ドッキングまでの時間  

(2016年7月9日)


 

大西宇宙飛行士が乗ったソユーズは打ち上げられてから国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングするまで約50時間かかっている。油井宇宙飛行士がISSに向かったときは打ち上げ後約6時間でドッキングしている。3人の宇宙飛行士を乗せたソユーズは狭い室内で50時間も過ごすのは辛いことである。できることなら短時間でドッキングしてISSに移りたいと思うのは宇宙飛行士だけではない。地上で支援するチームの誰もが等しく望むことである。

ミッションによって打ち上げからドッキングまでの時間が異なるのは何故であろうか。この理由は宇宙ステーションの軌道と宇宙ステーションに向けて打ち上げるロケットの軌道の関係から課される制約にある。

国際宇宙ステーションに近づいてほとんど同じ位置を保つ飛行をランデブー飛行という。ドッキングするには、まずランデブー飛行の状態に入ることが必要である。ランデブー飛行をするということはISSの軌道とソユーズの軌道が全く同じになるということである。

ISSは軌道傾斜角51.6度で高度400kmの円軌道である。この軌道面は空間に固定されて地球と一緒に太陽の周囲を回っている。一方、地球は1日に1回転の自転をしている。このため地球の一地点である射場から打ち上げられるロケットによりソユーズが同じ軌道面に入るのは1日に1回の決められた時刻になる。打ち上げられたソユーズが小さな軌道修正ロケットを持っているので多少の軌道面の誤差を合わせることはできる。しかし、燃料の消費を少なくするために、この軌道面の誤差は出来るだけ小さくしなければならない。このため発射時刻の余裕、つまりロンチウインドウは数分程度とされる。

射場から打ち上げられたロケットが宇宙ステーションと同じ高度400kmの円軌道に入るには、打ち上げから25分程度かかる。ロケットの種類により、飛行経路の違いによりこの時間に多少の違いがあるものの、おおよそこのぐらいの時間である。軌道面も同じで軌道高度も合わせることは出来てもまだランデブー軌道ではない。

ISSがたまたま近くにいれば運よくランデブー軌道に入っていて幸いなのだが、一般的には遠く離れている。最悪の場合はISSが地球の反対側にいるので20,000kmも離れていることになる。

ソユーズは秒速8kmで地球を回っているわけだから、ISSから離れていても1時間で追いつけるだろうと考えるのは間違いである。ISSも秒速8kmで回っているのである。ISSとソユーズの離れている距離を相対速度で割った値が追いつく時間である。

ISSが進行方向の前にいてソユーズが追いつくためには、減速して(増速でなく)高度を下げる。すると軌道速度は速くなり下方から追いつくことになる。逆にISSが進行方向の後方にいる場合にはソユーズは増速して(減速でなく)高度を上げる。すると軌道速度は遅くなりISSが追いついてくる。

増速するにしても減速するにしても軌道修正用のロケットを作動さなければならないから燃料消費の制約があり極端な増速、減速はできない。言い換えるとISSとソユーズの速度の差、つまり相対速度を大きくするには制約があるということである。

打ち上げたときのソユーズとISSの前後の位置関係は打ち上げ日が決まれば事前に判る。従って、ソユーズはISSの軌道より高めに打ち上げる場合も低めに打ち上げる場合もある。

これらのことがドッキングまで時間のかかる理由である。打ち上げからドッキングまでの時間にミッションで差がある理由を要約すると次のようになろう。

@     軌道面を合わせるために打ち上げ時刻が決まる。

A     打ち上げから軌道に入るための時間は大体決まっている。

B     ISSと軌道に入ったソユーズの距離は一般的に離れている。

C     追いつくために必要な相対速度はあまり大きく取れない。

(了)


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