初めて密を拾った時は本当にヒョロヒョロな子供で、まさか虎城のその後を左右するとまでは思っていなかった。
現在の密は虎城やその周囲の愛情により、完璧な美少女(?)に育っていた。
さて、今日は新年を迎えて三日目。
密は朝早くから人一倍忙しかった。
「密、寝ないで」
「んー」
「ちょっと、よだれ!よだれをこぼさないで!!」
「ん、あぁ?」
半分眠っている密を立たせ、声を掛けているのは虎城の側近である八嶋。
誰がこんな面倒くさい企画を持ち出したのか、罵倒したい気持ちを押し殺しつつ、それでも八嶋の額には青筋が浮き立っていた。
現在の時刻は朝七時。
いつもはまだ夢の中にいる筈の密だったが、今日はけたたましいインターフォンの音に起こされ、拉致されるかのように車に乗せられた。
そして、車は別邸に到着。
別邸、いわゆる『虎城組』本宅には数人の人間が既に待機していた。
そして、待ち人が到着すると同時に二手に分かれて動き始める。
片方は邸宅の主である虎城の着付けを、そしてもう一方では密の着付けを。
虎城も
「おい、ちょっと支度するには早すぎねぇか?」
と一言告げてみたものの、
「ただでさえ準備でクソ忙しい中、お二人の着付けを頼んできたのは誰ですかね?
ちょっと朝早く起きるぐらい我慢してください。
それとも自分で着れるっていうんですか?」
そこまで言われてしまえば、虎城も黙るしかなかった。
虎城は大人しく着付けをしてもらうため、隣室に移ったが、八嶋にとってはここからが本番と言えた。
虎城と共に連れてきた密は一旦は目を覚ましたものの、車内ですっかり熟睡モードに突入してしまい、
虎城に抱えられて部屋に入ってきても目を覚ます気配はなかった。
「密、密!」
軽く頬を叩けば、
「ん・・・んぅうぅ」
と微かに目覚めの気配。
八嶋はすかさず、
「この間着たいと言っていた着物ですよ」
衣紋掛けに飾られている着物を密に見せるようにする。
綺麗なもの、キラキラしたものが好きな密の性質を熟知しているからこその行動だった。
「うぅ・・・チョウチョ・・・チョウチョ」
その八嶋の考えは少しばかり成功したと言えた。
目を擦りながら、密はその着物をちゃんと見ようとしているようだった。
「そうですよ。その蝶をこの身体に・・・って、密!」
しかし、睡魔にはまだ勝てないのか
「んん・・・」
うっかりするとまた眠ってしまいそうな危うい状態だった。
八嶋は腕時計で時間を確かめながら、
「仕方ないです。強制執行で」
そう言うと、半分眠っている密を無理矢理立たせると
「さあ、始めましょう」
と着付けを開始させた。
それまで着ていた服を脱がせると、平らな胸がまず晒される。
そして、ボクサータイプのパンツ一枚の姿にする。
着付けを任されている人間は今までにも何度か密のそういう姿を目にしているため動揺することはないが、初めて目にする人間は皆一瞬たじろいでしまう。
密の見た目は全くもって、美少女の枠に当てはまっていると言えた。
ショートからボブ程度の髪の長さ、その髪の色は闇のような黒で肌の白さを際立たせる。
体つきは華奢としか言いようがなく、すらりとした手や足は強く握れば折れてしまいそうな危険をはらんでいた。
しかし、服を脱げばそれが幻想だということが分かる。
密は少女にとってあるべきものが無く、本来なら無い物が存在していた。
そんな密の声は男性というには高く、女性にしては低く、なんとも曖昧なもので、初めて会った人間は必ずと言っていいほど混乱を来すことになる。
ただ、そのアンビヴァレントな性を匂わせる密は魅惑的で、人気があった。
ようやく長襦袢を着せられた密だったが、そこに早くも着付けを終えた虎城が入ってきた。
「なんだ、まだそんなことしてんのか」
立ちながら船を漕いでいる密に、
「ほら、起きろ」
と言いながら、人目を気にすることなく口づける。
「ん・・・んん」
数秒間の口づけだったが、虎城が顔を離すと密はさっきまでとは違い、パッチリと目を開いていた。
「こじょ、もっと」
そして、こちらも人目を気にする素振りを見せることなく、両腕を虎城の首に絡めていく。
軽く口を開け、虎城を誘う仕草を見せるが
「ダメだ。さっさと着替えろ」
「やぁだ。チュー」
つま先を上げ、顔を上げて迫っていくが
「密。起きたなら、さっさと着替えなさい」
と八嶋の厳しい声が掛かる。
その途端、密は口を尖らせ
「うぅぅうぅ」
唸り声を上げながらも、渋々といった感じで虎城から離れた。
その従順さは虎城に
「お前は本当に八嶋の言うことは聞くんだな」
と言わしめる程だった。
密は虎城の言葉に答えることはなかったが、長襦袢の裾を蹴るように大股で歩きながら虎城から離れる。
そして、ようやく着付けが始まろうとしていたところで、
「そうだ」
虎城が何か思いついたように、一際大きな声を発した。
密は虎城の声に、目を輝かせると
「何、何?こじょ、なにぃ?」
再び虎城の方へと戻ってしまう。
そんな密を懐に納めた虎城はニッと唇を歪めた笑みを浮かべると、
「お前も、俺も、退屈しない遊びを思いついたんだよ」
密の耳裏にきつく吸いついた。
「・・・勇生さん。今日はお正月なんですが」
八嶋の言葉を無視する形で、虎城は
「おい、玩具箱を持ってこい」
廊下に待機しているだろう組員に向けて大声で命令した。
一方で、密は虎城の『玩具箱』という単語に
「こじょ・・・遊ぶ?」
と小首を傾げつつ、妖しい顔を見せる。
「お前も期待してるんだろ。良い匂いだ」
虎城は胸に抱いた密の耳裏や首筋、項に舌を這わせながら密が発する濃くて甘い香を堪能する。
密も、虎城が発する野生的な香りに刺激されるように身体をブルッと震わせる。
「お待たせいたしました」
そう時間は掛からず、二人の玩具箱は部屋に届けられた。
「おい、八嶋以外は一旦外へ出ろ」
虎城の低く、威圧的な声にその場にいた人間は途端に緊張した面持ちになると、一言も発することなく部屋の外へと出ていく。
部屋には虎城と密、そして八嶋だけが残った。
「密。お前が選ぶか?」
大きなため息をこぼしながらも、八嶋は玩具箱の蓋を開ける。
小さな段ボール程度の一見すれば、可愛いキャラクターの描かれた箱にまさかいかがわしい物が入っているとは想像できないだろう。
しかし、そんなファンシーな箱の中身はサイズや形、使用用途も様々な、大人の玩具ばかりだった。
子供だった密が虎城の分身を受け入れるようになるまで、訓練と趣味を兼ねて使用していたが、
すっかり成長し虎城を難なくその身体に受け入れられるようになっても、時々二人は玩具を使って遊んでいた。
密は虎城に言われるまま、玩具箱の中を物色していたが、
「ん・・・ん・・・これと、これ」
悩んだ挙げ句に選んだのは、大粒のパールがいくつも連なったアナルビーズと、胸クリップだった。
クリップにはチェーンが付いていて、光が当たるとキラキラ輝く石が先端に鎮座していた。
虎城は密が選んだ玩具をニヤニヤしながら見ていたが、
「それじゃあ、これがおまけだ」
そう言って、繊細な花の刺繍が描かれたバンドを手にする。
しかし、そのバンドを見た密は少し顔を歪めると、
「それ、やだ」
と顔を背けた。
虎城が好んで選ぶそれを、密はあまり気に入らない様子だった。
「そう言うなよ。これを付けたお前はいつもより良い匂いがするんだよ」
言いながら虎城は素早く密が着ている長襦袢の裾を広げてしまう。
密は小さな声で「やだ」と言うものの、本気で嫌がることはなく、八嶋が身体を支えてやれば虎城が準備をしやすいように全身から力を抜く。
「こんな布は邪魔だな」
虎城は素早く密が穿いていたボクサーパンツを脱がせると、後肛に指を添える。
昨夜も遅くまで虎城と身体を繋げていた密のそこは、すんなりと虎城の指を中へと誘えば、
「勇生さん。時間が本当にないので、胸のアクセサリーは私が付けさせてもらいます」
「おうよ」
八嶋がいかにも機械的な動作で密の胸にクリップを装着していく。
「く・・・んん」
密は身体を痛さと、それに勝る快感に身体を震わせると、虎城が装着していく玩具に
「あ・・・入ってくる・・・ぅう・・・あ、あ、」
「ああ、ぎっちり奥まで入れてやるからな」
「こじょ・・・きもち、いい」
妖艶な笑みを浮かべていた。
アナルビーズを全て密の中に納めてしまう頃には、密の分身が少し兆していた。
それを虎城は軽く握りしめれば、先ほどのバンドで根本を締め付けるように固定する。
「や、きつ・・・こじょ・・・痛い・・・」
密が少し眉を顰めながら虎城に訴えるが、
「今日は長く掛かるからな」
その言葉と、笑顔を浮かべている表情で、弛めてくれる気はないと密は悟った。
「ぅうううぅ」
唸り声を出して、抗議しているつもりの密だったが
「さあ、準備は整った。せっかくだ、密も楽しめよ」
そう虎城が言えば何も言えるわけがない。
その上、
「それじゃあ、着付けを再開してもらいますからね」
と八嶋が宣言すれば、もう諦めるしかなかった。
かくして密の長く、淫靡な時間は幕を開けた。