「光と重力」の生涯最高の発見について  

(2020年3月23日)


 ブルーバックスから2015年8月に次の本が出ています。

 著者の小山慶太氏は1948年生まれで、早稲田大学社会科学総合学術院教授(科学史)と紹介されています。この本はニュートンとアインシュタインの業績について関連文献の抜き書きなども載せてあり、簡明に書かれています。

 アインシュタインの”生涯最高の発見”に関して、多くの科学啓蒙書でも素通りしている重要な事実がありますのでこの本の記述を引用して、具体的に示します。

 アインシュタインは日本だけでなく世界の各地で講演したときに生涯最高の発見であったと語っていることがあります。本によって”発見”が”思いつき”であったり”アイデア”であったりします。

 アインシュタインは「自由落下中の物体には重力が消えている」ことにふと気がついたそうです。そしてこれは1907年のことであり、このことに力を得て一般相対性理論に取り組みました。

 この内容が上述の「光と重力」では149頁から150頁に次のように記載されています。

「1907年、まだベルンの特許庁で働いていたとき、アインシュタインは職場で突然、自由落下をしていく人は自分の体重を感じないのではないかと考え始めたという、あの逸話である。 
 体重を感じないとすれば、落下している人から見たとき、地球の重力は消失したことになる。消失の原因は、下向きの加速度運動にある。つまり、落下していく人に対し、地球の重力を相殺する上向きの力が発生したと解釈できる。この考えを敷衍すれば、重力と加速度運動の統一が視野に入ってくる。
 こうして、1907年、アインシュタインはベルンの職場で一人、一般相対性理論構築の出発点に立ったのである。」

 崖から飛び降りたときなどフワッとすることを経験します。ブランコでも最高点から下るときに一瞬フワッとなります。これらのことから自由落下をすれば無重力状態になるであろうことは知られていました。ニュートン以後、無重力状態になるのは重力と慣性力が釣り合っているからであるとの説明がされてきました。アインシュタインもこの説明を知っています。

 この本の著者も、当時アインシュタインの講演を聞いた人も、「重力が消えている」というのは「重力と慣性力が釣り合っている」からと理解したのでしょう。しかし、アインシュタインが重力と慣性力が釣り合っていることに気がついたのなら生涯最高の発見でも何でもありません。

 この著者も当時の講演聴講者も、重力が力であるという「常識」から離れられなかったのでしょう。アインシュタインの生涯最高の発見の真の意味に気がついていません。
 アインシュタインが気がついたことは自由落下中の物体の状態は力の釣り合いではなく、力が何も作用していない状態であるということなのです。

 物体が力の釣り合い状態にあるなら力の有無を必ず検知できます。力の釣り合い状態ではない、ということに気がついたことはニュートンの万有引力が力としては存在しなかったということになるのです。

 アインシュタインがこのように明確に万有引力を否定しなかったのはニュートンに対する敬意か、あまりにも確固とされてきた常識に異を唱えるのは愚かとの大人の知恵だったかでしょう。

 ニュートンは万有引力の式からケプラーの3法則を導き出せるとハレ―に説明したのですが、実際はケプラーの3法則から万有引力の式を導いたのでしょう。ケプラーの3法則には力の項も質量の項も出てきません。ケプラーの3法則から数式を変形させる途中で加速度の頃を力/質量で置き換えられています。これにより万有引力の式は力の式になっています。

 加速度の項を力と質量で置き換えたことにより、万有引力の式はニュートンの仮説でありました。そして、長らくこの仮説は実証されてきたと考えられていたのですが、力は存在していなかったのです。自然界に存在するのは重力と言う力ではなく重力加速度だったのです。これまで星の運動解析などから万有引力は実証されてきたと考えられていたことは、万有加速度(重力加速度)が実証されていたのです。

 それでも、重力加速度が存在するなら、その物体の質量を乗じれば(定義により)力が掛かっていると言えるのではないかと主張される人も多いでしょう。しかし、その力は実証できない”見かけの力”にすぎません。万有引力は見かけの力だったということではあります。

 質量に加速度を乗じた量が(見かけの)力ですが、質量に速度を乗じた量は運動量です。運動量も速度に依存する量ですから座標に依存する量であり、つまり、頭の中で想定するだけの量です。

 力の場合はそのまま検知できる座標に依存しない実際の力があります。日常生活で私たちが経験する力は実際の力です。これに対して、万有引力は検知できる力ではなかったということです。

 

(了)


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