ローマ水道橋の建造方法を考える  

(2016年5月22日)


 5月6日(金)にスペインのセゴビアにあるローマ水道橋を見た。持参したカメラの標準ズーム・レンズが故障してしまい、望遠ズームでしか撮影できなかった。このため全体を収めることは出来なかった。全長は728mある由。柱の数も80本ぐらいある。撮影した何枚かの中から1枚を添付する。



 セゴビアの水道橋は2段アーチで1段目の足が長い。見た目には3段アーチにした方が安定感がある。1番上の水路を支えるだけなら2段目のアーチは必要ない。つまり強度上は2段アーチにする必要はない。2段アーチにしたのは美的感覚の要求からだろう。

 この橋は石造建造物というより、石積建造物であるというのが私の一番最初の印象であった。石を積んであるだけでセメントやモルタルのような接着剤は使われていないのだ。

 このローマ水道橋が遠くから見ても石積建造物であると判るのは、各石に面取りをしてあるからである。この面取りは丸みをつけた面取りである。

 一番高いところでは30m近くある。各段の石の厚みは30cmから50cmぐらいであるから、最下面から水路のある上部までに、7,80個は積み上げてあることになる。積み木でもこの数を積み上げるのは容易ではない。

 各石の大きさは揃えられてはいない。かなりまちまちである。石を切り出したとき大きさを揃えなかったのは、これも美的感覚の要求であろうか。日本の大谷石は大体同じ大きさに揃えられて出荷されている。特に注目すべきは厚さも揃えられていないことだ。従って、右の柱では石が7段ある高さが左の柱では6段であったりする。

 各柱を数個の石で構成する各段の面だけは正しく揃えられている。個々の石の仕上げに時間をかけているのは上下の面だけである。側面は殆ど手を入れられていない。石を持ち上げるために使われる金具が掛かるように掘られた浅い穴もそのままである。工期を短くするためにも余計な作業は省くべきであるから、これは理に適っている。また、側面は仕上げをしない方が”石”である感じが強く出て美的感覚を満たすものでもあろう。

 アーチの作り方は多くの本で紹介されている。最初に木組みを作ってテーパの付いた石を並べていき、中央にキーストーンをはめ込んでしまえば木組みを外せる。

 注目すべきは、高い柱を石積みで作る方法である。各柱の各段を構成する石の数は2×3の6個から多いところでは3×4の12個ぐらいまでさまざまであるが、共通に言えることは各段の上下面が水平に精度よく積まれているということである。ローマ水道橋を2000年もの間、倒れずに残っている秘密はこの点にありそうである。

 各段を積んだ後に、その上面を正確に水平にしておけば橋の高さがどれだけ高くてもその重心が柱の中心からずれることはないという原理であろう。水平であることを確認する一番簡単な方法は水を張ることである。

 柱の低層では全体を囲んで水を張ることも容易であるが高層部では難しいかも知れない。水を漏らさずに覆うことは難しそうだからである。すると、各段で積む石の上下面を完全に平行に仕上げておくことが必要になる。上下面を平らに仕上げるだけでなく、平行度を精度よく仕上げることが必要である。

 平面精度を上げて石の上下をぴったり合わせることも、石自体の(圧縮)強度をフルに発揮させるために必要である。

 6個から12個で構成する各段ごとに上下平行面に別の場所で仕上げてから柱に積み上げたのであろうことは間違いない。当時の技術で石の面を平らにする方法はどのようなものであったか、既に知られているのであろうか。

(了)

 

 

 


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