Prologue

〜充電池の世界へようこそ〜

 電池はその名の通り、電気を持ち運びするための入れ物です。といっても電気そのものが入っているわけではなく、化学変化によって電気を発生する物質が入っているわけです。電池は1次電池と2次電池に区別されています。前者は乾電池やリチウム電池、ボタン電池などで1度使いきると再生できない(そういう物質を使用している)ようになっています。後者のほうは一般的に充電池と呼ばれ、化学変化を利用するのは1次電池と同様ですが、充電池に電気を流すと逆の化学変化が行われて再び電気を蓄えることができるという特性を持っています。ここではこの2次電池(以下充電池)に焦点をあててゆきます。

 充電池にはそれ単体で入ることのできる電気の量(充電容量)があります。Ah(アンペアアワー)もしくはmAh(ミリアンペアアワー)という単位で表されます。また、電池1つ(1セルと呼びます)の電圧はニッカド・ニッケル水素で1.2V、鉛蓄電池で2V、リチウムイオンで3.6Vです。

 昔、充電池と言えばニッカドや自動車に使われる鉛蓄電池くらいしかありませんでした。90年代になるとニッケル水素やリチウムイオンなど高容量の充電池が登場してきました。1994年頃、当時の単三ニッカド充電池が700mAだったのに対してニッケル水素充電池が1250mAhで登場しました。今(2002年)ではニッカドは1000mAhまで容量を増やしましたがここ5年ほど容量は増えていません。一方のニッケル水素は徐々に容量を増やしていき、ついに2000mAhにまで到達しました。

 ニッカドとニッケル水素は単体での電圧、充放電の特性がよく似ています。したがって、最近では多くの充電器が両方のバッテリーをサポートしています。

 さて、水中に目をやるとダイビングでバッテリーを使うのはどんなものでしょうか。水中ライト、カメラ、ストロボ、ダイビングコンピュータ...、いずれも防水構造として密閉された中で使うものです。ダイビングコンピュータは簡単に電池交換ができないようになっているので、高容量・長寿命なリチウム電池という1次バッテリーを使用するのが一般的です(一部に単四電池が使える機種があります)。その他は比較的交換間隔が短いために単三や単ニなど電池の交換が簡単にできるようなタイプの電池を採用しています。一部のライトやストロボには専用の組み込み式充電池を使用しているものもあります。

 それでは以下に現在存在している代表的な充電池についてその特徴をみてみましょう。

【ニッカドバッテリー】

 電極にニッケルとカドミウムを使用していることからニッカドと呼ばれています。エネルギー密度(同じ体積に入る電気の量)はニッケル水素やリチウムイオンにかないませんが内部抵抗(電気の取り出しやすさを表す)が低いので大電流放電が可能です。水中ストロボでいうとチャージ時間が最も短い電池です。単一から単四まで普通の1次バッテリーと同じ形のものやそれ以外の組み込み用などサイズがいろいろとあります。容量はニッケル水素よりも落ちますが、短時間でたくさんの電気を流すことができるのでストロボの使用に適しています。

【ニッケル水素バッテリー】

 電極にニッケルと水素吸着合金を使用しています。ニッカドに比べエネルギー密度が高く、同じサイズならばニッケル水素のほうが2倍近くの容量があります。最近では単三タイプで1900mAとか2000mAという容量も出てきました。ニッカドに比べると内部抵抗がやや高く、ストロボのチャージスピードはニッカドよりも若干遅くなります(最近はあまり差がなくなりました)。こちらもさまざまなサイズがあります。消費電力の大きいデジカメに適しています。

【リチウムイオンバッテリー】

 電極の間をイオン化したリチウムが移動することで充放電しているということくらいしか知りません。特徴は電池1本の電圧が3.6Vで、上記2つのバッテリーの3倍です。エネルギー密度は非常に高いのですが厳しい充放電の管理が必要で、そのために保護回路をつけたバッテリーパックという形で発売されています。また、専用の充電器が必要ですので用途外で使用するのはちょっと厳しいです。専用電池パックになってしまい、単三や単ニといったサイズのものはありません。もちろん一般的なストロボやライトにも使えません。ビデオカメラ用のバッテリーやデジカメに多く採用されています。

【鉛蓄電池】

 自動車に使われている古くからあるバッテリーです。電圧は6V(バイク),12V(乗用車),24V(トラック)などが一般的です。電極が希硫酸の液にひたされています。エンジンの始動に使われるくらいですから、大電流放電が可能です。エネルギー密度は高くないのですが巨大なバッテリーをつくることができます。電動フォークリフトでは48Vの400Aなんていうお化けバッテリーもあるほどです。12Vくらいだと1バッテリーで100Ah(100000mA)クラスのものもあります。ラジコンが趣味の人はニッカドやニッケル水素バッテリーを屋外で充電する場合の親バッテリーとして使っています。同じ鉛蓄電池の仲間でディープサイクルバッテリーというものがあります。普通の鉛蓄電池は一度あがってしまう(電気を使い切ってしまう)と寿命が短くなるといわれるように、空っぽまで放電してしまうのはよくありません。したがって、常に満充電の状態になっていないといけません。しかし、このディープサイクルバッテリーはその名の通り空っぽまで放電しても繰り返し使えるように作られています。また、シールドバッテリーと称して横に倒れても液漏れしないバッテリーもあり、ダイビング関連ではアポロの水中スクーターや一部のHID水中ライトがこのタイプの電池を使用しています。家庭用の太陽光発電システムでは発電した電気をこれらのバッテリーに蓄え、その電気を100Vに変換して使用します。

 いかがでしたか? バッテリーはその特徴によってさまざまな用途に用いられています。その特徴をよく理解して、充実したバッテリーライフ(?)をお送りください。

おわり

 

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