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聞いてみました、『あなたの恋人の魅力、もしくは好きなところはどこですか?』

< 藤野芳 編 >

「何だこれ、『恋人の魅力』?」

テーブルに置かれたアンケート用紙を見つけると、芳はしばしその場に止まる。


芳がまず思い浮かんだ恋人の名前は淺川狂慈。
まず間違いなく彼は芳の恋人には違いないだろう。


「魅力ね〜」


しかし、魅力と言われると困る。

芳の日常は狂慈に振り回されっぱなしと言えるのだ。
高校時代からの付き合いだが、縁あって再び付き合いだしたのは数か月前。
それも紆余曲折があっての現在。

まだ学生でもある芳は、ほぼ毎日大学へと足を運んでいる。

そして、講義が終わったのを見計らったかのように携帯に着信。
狂慈が迎えに来ることもあれば、その部下が迎えに来ることもある。

そのまま拉致されるかのように狂慈のマンションへと連行されて・・・・


「高校の時は・・・最悪だったな。
魅力の欠片すらなかったような気がするな。

会えば空いてる部屋に連れ込まれて、犯られるわ。
逃げようとすれば、縛りつけられる。
紐とかの道具の時もあれば、人の手だったりしたな・・・

絶対心よりも身体が絆されたってやつだよなー」


そう考えれば、やはり狂慈も大人になったということだろうか。


身も心も高校の時とは違う。
それを芳が実感したのはつい最近だった。



「やるぞ」

そう言うと狂慈は芳の腕を掴んで寝室へと連れ込む。
しかし、明日の予定は朝からバイトとなっている。

いつもの調子でいくと、1度で満足してくれることなどあり得ない。

そうなると、次の日のバイトに響いてくるのだ。


「狂慈、待てよ」

「あぁ?」


芳の一言は獣にはお気に召さなかったようだ。
低く唸るような声を出したが、芳の腕に食い込む指の強さは緩むことはない。

そのまま引きずられるように寝室まで運ばれてしまうと、ベッドへと突き飛ばされる。


「っう・・・」

「やらせろ」


そう言うと芳の上に狂慈が圧し掛かってくる。


「ちょっと・・・ちょっと、待てって」


そこで芳は両手に力を込め、突っぱねる。

その手から感じ取れる男の身体。
それは明らかに高校の頃に比べれば厚さが違う。

高校時代も狂慈がはある程度鍛えているようだった。
他の同じ年代の生徒に比べれば一目瞭然。

しかし、それだって芳が本気で抵抗すれば何とか逃げられる程だった。
だからそれを知っている狂慈としては芳を逃がすまいと、道具や人に頼っていた部分もある。


それが今では芳が本気で抵抗しても、全く歯が立たない気がするのだ。
おそらく、そのまま「黙れ」と言われ圧し掛かられたとして、芳がそこから逃げ出すことは不可能だろう。
だからといって芳も諦めることもできない。


「俺、明日、バイトなんだよ」

「あぁ?」


再び獣が吠える声が聞こえた。

”ああ、ダメだ。きっと明日はバイトに行けないだろう”

芳は狂慈の声に絶望を感じ取った。
抵抗をものともせず、狂慈は芳の身体を無理やり開いていくだろうと思った。

いや、高校時代からの行動パターンを考えればそういう展開になるのが簡単に予想できる。


「何時からだ」

「え?」

「バイト」

「・・・・えっと、10時から」


そこまで芳が言うと、狂慈が腕時計を見る。


「しょうがねえ、2回だけにしてやるよ」


そして、もう一度芳の方へと向き直るとそう告げる。


「え・・・?」


「その代わり、濃いやつな」


信じられない出来事だった。
狂慈なりの譲歩というものなんだろう。


「ん・・・ふ・・・ぁ・・」

「俺が2回で満足できるように、しっかり動けよ」

「え・・・っあ・・・ちょっ・・・」


そして、本当に内容の濃い2回をさせられることとなった。



「あれは・・・まあ、あいつも社会人として生きているっていうことで・・・俺のことを気にしてくれたのかもしれないな。
そう考えれば、あいつも大人になったんだなー」


しかし、その後の出来事まで思い出してしまった。



「や・・・お前・・・それ、何!?」

「それって、これか?」


『これ』と言って見せられたものは、蛍光ピンクが色鮮やかな親指ほどのボールがいくつも縦に並んだ・・・バイブだった。


「お、お前はそれを俺に使おうっていうのか!?」

「濃い1発にはやっぱこういうのを使うだろ?」


狂慈はそう言ってニヤニヤ笑いながら芳へと迫っていく。


「そうだな、これが嫌なら『俺は狂慈の大きなおち○ちんが大好きだから、道具は嫌』って言ってみろよ。そうしたら止めてやるよ」


「お、お前って奴は・・・」



そこまで思い出すと、


「やっぱり、あいつは最悪だ・・・」


アンケート用紙をクシャクシャっと丸めると、その場に放って帰ってしまった。









< 御木良隆 編 >

「アンケート?・・・恋人の魅力・・・?」


空欄部分に何を書くか、御木はふと恋人のことを考える。

交際期間は約1カ月。
親元から離れることはできないという自分の意思を尊重してくれ、今は週末だけを恋人の家で過ごす。
平日は少しだけしか会えない。

本当に恋人である前中は優しい人としか言いようがなかった。
御木に対しても、そして御木の母親に対しても・・・

ただ、心配症な部分もあると御木は考えていた。


「良隆さんにもしものことがあったら」


そう前中は言うと、ほとんど毎日のように送迎をしてくれるのだ。

前中の言う”もしも”と言うのが一体何なのか、理解しがたいものが御木にはあった。


「もし、痴漢に遭ったらどうするんですか?」

「そんな、男の私が・・・」

「いえ、私なら襲います」


前中の答えは即答だった。
そして、その目は真剣そのもので・・・


「いや、それは・・・君だからで・・・普通は・・・」

「もしかして、男好きな人間だったらどうするんですか?」

「でも、相手にも選ぶ権利があると思うんですけど」


御木は自分の容姿を自覚しているつもりだった。
特に高くない身長に、恋人の前中に比べれば容姿が優れているわけでもない。
年齢だって30歳と若くはない。

そんないくら男が好きな人間だったとしても、大勢の中から自分を選ぶことはないと思っている。


暗にそう言ったつもりの御木だったが、


「そうです、選ぶ権利があるからこそ言っているんです。
だいたい痴漢が選ぶ人間は、大人しそうで拒否をしない、そして訴えることをしないような人間なんですよ。
まさに、良隆さんじゃないですか」


そこまで言われてしまうと、御木には返す言葉は見つからなかった。


「仕事の前に悪いですよ」


そう言っても前中は送迎について譲らなかった。


「私はあまり働かない方が世の中には喜ぶ人間が多くいるんですから、気にしないでください」


心配症の恋人に少々驚きながらも、そんな経験が今まで無かった御木には新鮮で・・・
裏側にある優しさに惹かれてしまう。


空欄には”優しいところ”と書いてみる。


しかし、そう書いてしまうとその言葉がなんだか薄っぺらいようにに思えて仕方がなかった。



「優しいところ・・ですか?」

「あ・・・」


思わず後ろを振り返れば、そこにはアンケート用紙を覗きこんでいる前中がいる。


「私も書きましょうか?」


前中は楽しそうに笑いながら、簡単に御木の手からペンを奪っていく。


「良隆さんの魅力は、”自分の魅力に気づいていないところ”ですね」

「え・・・?」

「”人見知り”も挙げておきましょう。
その人見知りのお陰で良隆さんはフラフラしないんですから」


前中はスラスラとペンを走らせながら、いつの間にか御木の後ろへと回りこみ包み込むような体勢になっている。
そして御木の性感帯の一つだと知っていながら、耳元に息を吹きかけるように話す。

それだけで御木は身体の一部が熱くなっていくのを感じる。

最近はちょっとした触れ合いだけで簡単に火が付いてしまうのだ。

そんな自分に気づかれるのが恥ずかしくて、御木は俯いてしまうのだが・・・
その仕草を見た前中がさらに興奮し、舌舐めずりしそうな勢いだとは気づかない。


今も耳まで真っ赤にした御木を眺めながら、この後の展開を考えている前中である。


「そうだ、”恥ずかしがり屋な面もあれば、時々驚くぐらい大胆な行動をするところ”もですね」


そこまで書くと前中はペンをそっとテーブルに置く。
そして、それまでペンを持っていた手はゆっくりと御木の内腿を辿っていく。

もう片方の手は、着ていたシャツの下へと潜り込んでいく。

少し冷たく感じる掌に身体がピクンと跳ね上がるが、前中は気にすることはない。
逆にその反応を楽しむかのように、手を肌から離したり・・・触れたりを繰り返す。

その手がある一点を掠めた時


「あっ」


思わずといった感で御木の声が上がる。


「良隆さん」

「え?」

「この少し冷たい手で、あの敏感なところを触ってあげたらどうなるんでしょうね?」


前中の言葉に御木が想像した部分はどこだったのか。
御木はますます顔を赤らめ、自分の手で下腹部を守るように押さえる。


そんな御木の行動に、前中は

「御木さんはそこが敏感なんですね」

と笑いながら話す。


「そ、そういうわけじゃ・・・」


御木は驚いて顔をあげると、それを狙っていたかのように前中の唇が御木の唇を奪っていく。

重なり合う唇と唇。

その間にも前中は巧みに手を動かしていく。
決してパンツを下ろすことはなく、その上から、御木の手に自分の手を重ね合わせ、刺激を与える。

息が上がり、御木が唇を離そうとしてもそれを前中が許すことはない。

さらに唇を深めていきながら、御木にとってはもどかしくも感じる前への愛撫と、緩急を使い分けての胸への愛撫を同時に行う。
脳への刺激が強すぎ、御木の思考回路はドロドロに溶かされていく。


「良隆さん、私と・・・そして自分の手に射精させられる気持ちはどうですか?」

「あ、あぁ・・・」


前中の言葉が最後の刺激となり、御木は恥ずかしくも着衣のままに吐精してしまった。
射精の心地よい気だるさに前中の胸に寄り掛かる。

しかし、それだけでは終わらなかった。

「あ・・・んん・・・」

今出したばかりだというのに、前中がまたパンツの上から愛撫を開始し始める。


「や・・・嫌だ・・・」


御木は縋るように前中へと身体を寄せるが、前中はさらに愛撫を強くしていくばかりだった。


「”恥ずかしがり屋な面もあれば、時々驚くぐらい大胆な行動をするところ”っていうのは、特にベッドの中でですけどね」


「そんな・・・」










その次の日、アンケート用紙には一つ項目が手書きながらも増えていた。

『恋人の困ったところは何ですか』

”優しいけれど、時々意地悪でスケベなところ”