度下ろす。
ただ、寝ころぶようなことはしない。

組まされた手で身体を支える。

顔は正面を向いたまま。

すると、顔に温かな手が触れられる。

「あ・・・」

その手に導かれるように俺はゆっくりと顔を下ろしていく。


匂いで分かる。


そこには俺のものとは違う、オスの象徴があるはずだ。

俺は迷うことなく、口を開く。
それを迎え入れるために。


「ふ・・・ぅ・・・」


口の中に少し苦味のある味が広がるが、そんなことは気にならない。

先端をチュクッと吸い上げる。
そして舌先で刺激を与えてやる。

そう、これは俺がされて好きな行為だ。


相手にもそれは伝わっているんだろう、俺の頭に添えられている手が優しく髪を梳いてくれる。


俺は少し口からソレを出すと、根元から先端に掛けて舐るようにする。
しかも、それが相手に見えるように舌を出し、煽るように・・・


何度かその行為を続けて、再び口の中に迎え入れる。


さっきよりも硬さは増し、大きさも、反りも違う。
それを触感と、食感で感じていた。


「んん・・・」


不意に俺は口に銜えていたものを噛みそうになる。

俺は夢中で気づいていなかった。

相手が不穏な動きをしていることに。


尻の間、排泄器官に再び冷たい感覚が襲う。

思わずそこに力を入れる。


すぐに離れていくが、またいつされるのか分からない。


「んぐっ」


そうなると、口淫がおろそかになる。


さっきまで優しく俺の髪を梳いていた手が、今度は俺の頭を固定させるような動きを見せる。
そして、勝手に腰を前後させると、俺の口をダッチワイフのそれと間違えているんじゃないかという動きに変わる。


俺はどちらに意識を集中させればいいのか分からなくなる。


口淫に意識をと思えば、後ろに冷たい刺激を与えられる。


「ん・・・んん・・・ん・・・」


”あ・・・来る”


口の中に受け入れているモノがビクンと震えるのが舌を通じて分かった。

俺はその瞬間を密かに待っていた。


「え・・・」


しかし、それは訪れることはなかった。


身構えた瞬間、ソレは俺の口から出て行ってしまった。

そして、呆然としている俺の顔に・・・温かい飛沫が


「な・・・なんで・・・」


俺は思わず声に出していた。





「あ・・・」


しばらくして俺の視覚はその機能を取り戻す。
それまでされていた目隠しが取られたのだ。

ただ、ずっとそんな状態だったために焦点が合うまでぼんやりとしか見えないでいた。


ようやく目が順応してくると、そこには彼が笑いながら座っている。


「どうだった?いつもより良かっただろ?」


彼はさも楽しかっただろうと言うような顔をしている。
俺はそんな彼の態度に、素直に頷くわけにはいかず


「あれ何だったんだよ?冷たさに心臓が止まるかと思った」


と文句をたれる。

彼はそんな俺の態度に怒ることはなく、ベッドサイドに置かれた皿を指さす。


「え・・・」


そこにあったのは、棒付きのアイスクリームだった。


「いつも以上に甘かった」


俺がそれを驚きの表情で見ていると、彼は俺の身体に腕を回しながら言う。
そして、


「じゃ、そろそろ待ち焦がれてたものをあげようか」


と手が俺の下半身を弄り始める。


「あ・・手、手は」


俺は彼に拘束テープで固定されたままの腕を見せる。

視覚は戻った。

もう拘束を解かれてもいいはずだった。


「うーん、そのままが燃えるから、そのままで」

「そんな」

「だってさ、あんたもその方が好きだろ」


彼はそう言い切ると、それ以上俺の言葉を聞き入れようとはしなかった。


嫌ならば抵抗すればいいのかもしれないが、そこは先に惚れた俺が悪い。
全てを受け入れてしまう。

いや、もしかして彼が言う様に本当に好きなのかもしれない。
それを彼は敏感に嗅ぎ取って実行しているだけなのかもしれない。

そう考えること自体が彼に惑わされている証拠かもしれない。

まあ、今はそれでもいい。

俺は彼の頬に口づけを落とすと、

「俺の奥まで早く入れて、グチャグチャにかき回して・・・・武治」

と彼が好きそうな台詞を言う。



「ああ、可愛いペットのオネダリには応えてやらないとな」





※ あとがき ※
7万hitお礼小説を完成させました。

これは「ペット」番外編です。
番外編も番外編、主人公が違いますから・・・

誰なのか分からないという人、これは「ペット」に出てくる主人公の友人です。

で、何が書きたかったのかと言うと、目隠しプレイです。
そして、誰を使って書くか迷った挙句がこうなったわけです。

裏話としては、武治の相手はゴツイ感じです。
何をしても壊れなさそうって感じで、バリバリのゲイです。
出会いは、ゲイの人達が集まるバーです。

職業は先生をしています。
で、体育の先生です。

名前は・・・まだ考えていません。

もし続けるなら、お道具シリーズでいろんな道具を使ったプレイをさせたいですね。

今回のお礼小説は期待外れだった・・・って気持ちになってないでしょうか?
それだけが心配。
お礼小説なのに、私の自己満足な小説ですみませんでした。