Back to Basic

第6回 〜浮き袋の働き〜

 

 

 「さかなとはなんだろう」を合言葉にさかなについて「基本にかえって」勉強してみたいと思います。今回は浮き袋の働きについてです。 
 

〜浮き袋の働き〜

 ・浮く力と浮き袋 

 同じ水の中で生活しているさかなでもよくみるとこんな違いがわかります。コイやキンギョのように水面と水底の途中でじっとしていられるものがいる。ドジョウやヒラメのようにいつも水底にいて水面近くまで浮くのが大変そうに見えるものがいる。また、いつも水面近くを泳ぎ回っていて休むことも知らないようなさかなもいる。この生活する場所や運動の違いは何に関係があるのでしょう。 

 さかなが水に浮く力とさかなが持っている浮き袋に深い関係がありそうです。 

 水は物を浮かそうとします。水の中にあるものはそのものが押しのけた水の重さと同じだけ軽くなります。水や湯の中でからだが軽くなるのはそのためです。押しのけた水の重さより、そのものの重さの方が大きければ物は沈みます。小さければ浮くのです。同じならば途中で止まります。 

 さかなが浮き袋の中の空気を増やしたり減らしたりすると体積が変わります。つまり、押しのける水の重さが変わり浮く力が調節できるのです。 さかなのからだにあるたくさんの脂肪もさかなを浮かすために大切な役目をしています。 

 川のさかなと海のさかなでは浮き袋に二つの大きな違いがあります。川のさかなの浮き袋は海のさかなの浮き袋より大きいこと。川のさかなは普通、胃とつながった浮き袋、海のさかな肺とつながりのない浮き袋であることが多い。この違いにはどのような意味があるのでしょう。 

 胃とつながった浮き袋を持ったさかなは口から空気を出し入れします。そうでないものは血管から空気の調節をします。海水は真水に比べて物を浮かす力が大きい。海のさかなの方が、川のさかなより浮き袋が小さいのはこのためです。 

 浮き袋の働きにもう一つ大切なことがあります。さかなが水の中に深くもぐると水の重さがさかなのからだにのしかかります。からだが周りから押しつぶされるようになって、体積が小さくなります。つまり、浮く力が小さくなりさかなはとても動きにくくなってしまうのです。このとき浮き袋がさかなの体積を増やし、動きやすくするような働きをするのです。 

 お風呂の中で空気で膨らませたタオルを湯の中にひっぱり込む。空気はたちまち逃げ出して小さくなってしまい、しかも引き入れるのにずいぶん力がいる。さかなも同じで深いところに潜るのには大変な力がいります。これを軽くするのが浮き袋の大切な役目なのです。 

 キンギョが底のほうに仰向けになっていたり、横倒しになっている。そして、そのかっこうで泳いだり餌を食べている。こんなおかしなことを見たことがあるでしょう。これはキンギョがよくかかる浮き袋の病気です。はっきりした原因はわかりませんが、浮き袋で浮く力を調節することができなくなってしまいます。ひれの動きだけではからだのバランスが取れなくなって、ひっくりかえったり横倒しになってしまうのです。実験で浮き袋の空気を抜いてしまっても同じような様子を見せます。 

 川のさかなは水面に出てきて空気を吸い、浮き袋のガスを出し入れします。したがって、下に潜るときは楽に調節できますが、下から浮き上がるときは調節しにくいのです。泳ぐ力で補って浮かびます。 

 多くの海のさかなは胃とつながりのない浮き袋なのでガスの出し入れに時間がかかります。深いところに住むタイなどが、潮の流れで急に水面に連れてこられるとガスを出すのが間に合わなくて、浮き袋が膨れ腹を上にして浮いてしまうことがあります。 

(つづく)

 

 

参考文献:学研の図鑑 「魚」 (学研)