おさかな生態塾

第1回 〜イザリウオ・名前の由来〜

 
クマドリイザリウオ
擬態が上手なイザリウオだが、クマドリイザリウオは例外?

 
 魚のくせにまともに泳がず、ヒレを足のように使ってヒョコヒョコ歩く様がなんともかわいいイザリウオ。アンコウの仲間で正確にはアンコウ目イザリウオ科。日本産ではイザリウオ属10種類、イザリウオモドキ属1種類、ハナオコゼ属1種類の3属12種類。体長は約10cm前後のものが多いが、中には30cmを越える大物もいる。さすがに大きいやつは気味が悪く、とてもかわいいとは言えない。足のように見えるものは胸ビレと腹ビレが腕状に変形したもの。またアンコウの仲間なので、背ビレの第1棘(きょく)が釣り竿(小魚やゴカイにそっくりにできていてる)のように伸びていて、これを振りかざして獲物をおびきよせてパクリとやるのは同じ。 

 さて、名前の由来はというと胸ビレと腹ビレを使って「海底水中をひきづるようにして歩く」(=いざる)ことからきている。普段はほとんど動かない。動かないことが自然の中での一番のカモフラージュであり、敵にも自分のエサにもみつかりにくいのである。また、エラの動きで存在を知られないように胸ビレのうしろに小さいエラ穴がある。こんなイザリウオだが、食事をする時間は全脊椎動物中最短というからおもしろい(ちなみにその時間は1000分の6秒!)。 

 同じ仲間にハナオコゼというのがいる。イザリウオとの違いは生息環境である。イザリウオが海底にじっとしているのに対して、ハナオコゼは流れ藻に乗って旅をする。流れ藻にはいろいろな魚が卵を産みつけ、その卵が孵化するとそこで生活する(これらの幼魚が黒潮にのって伊豆半島などで死滅回遊魚としてみられる)。この子供たちを食べにくる小魚も多く、ハナオコゼは口をパクパクするだけでエサにありつけるという。 

 ハナオコゼの名前の由来はイザリウオがその動作からつけられたものに対して、容姿が醜いことからオコゼにみたてられたものであり、同じような例としてはミシマオコゼがいる。


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