Mary Christmas
ここは2人の愛の巣・・・いや、愛のマンション


「良隆さん」

「はい」

「良隆さん」

「はい」


今日はクリスマス。
いわゆる聖なる夜。

それなのに、前中はシャンパンの入ったグラスを持ったままラブソファに座っていた。

そこはベッドルームでもなく、あるのは前中が主に仕事に使用するパソコンだけ。

いつもは前中がパソコンで仕事をしているのを、恋人でもある御木がラブソファに座りながら待っている。

しかし、ここ数日はその立場が逆転していた。

御木は毎日仕事から帰ってくると、しばらくパソコンから離れない。


「良隆さん」

「はい」


前中はそんな御木の後ろ姿を見ながら寂しくシャンパンを
煽るばかり。

名前を呼べば返事はあるものの、ちゃんと聞いているのか怪しいものだった。


「良隆さん」


それでも今日はクリスマス。

前中は我慢の限界を越え、御木の背中を後ろから抱きしめる。


「ちょっとは私を構ってください」

「え、え、え」


びっくりした御木は思わず、マウス操作を誤ってしまった。


「ああぁぁぁぁ」


今度は御木の大きな声に前中が驚かされる番だった。


「ど、どうしましたか」

「消えた・・・」

「え・・・」


ポツリと呟いた御木は前中の方を見ると、


「君が驚かせるから、消してしまったじゃないですか」


そう言った。

前中としては何が消えたのか分からない。


「何か重要な・・・」

「重要ですよ。

冬コミのサークルチェックリストが消えてしまったんですよ」

「え・・・」

「もう1週間しかないのに。またやり直しだ・・・」


御木は「もう」とブツブツ小さな声で不満を呟いている。

前中はというと、


「良隆さん、すみません。

でも、今日はせっかくのクリスマスなんですし・・・」


ともう一度果敢にアタックを試みる。

すると、前中の希望はようやく御木の耳にも届いたのか、


「クリスマス・・・」

「そうです、今日はクリスマスですよ」

「あ、え・・・」


ようやく思い出したように御木が前中の方を勢いよく振り返る。


「あの・・・あの・・・」

「いいんですよ、良隆さんはそれに夢中で忘れてたんですよね」

「あの・・・あの・・・」


御木はパクパクと口を開閉するばかりで言葉を失っていた。


「もう一回やり直すなら、せめて明日からにしてくれますよね」

「すみませんでした」

「じゃあ、ここからは私へのクリスマスプレゼントってことで・・・まずは一緒にお風呂に行きましょうか」


謝罪する御木に対して、前中はにっこりと微笑みながらようやく御木をパソコンから離すことに成功した。




次の日、御木はパソコンの前に座れないどころか、夕方近くまでベッドから起きあがることができなかった・・・