不変量と力  

(2017年3月26日)


 

 不変量(invariant)という言葉は数学用語でもあり、物理用語でもあり、専門用語であることは間違いありません。物理においての不変量は相対性理論の基礎において重要な概念の一つです。ここでは不変量についてこれより深く立ち入ることはしません。その代わり最後に簡単な解説を加えておきました。

 

 私たちの住む自然界には位置、長さ、体積、速さ、質量、温度、等、様々な物理量があります。これらの物理量の中で座標系の運動に依存するものがいくつかあります。以下、簡単に座標系とは通常の3次元の直交座標系(x、y、z)とします。そして、座標系が運動しているか否かに着目し、どの座標系から見るかで異なる物理量を「座標系に依存する」とします。

 

 いくつか挙げた物理量で最初の「位置」は座標そのものですから座標系に依存します。あなたがどこにいるのかを示すのに駅から100m北とか、何丁目の何番地とか、場合によっては世界地図まで必要かも知れませんが何を基準にしているかを示す必要があります。それが座標系です。あなたが静止していても動いている座標系から見ればあなたは動いています。従って位置は座標系に依存します。

 

 速さは単位時間の間の位置の移動ですから、座標系によって異なります。例えば、新幹線の速さ200km/時とは言うまでもなくレールまたは、地上に固定した座標で示しています。しかし、新幹線の座席に座っている人が車両に固定した座標系に対してはいつまでも動いていません。速度は速さに方向を加えた概念ですから、速度も座標系に依存します。

 

 加速度は単位時間当たりの速度の変化です。減速する場合は減速度と言い換える場合もありますが、減速する場合はマイナスの加速度です。速度が座標系に依存するので加速度も座標系に依存します。新幹線も動き始めやブレーキを掛けるときは加速度運動です。しかし、座席に座っている人は座ったままですから加速度を感じることはあっても、車両の中で位置が動くわけではありません。荷物棚に載せたカバンも元の位置にあります。

 

 長さは二つの位置の相対距離です。これは座標系に依存しないのです。新幹線の乗客が持っている30cmの物差しは、地上の人が見ても30cmのままです。(もし、新幹線の速さが光速に近づいている場合は別ですが、我々が日常的にに認識する世界での話です。)

 

 面積も体積も長さを2次元、3次元に拡張したものですから座標系に依存しません。この他、リンゴの質量もカイロの温度も座標系に依存しません。殆どの物理量は座標に無関係ですから座標系に依存しません。

 

 質量に速度を乗じた運動量はどうでしょうか。速度が座標系に依存しますから運動量も大きさが座標系に依存します。

 質量に加速度を乗じたものはニュートンの運動方程式から力の定義とされています。1Nの力は1sの質量に作用させると1m/s^2の加速度を生じる大きさと定義されているのです。加速度が座標系に依存しますから、この力も座標系に依存することになります。
 

 ところが、一般に我々が認識する力、例えば力士が力を出し合っているようなとき、どの座標系から見ても力は出ています。つまり、私たちが普通に認識する力は座標系に依存しないのです。物体に働く外力の大元は圧力です。圧力は座標系に依存しません。
 

 ロケットがエンジンを吹かして飛んでいるとき、地上から見たロケットは加速度運動をしています。しかし、ロケットに固定した座標系では加速度ゼロのままですから力がゼロということになります。ロケットがエンジンを止めると推力は出ていません。地上から見てもエンジンによる加速はありませんから推力はゼロです。ロケットがエンジンを吹かしているとき、推力を出しているのですから力がゼロというのはおかしなことです。

  この困った事情は力の定義に座標系に依存する加速度を使ったことにあります。従って、この困った事情を解決するには力の定義を変えるしかありません。バネで力原器を作れば良いのです。力原器は1Nの力を作用させると1m変化するバネなのです。定義を変えるだけですから、実際に作る必要はありません。(現状でも加速度を測って力を決めているわけではありませんから)

 

 力の定義を加速度から引き離すと、加速度運動をしている物体に必ずしも力が加わっているわけではないことにも納得がいきます。重力(Gravity)による物体の自由落下は地面に固定した座標系では加速度運動ですが、その物体に固定した座標系では加速度はゼロです。

 

 アインシュタインの生涯最高で最高の思いつきも力の定義が不適切であったことに帰着してしまいます。力の定義を力原器に変えることによって相対性理論が少し近づくことでしょう。

 

[解説]不変量について

 「長さ」が座標系に依存しない量であることを説明しています。長さの1端を原点にとればもう一方の端の座標は(x、y、z)で示せます。すると長さrの二乗はr^2=x^2+y^2+z^2で表せます。するとr^2は座標系に依存しないので3次元空間での不変量と言います。

 光速cに時間tを掛けて長さの次元にした量ct4番目の座標軸にした4次元時空の中では、距離sの二乗はs^2x^2+y^2+z^2-ct^2が不変量となるそうです。この式でct^2の項は負号です。

(了)


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