裁判での確かさ

(平成21年6月6日)

   確かさが直接に問題となるのは裁判でしょう。刑事訴訟では被告の弁護と検察の陳述を裁判員が聞き、最終的に裁判長が有罪か無罪を判決します。裁判員は「被告は有罪である」という命題にどれだけ確かさを持てるかということです。

 先日、「カレー事件」の最高裁判決が下されました。被告の林真須美は無罪を主張している中で、一、二審の有罪判決が支持されました。弁護団はもちろんのこと、状況証拠だけの事実認定での有罪判決は「疑わしきは罰せず」に反しているとの声もあります。

 いくら裁判制度が確立していても、何故疑わしくないとするかに絶対的なことは何も言えないのですから、事実上は十分確かだとの確信をもてるときに有罪判決が下されることになります。物的証拠があれば問題ないとされていますが、物的証拠自体にも確かさがついてまわります。酷ければ捏造された物的証拠ということもあり得ます。

 自白が証拠とされないぐらいあやふやなものであることは大方が認めることです。取調べで脅迫されたのでなくても、本人が絶望のあまり有罪を望んで自白する場合もあります。

 「疑わしきは罰せず」を適用できない程の疑わしさが0.999999ぐらい確かであれば、つまり間違いなく犯人だと言えるほど確かであれば、判決が上告で覆ることは滅多に起きない筈でしょう。実際は上告審や再審で有罪判決が無罪になることが希でないことからも、犯人である確かさが0.99か0.999ぐらいであっても有罪とされてきたのでしょう。

 先日、DNAの再鑑定の結果から、再審を待たず釈放されて事件がありましたが、このとき被告にされた人の唯一の証拠となった、古いDNA鑑定では800の内1つは間違う程度しか確かでなかったとのことですから、0.999もなかった確かさで有罪とされたことになります。

 判決の是非の議論が後々まで残らないようにするには、「疑わしき」の確かさどの程度とするのかを定め、判決ごとにどのように確かさ決めたかを記録に残しておくことが必要でしょう。

 このためには裁判員には確かさを数値で表すこと、つまり確率表現の訓練が必要です。

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