おさかな生態塾

第6回 〜ダイバーが目にする魚たちの社会行動 2〜

 
マンタはプランクトン食性である
 
 前回お知らせしたとおり、今回からしばらくの間、海の生物たちの個々の生態ではなく一般的によく知られている社会行動を「ダイバーが目にする魚たちの社会行動」と題してご紹介していきます。今回と次回は「摂餌行動」を取り上げます。 

1.摂餌行動 その1

 食事のシーンというのはダイバーが見過ごしがちな行動の一つです。というのも魚が食事をするというのがほんの一瞬の出来事であったり、食事をしているように見えない場合が多いからです。たとえば、待ち伏せして自分の目の前に来た獲物を「パクッ」と食べる魚の場合だと何百分の1秒という速さで獲物をしとめます。しかもそういう魚はたいてい自分の身をカムフラージュさせていることが多く、ダイバーが見過ごす場合がかなりあります。また、プランクトンを餌としている魚の場合は口をパクパクしているだけだったり、口を大きく開けて泳いでいるだけなので、ガイドに聞いて初めて知るということもあります。 

 アクアリストは魚に餌をあげる時が至福の時だと言います。自分の思う通りにならない魚たちが餌をあげる時には自分に注目する。自分の行動に関心をもってくれる。「えさをくれるの?はやくちょうだい!」「よしよし、いまあげるからね」そんな会話が聞こえてきそうです。 

 これから紹介する海の生物たちは、サンゴのポリプやプランクトン、魚についた寄生虫やはたまた砂など、じつにさまざまな食性を持っています。これらの一つ一つが食物連鎖という大きな輪の中に組み込まれ、一つの大きな生態系を作り出しています。その食性の一部をひとつひとつ紹介していきましょう。 

 まずはじめに「プランクトンを食べる」魚たちです。こういった食性の魚には体長が10cmにも満たない小さなスズメダイから、魚類最大のジンベイザメまで幅広く浸透しています。マンタやジンベイザメなどは回遊性の魚で、表層をゆっくり遊泳しながら大きく口を開けて豪快に食べます。プランクトン食性の魚たちはおとなしいものが多く、ジンベイザメなんかもサメのわりには女性的な雰囲気があります。また、魚以外ではサンゴもプランクトン食性です。サンゴもれっきとした動物(腔腸動物)...。夜になるとサンゴはポリプとよばれる捕食器を広げ漂っているプランクトンを食べています。時にはゴカイといった大型のごちそうにもありつくこともあります。 

 次に紹介するのが「魚を食べる」、魚食性の魚たちです。弱肉強食の世界はここ水中でも繰り広げられています。どんな魚が魚食性かというと、ウツボの仲間とかエソの仲間とか、サメもジンベイザメを除いては魚食性だったと思います。その他にもたくさん見られますが、基本的な見分け方としては歯があるかないかである程度の見分けがつきます。まぁアンコウの仲間のイザリウオやハタの仲間など、魚を丸ごとのみこんでしまう魚には歯とかはないのかも知れません。また、よく「サメにかまれたら引くんじゃなくて押せ」といいますが、実際サメの歯は歯ぐきから歯のさきに内側に向かってはえており、引けば引くほど歯が食い込む仕組みになっています。イカには捕獲のための2本の腕があります。イカはこの腕で獲物をつかまえて鳥のくちばしのような歯でムシャムシャと食べます。カサゴを食べている写真などはダイビング雑誌でよく見かけます。 

(次回は「1.摂餌行動 その2」です)


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