おさかな生態塾

第2回 〜奇妙な魚・タツノオトシゴ〜

 
タツノオトシゴ
「龍」に似ているタツノオトシゴに会えると素直にうれしい

 
 おみやげやさんや神社などで安産のお守りとしてタツノオトシゴのペアを売っているのをみかけたことがある。奇妙な形はまさに「龍の落し子」であり、とても魚にはみえない。方言もその容姿から「ウミウマ」、「ウマノカオ」などと呼ばれ、英名も「シーホース」という。小さい頃から聞いたことはあるがまさか魚だったことを知ったのは最近という人は多いのでは。さて、海ではどんなところにいるかというと、たいてい海藻や腔腸類などに尻尾で巻きついて海藻と同様に潮の流れにゆらゆらしているカムフラージュの達人である。しかも体長は5〜10cm程で、さまざまな色の個体がいるので自分で見つけた時の感動は大きい。 

 容姿とともにユニークなのが繁殖行動。何がユニークかというと雄のおなかから子供が出てくるのである。雄が出産するといっても卵を産むのは雌である。というのは雄の腹部には育児のうという袋のようなものを持っていて、雌がそこの中に卵を産み付けるのである。そのあと雄は育児のうの中で卵を守り続け、およそ半月後におなかから稚魚を産出する。このような繁殖戦略は卵を他の魚に食べられる心配がないということでは生き延びる確率は高い(親ごと食べられたら最悪だが、その危険性はどの魚にもある)。また、少ない産卵で確実に稚魚まで生育できるという点も優れている。 

 さて、産出される稚魚は体長約数mmだが、親とほとんど同じ体型である。また、一人前に海藻にからみつくそうである。また、短期間で多数の子供を産むことから最初にも書いた安産のお守りにしているところもある。 

 タツノオトシゴの属するヨウジウオ科はヨウジウオ亜科とタツノオトシゴ亜科に分かれており、前者には尾びれがあるが後者にはないという違いがあり、尾びれがないかわりに、尾部で何かに巻きつくことができる。


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