おさかな生態塾

第4回 〜クマノミの生態〜

 
卵の世話をするトウアカ
卵の世話をするトウアカクマノミ

 
 クマノミとイソギンチャクの共生は学校の教科書に載ることさえあり、いまやダイバー以外にもよく知られている。 

 クマノミは定住性が強く、ダイバーが近づいても逃げてしまったり、隠れてしまったりということがほとんどない。卵を産みつける場所も住みかのイソギンチャクの陰である。じっくりフィッシュウォッチングするにはまたとない対象だ。 

 沖縄では日本産のクマノミ類の全種類が見られるので、沖縄を潜るビギナーならまずその識別に挑戦してみるといい。伊豆半島や伊豆諸島、小笠原では「クマノミ」1種類しか見られない。 

 通常、1つのイソギンチャクには1組の夫婦が住みついている。3匹以上いる場合、夫婦以外の魚は未成熟の小さな個体で、まるで家族が住みついているかのように見えるが、全くあかの他人である。まずは雌雄を識別して見よう。雌は身体が大きく、尾ビレが白い。雄は尾ビレが黄色いのですぐ見分けられる。 

 狭いエリアに定住しているためか、クマノミの個体間には順位性をはじめとするさまざまな社会行動が発達していることが知られている。身体の大きい個体が優位で、小さい個体の成熟や性転換を抑制しているという。 

 イソギンチャクと共生するクマノミ類は、雄から雌に性転換する雄性先熟の雌雄同体である。クマノミ類ではきっちりとした一夫一妻の関係が保たれており、そのため大きい個体が雌であった方が卵数が多くなる。 

 サンゴ礁では、大きなイソギンチャクに大小の2尾の成魚と数尾の未成魚・幼魚が1つのグループとしてすみついているのが普通である。成魚は大きい方が雌、小さい方が雄で、このペアはどちらかが死なないかぎり続く。雌が死んだり、何かの事故でいなくなったりすると、雄は未成魚のいずれかとペアになり、自分は雌に性転換し、未成魚は雄になる。 

 未成魚どうしがペアになった場合は、大きい方が雌になり、小さい方が雄になる。このような、相手次第のいかにもファジーな性の決定、すなわち雌雄同体性は、繁殖をなるべく早く開始するという点で雌雄異体よりも明らかに有利である。 

 子育てはどうかというと、雌が卵を産み付けたあとはかわって雄が卵に新鮮な水を送ったり、口でごみなどを取り除いたりする。雌は外敵を追い払う役目をしている。クマノミは雄から雌に性転換する魚だから、当然雌が上位になる。


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