皮袋モデル

(平成21年6月6日)

 実際の社会で何も情報がない場合を探すのは却って難しいことです。人は生まれてこの方、無意識にもいろいろな情報を耳にするからです。

 しかし、理論モデルとして情報がない簡単な例を考えることは有用です。よく使われるものは皮袋につめた碁石モデルです。皮袋にする理由は外から見えないことにあります。

 碁石は二つの碁笥に白石と黒石に分けて入れられています。碁石といっても白石はハマグリの貝殻から作られます。黒石は那智で採れる石が高級品とされます。白石は180個、黒石は181個合わせて361個あって碁盤の目数19×19=361に合っています。碁の対局で碁石を全部使い切ることはまずありません。

 さて、十分大きな皮袋に両方の石を全部入れると黒石が1個多いから1個除いて180個づつ入れることにします。この皮袋を十分混ぜて、1個だけ手を入れて取り出すものとする。那智黒とハマグリでは大きさを同じにしてあっても触感が微妙に違うので、感覚の鋭い人ならば触っただけで白石か黒石か判ってしまうでしょう。ここでは1個取り出す手は鈍感な人の手だとします。

 これが確率0.5で白石が取り出されるモデルになります。1個取り出したら白石であったか黒石であったかを記録します。そしてその1個は再び袋に戻すことにします。

 この皮袋のモデルでは、何回白石が続けて出てきても、常に次に取り出す石が白である確率は0.5であると考える人が合理的な人なのです。

 このような白と黒の石が同数入った皮袋から1個の石を取り出すという操作を10回続けて行ったとき、10回とも白石であったということが起こりうるでしょうか。

 この確率は確率理論の教えるところによると、(1/2)^10ですから、電卓で簡単に計算できて、ほぼ1/1000になります。つまり1000回に1回程度は起こり得ると説明されることが多いのですが、こんな退屈な操作を1000回もやってみる人はいないでしょう。もちろん1000回やったからと言って、1回も起こらないかもしれませんし、2回起こるかもしれないのです。

「最初から10回続けて白石がでる」という命題の確かさは0.1%、または1/1000であると言う人が合理的な人なのです。0.1%の確かさと言っても実感が伴わないかもしれません。それは小さな確率に慣れていないからです。

戻る