おさかな生態塾

第9回 〜ダイバーが目にする魚たちの社会行動 5〜

 
カンザシヤドカリはイバラカンザシが開けた穴に住んでいる

 
 海の生物たちの個々の生態ではなく一般的によく知られている社会行動を「ダイバーが目にする魚たちの社会行動」と題してご紹介しています。今回も前回に引き続き「防衛手段」です。 

2.海の生き物の防衛手段 その2

・大きさで圧倒 

 陸のゾウに対して、海のクジラといったところでしょうか。大きさで捕食圧をさげています。その他にもマンタやジンベイザメも大きいことによって現在の繁栄があると思われます。ところが、意外にも一部のクジラやマンタなどは大きい割にはプランクトン食性だったりしてたくさん食べなければならない宿命でもあります。 

・大物に隠れる 

 クジラやサメ、マンタなどの大物に寄り添っていることによって捕食者から逃れているはコバンザメたちです。ちなみにコバンザメはサメの仲間ではありません。彼らは大型の生物に寄り添い、その生物の食べ残りを食べて生きています。コバンザメの背中の吸盤は魚の進行方向に対してはすんなりとはずれ、その逆では相当な力でもはずれないのだそうです。南の島の原住民はこれを利用して、コバンザメのしっぽにロープをつなぎ、それをたぐりよせて、サメなどの大きな獲物を捕っていたそうです。 
 また、生き物に隠れるのではないのですが、幼魚のなかには流れ藻に身を寄せて長い航海の旅にでて、成長して大きくなったら海の底で生活するようになるものもいます。 

・小さいことはいいことだ 

 海の世界は実に多様でただ単に小さいといっても幅が広いです。ここでは例としてサンゴに隠れるものとしてダンゴオコゼやデバスズメダイなどをあげておきましょう。デバスズメダイはサンゴの上で群で泳いでおり、ダイバーのエアの音を感じるとさっとサンゴの隙間に入ってしまいます。小さいといえばウミウシの中にはとてもちいさなものもいます。私が知っているのはヒロウミウシというウミウシです。こいつは大きくなっても15mmくらいしかなく、先日八幡野で見たときには4,5匹いたなかで、もっとも大きかったのが体長3mmくらいで、とてもかわいらしいウミウシでした。 
 しかし、なんでも小さいことがいいかというとそうでもなく、小さいと行動範囲が狭いため、劇的な環境の変化に対して逃げ遅れてしまい、全滅してしまうこともあります。 

・堅牢なたたずまい 

 動かないものは植物だと思われがちですが、サンゴも立派な動物です。自らで石灰性の固い殻を分泌し、その殻で身を守っています。サンゴは褐虫藻という藻類と共生しており、その光合成産物のほとんどをサンゴがもらうことができるため、動物の特徴である動くことをやめ、固い石灰性の殻を作り自分の身を守る道を選んだのです。そのほかにも褐虫藻と共生している例としては、シャコガイの仲間やソフトコーラル、ゼニイシの仲間がいます。また、貝類も自らで石灰質の殻を分泌し身を守っています。しかし、貝類の例外として、殻を作らないものがいます。ウミウシの仲間やテレビで有名になったクリオネ(ハダカカメガイ)は殻を脱ぎ捨てた貝の仲間です。 

・穴を拝借 

 貝殻や他の生物があけた穴を自分の住みかにして、危険を察知したら素早く逃げ込む。そんな防衛手段をとっているものがいます。ヤドカリやイバラカンザシ、トウシマコケギンポやミナミギンポなどがこれらの仲間にあたります。 

(次回は「2.海の生き物の防衛手段 その3」です)

 

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