The裏技

知らなきゃ損するニコノス使い必須の裏技

 
Part1.スローシャッターの謎
1/30は精度の問題?
皆さんご存知の通り、ニコノスVのシャッタースピードはAutoで1/30−1/1000秒の無段階、マニュアルで1/30−1/1000&M90&Bulbの8段階あるとカタログにも書かれてあります。ところがAutoでは1/30よりもあきらかに遅いシャッタースピードで切れる場合があるのにお気づきでしょう。そうです、Autoでも1/30よりスローシャッターが切れるんです。ニコンという会社のカメラは精度がきちんと出せない機能についてはそれを表に出しません。つまり1/30未満である1/15や1/8はニコンとしてきちんと精度が出せないからわざとカタログや取説に書いていないだけの話しなのです。しかし、1/8ぐらいまではほぼ実用上問題ないと言われています。それより遅いシャッタースピードは手ぶれの影響もあり、あまり使われないと思うのでどーでもいいでしょう。
ストロボ使用時の問題
ここで、ひとつ問題があります。そう、今話した内容はストロボを使用しない場合なんですね。水中写真ではほとんどのケースでストロボが必須です。ところが、ストロボを使用してシャッタースピードをAutoにすると無条件に1/90になってしまいます。これではAutoにする意味がまったくなくなってしまいます。これを何とかしないとAutoによるスローシャッターの利点が生かされません。
ストロボ使用時の解決策
どうすればいいかというと、ズバリ、ストロボのシンクロコードをシーアンドシーから出ているスーパーコードにすればいいのです。どうしてスーパーコードだといいのでしょうか?答えは簡単です。スーパーコードで接続した場合、ニコノスVは自分にストロボがつけられていないと判断し、その時の明るさでシャッターを切ります。つまりニコノスV単体で撮影しているのと同じ状況になるのです。それでは、なぜシーアンドシーのスーパーコードだとニコノスがストロボの接続を検知できないのでしょうか?
ニコノスとストロボの関係
通常、陸上・水中かかわらずストロボ(またはフラッシュガン)は2つの端子をショートさせることによって発光する仕組みになっています。つまりピンは最低でも2つは必要なんですね。しかし、2つのピンだけではカメラ側でストロボが接続されているかどうかがわかりません。 
ニコノスVやそれに接続できるストロボのピン(または接点)を数えてみましょう。どちらも5つだったと思います。このうちの2つは上で言ったショートさせるためのものです。残りの3つのピンがTTL調光やレディライト、ストロボの接続の検知などで使われていると思われます。それでは、スーパーコードのピンを見てみましょう。2つですね。2つしかありません。そうです、スーパーコードはショートさせるだけの2つのピンしか持っていません。TTL調光やレディライト、ストロボ接続検知のためのピンはないのです。どうやらここがミソのようです。
スーパーコードによる実験
それでは、ニコノスとストロボをスーパーコードで接続してみます。あっ、ちなみにスーパーコードが使えるのはシーアンドシー製のストロボに限られるようです。SB105などではストロボ側のコネクタの形状が若干違っているのでつけられません。つないだらニコノスV側のシャッタースピードをAutoに、ストロボをONにしてみます。ストロボのレディランプがついたところで、ニコノス側のファインダーをのぞいてみると...。やっぱりいちばん右にあるストロボ用のレディランプが点灯していません。シャッタースピードを見てみるとストロボが接続されていない時と同じような反応になります。ここでおもむろにシャッターを押してみると、ストロボが発光し、表示されていたシャッタースピードで切れたようです。ストロボがついてようがついてなかろうがカメラ内部では発光用端子をショートさせているようです。

それでは今度はシャッタースピードが1/30未満になるように絞りを変えてみます。右向きの▲が点滅している状態でシャッターを切ってみると...。カッ、カシャ。と明らかに1/30よりも遅いシャッタースピードで切れたようです。もちろん、シャッターと同時にストロボも発光します。スーパーコードを使用すれば1/30よりも低速でストロボと同調させることができました。

しかし、まだ問題があります。ニコノスはストロボが接続されていないと判断しているのでニコノスのストロボの同調速度(X接点)である1/90よりも高速でシャッターが切れることがあるということです。 明るい水中などで絞りを開け気味にすると1/125くらいのスピードは簡単に出てしまうので注意が必要です。X接点よりも高速にシャッターが切れると画面の一部が黒くなったりします。もっとも、この技はこのようなシーンで使うためのものではないので大丈夫だと思いますが...。

裏技の発祥について 
この裏技は古くからニコノスなどで水中写真を撮られている方には既知のものです。特にハウジングがほとんど量産されていない頃、プロの人達が好んでニコノスV+15mmの組み合わせにYS200やYS150といったスーパーコード仕様のストロボで使っていたようです。YS200は水中重量、配光、光量のいずれもバランスのとれたよいストロボで現在でも使っている方もいますが、こういった環境があったからこそ、この技が活用されてきたのだと思います。現在ではスーパーコード自体、ほとんど見かけなくなってしまいましたが、このような利点もあるのでスーパーコードは是非1セットは手元に置いておくのがよろしいかと思います。 

最後に...この裏技はもちろんハウジングにも使うことができます。F4を例にとると、ストロボがONになっているときに露出モードをA(絞り優先オート)にするとシャッタースピードは同調スピードである1/250より小さくなりますがほとんど多くの場合、1/60あたりになってしまいます。伊豆半島の水中でストロボをOFFにしてAにしてみるとf5.6,1/15くらいと表示するのにストロボをONにすると1/60になってしまい、うまく行きません。そこで、ストロボとの接続をスーパーコードにしてみます。そうするとF4はストロボが接続されていないと認識するのでf5.6,1/15と表示し、シャッターと同時にストロボも発光します。ただし、あたりまえですがこの時TTL調光はできませんので、マニュアル発光となります。うまく使えば、背景も被写体も露出OKな写真が撮れます。

お約束ということで...^^;
上記の内容は経験に基づくものであり、誰も動作等を保証するものではありません。実際に行うときには各自の責任で行い、それに基づくトラブルなどについては一切の責任を負いません。

 
 
 
Part2.「あー、フィルム替えたい」の巻
中途半端に残ったフィルム
みなさんはこんなときありませんか? 

 「フィルム10枚くらい残ってしまったニコノス...。でも次のポイントはいろいろ撮れそうだぞ。フィルム替えたいなぁ...でも、残りの10枚も惜しいなぁ...」 

ならば、ここは潔くフィルムを交換しましょう! しかも、残りの10枚もちゃんと後で撮影できるようにしておきましょう! 
幸い、ニコノスはフィルムの巻き戻しが手動です。ということは撮影済みのフィルムでも未撮影のフィルムのようにベロ(フィルムの先端のこと)を出したままにすることができます。こうできれば、その後もとの状態に戻して残ったフィルムで再び撮影ができます。まずはこの「ベロ出し止め」をやってみましょう。

How to 「ベロ出し止め」
それでは、現像したらただでくれたネガフィルムを使ってご紹介します。まずは適当にシャッターを切っていきます。残りが10枚くらいになったら、シャッターダイアルをRにして、巻き戻しましょう。巻き戻す前に必ずフィルムカウンターがいくつになっていたかを覚えておきます。そうしないと後でもとに戻すときの目安がなくなってしまいます。ゆっくり慎重に巻いていきましょう。すると、カクカクッとかすかな振動とともに巻き戻しが若干軽くなります。ここが、フィルムをセットしたときにフィルムの先端部分を引っ掛けていたのが外れたところです。この状態でさらに1/4回転ほど巻き戻し、おもむろにニコノスの裏ぶたを開けましょう。フィルムの先端がやや反り返ってますが、無事にベロ出し状態にすることができました。実際にはこのフィルムと他の未撮影フィルムを区別できるようにマジックなどで印をつけておきます。
もとに戻して撮影再開
さて、それでは次は上で取り出したフィルムを元の状態に戻してみましょう。フィルム装填はいつも通りに行います。セットできたら後は空(から)撮りするだけです。注意するのは空撮り中にフィルムを露光させないことです。確実なのはレンズキャップをつけて、絞りを最小(f22)に、シャッタースピードを1/1000にすればまず大丈夫です。巻戻す前に覚えておいたフィルムカウンターまで空撮りします。ただし、巻戻す前と少しだけずれている可能性もあるので予備に1枚多めに空撮りしておきます。そうしないと最後のカットの一部が二重露光して、2枚ともダメにしてしまう可能性があります。これで後はレンズキャップを外して、絞りとシャッタースピードを適正な場所にすれば完了です。最後まで撮りきりましょう。現像したときにコマとコマの間隔が一ヶ所ずれているところがありますが、そこがベロ出しする前と後の区切りです。

ここで、わたしの失敗談をご紹介しましょう。F4とニコノスで撮ってました。ニコノス側のフィルムが中途半端だったのでF4に入れ替えて、無事撮影終了。現像からあがってきてびっくり。前半のニコノスで撮った画面にしっかりと赤い露出情報が写しこまれていたのです。F4はMF23というデータバックをつけるとコマとコマの間に日時や露出情報などを写しこめるのですが、空撮りする際に写し込み状態にしたままでやってしまったため、フィルムの前半部分にもすべて露出情報(もちろん空撮り時の)が写しこまれてしまったのです。それもしっかりと写っている画面内に...。みなさんもこんなことがないように注意しましょう!?

万が一すっぽりなんて...!?
この技もなんてことはない、写真の世界では常套手段ですね。ただし、最近のオートフォーカスのカメラは手動で巻戻せず、自動でしかもベロまですっぽりとしまわれてしまいます。また、ニコノスでも巻戻しすぎてすっぽり、なんてこともあるでしょう。そんな場合には最終手段があります。街のDPEショップではおなじみのベロ出しツールです。ちょっとだけコツがいりますが、多分問題ないでしょう。使い方は細かくは説明しませんが、フィルムが出ていたところに先っぽを入れて、2周くらいフィルムをまわすとベロが出てきます(省略しすぎ!?)。 
ハウジングで中途半端に残ってしまったフィルムをニコノスに入れて予備として持って行く...。なんてケースにピッタリな技ですね。カメラを複数台持っている人ならば、知っていて絶対損はない技です。
お約束ということで...^^;
上記の内容は経験に基づくものであり、誰も動作等を保証するものではありません。実際に行うときには各自の責任で行い、それに基づくトラブルなどについては一切の責任を負いません。

 
 
Part3.「あー、たくさん撮りたい」の巻
みなさん経験ありませんか?
おぉ、というシーンに出会えてバシバシ撮っていたらフィルム切れ。もうちょっと撮りたかったなぁ...。なんてことたんさんあるとおもいます。1本のフィルムで少しでもたくさん撮りたいというのはフィルム交換ができない水中ならではのもの(でもないか)。最近のAF一眼レフだとフィルムをセットしてふたを閉めるだけでOKと簡単になりました。しかし、フィルムカウンターが1になるまで巻き上げてしまいますよね。これはもったいないです。なんとかこの1の前のフィルムも有効に使いたいところです。

幸か不幸かニコノスではいちいち自分でフィルムの先端を引っ掛けて、巻き上げレバーで巻いていくというマニュアルカメラならではの醍醐味(?)が味わえるカメラです。しかしながら、やはり説明書にも書いてあるように「フィルムカウンターが1になるまでは露出計はOFF、シャッタースピードは1/1000で切れる」ということで、やはりフィルムのはじめからまともには撮れなさそうに見えます。が、実は撮れるんですね。

コマの謎
現像から上がってきたフィルムの番号のところを見てみると、「X,00,0,1,...,36,E」と振られてるのがわかります(もしかするとX,00,0はわからないかも)。つまり36枚撮りフィルムの場合、コマ数で言えば40コマ分はあるということです。これが「=40コマ撮れる」というわけには行きませんが、うまくいけば39枚は撮れるでしょう。
フィルムの装填
この技でいちばん重要なのはフィルムの装填です。ここがうまくいけば39枚撮りも夢ではないでしょう。通常、フィルムの装填は明るい場所でするのでその場合から紹介しましょう。装填方法は今まで通りで結構ですが、できるだけ短い長さで装填してください。表に出てしまった部分のフィルムはもう完全に露光しきってますので、現像するとポジでは透明な画面です。このコマは恐らく「X」という部分のコマだと思います。ここにはもう何も写りません。できるだけ短く装填したら、後はふたをしめて巻き上げますが、フィルムの先端はちょっとだけ引っかかっている状態なのでうまく巻きあがらないかもしれません。そのための確認方法としてはシャッタースピードダイアルのRで装填し、ふたを閉めたらR以外の場所にして、巻戻しクランクで巻戻してみます。簡単に巻戻ってしまうようならば正しく装填されていません。正しく装填されていればこれ以上巻けないというぐらいまで巻いておきます。その後、巻き上げレバーで巻き上げます。明るいところで装填してしまうと「X」コマの次の「00」というコマの一部も露出してしまい、「00」コマも使えなくなりますので、フィルムカウンターは1の手前のまで巻き上げてしまってください。「00」コマまで活かすのならば真暗な状態で手探りでフィルムを装填してください。うまくいけば「X」コマも活かせるでしょう。
1コマ目まではどうするの?
さて、フィルムカウンターが1になるまでは露出計は作動しません。しかも、シャッターを切ると1/1000で切れてしまいます。どうしたらよいのでしょう...。ここでおもむろに「Bulb」にシャッターダイアルを合わせてシャッターを切ってみましょう。「カッカシャ」...。1コマ目の前でもBulbはBulbとして機能するようです。つまり1コマ目まではBulbで撮るか、1/1000で撮るかが選択できます。水中ではストロボが必須ですので1/1000で切るようなシーンはめったにありませんし、ストロボも使えません。陸上ならば絞りを開ければありうるでしょう。でも、その時の絞り値は別に露出計を持っていないとわかりません。また、レンズも陸上に対応してなければならずちょっと現実的ではないようです。Bulbならばストロボも使えるし、水中ならば1/30より遅いシャッターで切りたいときもあるでしょう。ということで1コマ目まではBulbで撮ることをお勧めします。ただし、Bulbですから手ぶれの問題もありますので気をつけてください。しかし、36枚(Eコマを含めると37枚)しか撮れないフィルムに38,39枚撮れるのならばやってみる価値はあると思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。
(追記:後で確認したところM90も1/90で切れるようです)
お約束ということで...^^;
上記の内容は経験に基づくものであり、誰も動作等を保証するものではありません。実際に行うときには各自の責任で行い、それに基づくトラブルなどについては一切の責任を負いません。

 
Copyright (C) Toshiaki Uematsu