Charging

〜充電のしくみ〜
Verion1.0
as of 2002.9.20

 当たり前ですが充電池は充電してこそ繰り返し使えるわけで充電器がなければ1次電池と変わりません。充電とは充電池に電圧と電流を与えることで電池内部で発電とは逆の化学変化がおきて、再び発電ができる状態にすることです。

[充電における電圧と電流]

 充電はバケツと水道の関係によく似ています。水道の蛇口をひねり、バケツに水をためる。水道が充電器、バケツが充電池、水が電気と当てはめれば充電になります。ただし、水とは違い、充電では電気をそのままためているわけではなく、物質に化学変化を起こさせて発電できる状態にしているわけです。
 蛇口を多くひねれば勢い(水圧)が増し、少ない時間でたくさんの水をためることができます。この勢いは電圧にあたります。空気の圧力である気圧や水の圧力である水圧は圧力の高いところから低いところへ流れます。電気の圧力である電圧も例外ではなく高いところから低いところへ流れます。充電は充電池が持っている電圧よりもやや高い電圧で電気を流してやれば電気をためることができます。

 バケツに水を短時間でためるには水道の蛇口をたくさんひねればいいわけですが、充電池の場合はそこまで単純にはいきません。充電池は高い電圧で充電しようとすると充電池側で流れてくる電気をすべて吸収することができません。この状態は充電池にとってよくないことです。これはバケツを例にすれば、バケツの中にスポンジが入っている感じに似ています。バケツの中にスポンジが入っている状態で蛇口をひねり水圧をあげても水の一部はスポンジにはじかれてうまく入りません。一方、蛇口のひねりを適度にするとスポンジは水をはじくことなくスムースに入っていきます。これと同様に充電池も適度に高い電圧で充電することでスムーズに電気が入っていきます。

 電圧のほかにもうひとつ重要な要素があります。電流です。水道で例えれば蛇口の太さにあたります。水圧が同じでも口径が太ければ同じ時間でより多くの水をためることができます。しかし充電の世界ではこれにも限界があり、電流が大きすぎても充電池にうまく充電することはできません。

 充電池への電気の入りやすさ度合いを内部抵抗といいます。内部抵抗が低い充電池ほど電気がスムーズに入っていきます。さきほどの例でいえばスポンジの目が粗い感じです。内部抵抗が高いとなかなか電気が入っていきません。スポンジでいえば目が細かい感じです。一般的にニッカド充電池は内部抵抗が低く、高い電流で充電することができます。それに対してニッケル水素充電池はニッカドよりも内部抵抗が高く、ニッカドほど高い電流で充電すると途中で満充電になったかのような挙動をします。

 つまり、充電は適度な電圧とバッテリの特性に合った適度な電流を与えてやる必要があるのです。

[長時間充電器と急速充電器]

 充電に必要な電圧と電流について、なんとなくでもわかりましたでしょうか。充電池に合った適度な電圧と電流を与えればスムーズに充電されていくことでしょう。

 さて、充電に必要な電圧と電流を制御してくれるのが充電器の役割ですが、種類として2種類あります。ひとつは長時間充電器と呼ばれるもの、もうひとつは急速充電器と呼ばれるものです。名前からして充電に必要な時間が違うことくらいはわかりますが、どうもそれだけではなさそうです。

 長時間タイプの充電器は流れる電気の量(電流)が少ないため、充電池が満タンになるまでの時間が8時間とか10時間かかります。したがってたくさんの電池を手早く充電したいときには向いてません。しかしながら、次のようなメリットがあります。充電池が満タンになれば、入りきらない電気はあふれて熱になります。長時間タイプの充電器は電流が少ないため、満タンになった後の電気のあふれ方がゆっくりなので電池へのダメージは最小限に抑えられます。充電の停止はタイマーで制御されているので充電回路が単純になり、一般的に急速充電器よりも値段が安いです。しかし、タイマーであるが故に容量の大きな充電池だと、満充電前にタイマーが切れて充電が終了してしまうことがあります。長時間充電器がサポートしている容量以上の充電池の場合には要注意です(注:長時間充電器すべてがタイマー制御かは調査しておりません)。逆に残容量が残っている状態で充電して、タイマーが切れる前に満充電になっても電流が低いのでほったらかしにしても充電池は痛みません。

 一方、2時間とかで充電する、いわゆる急速充電器は長時間充電器に比べて電流の量が高いため、早い時間で充電することができます。しかし、電流が高い状態で満充電を越えると充電池に重大なダメージを与えてしまいます。それを回避するために急速充電器には満充電を検知する回路が組み込まれています。

 以下にそれぞれの充電器のメリット・デメリットをまとめてみます。

−長時間充電器−
メリット
・値段が安い(満充電検知が不要なため)
・過充電による電池へのダメージが少ない

デメリット
・充電に時間がかかる
・充電器が想定している電池容量よりも多い充電池の場合、満充電前に充電が終了する恐れがある

−急速充電器−
メリット
・充電が早い
・満充電検知により、容量残の充電池ならばさらに早く充電が完了できる

デメリット
・値段が高い

[急速充電器の満充電の検知方法]

 充電池には容量があり、その容量を超えて充電することはできません(新品に近い充電池は定格以上の容量が充電できることもあります)。容量を超えて充電しようとするとあふれた電気が熱となります。特に急速充電器では高い電流で充電しているので満充電を越えて充電しつづける(過充電)とバッテリーに致命的なダメージを与えます。それを未然に防ぐために急速充電器ではバッテリーが満タンになったことを検知しています。どのように検知しているのでしょうか。

 ニッカドやニッケル水素充電池は充電開始から徐々に電圧があがっていき、満充電に近くなると電圧が若干下がるという特性があります。この電圧の低下を検知することで満充電を判断することができます。この充電方法を「デルタ−V(マイナスブイ)方式」と呼びます。この方式はほとんどの急速充電器で採用されています。この方式では充電器が直前の充電池の電圧を記憶しておき、現在の電圧と比較しています。通常ならば現在の電圧のほうが過去の電圧と比べて等しいか高くなっているはずです。これが満充電になり電圧が低下すると、直前の電圧のほうが高くなります。これを検知して充電をストップする、これがこの方式の仕組みです。

 最近ではニッカドもニッケル水素も充電できる充電器がほとんどですが、ニッケル水素が出たての頃はニッケル水素充電池に対応していない充電器もありました。対応するしないということは、ニッカドとニッケル水素とでは充電方法が違うのでしょうか。

 実は両バッテリは満充電の徴候である電圧低下の度合いが違うのです。満充電時の電圧低下はニッカドのほうがニッケル水素よりも大きいことが知られています。ニッカドの電圧低下は−数百mV(ミルボルト)に対して、ニッケル水素の電圧低下は−数十mVと言われています。電圧低下の度合いが大きいということはそれだけ満充電を検知しやすいとも言えます。ニッケル水素対応の充電器では満充電時の電圧低下が少ないニッケル水素充電池のために電圧のチェックを厳しく行っています。ところがこれが災いして、充電途中なのに充電が完了してしまうことがあります。それはちょっとしたことで電池の電圧が下がってしまっても、充電器はそれを充電完了と勘違いしてしまうのです。よくあるケースとしては充電中にバッテリーを触ったりすることで電極同士がこすれ、わずかながら電圧に変化が起き、それを充電器が満充電によって電圧が低下したと勘違いして充電を終了してしまったりします。ですから、ニッケル水素充電池を充電している時に充電池を触れるくらいならばいいですが、いじったりはしないほうがいいでしょう。

 また、充電池が満充電になるとあふれた電気が熱となるため充電池が暖かくなります。高機能の充電器ではこの充電池の温度を検知してそれも満充電の判断にすることができる機種もあります。ニッケル水素充電池は特に満充電時にはかなり熱くなるのでこの検知方法は有効だと思います。

[充電電流について]

 充電池にはそれ自身がどれだけの電気を蓄えておけるか、つまり容量を示す単位があります。mAh(ミリアンペアアワー)やAh(アンペアアワー)といいます。AhはmAhの1000倍の値です(1000mAh=1Ah)。充電池のラベルには必ずといっていいほど容量の表示がされています。ある電池では1600mAhと書かれていたとします。この充電池は1600mA消費する電気機器を1時間使うことができるということになります。200mAの電気機器ではおよそ8時間使用できるだけの電気を蓄えているということになります。

1600mAh = 1600mA x 1h(hour)
1600mAh = 200mA x 8h

 つまり、充電池を使用する機器の消費電力が分かれば、どのくらい使用することができるかがわかるのです。

 先ほど、充電とは適度な電圧と電流を与えることだと書きました。電圧は充電する電池の電圧よりやや上回るくらいの電圧であればいいとのことでしたが、電流の量はどうすればいいのでしょう。充電電流は多すぎる、少なすぎるというのはよくありません。長時間充電器、急速充電器はどのくらいの充電電流なのかをみてみましょう。

 ある充電池が1600mAhの容量を持っており、この充電池を10時間で充電する長時間充電器があるとします。1600mAhの容量を10hかけて充電するわけですから単純に計算すると、

1600mAh / 10h = 160mA

となり、この長時間充電器はだいたい160mAの電流で充電していることになります(実際は電気のロスがあるのでもっと多くなります)。

 では、同じ充電池を2時間で充電する急速充電器ではどうでしょうか。

1600mAh / 2h = 800mA

となり、急速充電器ではだいたい800mAという電流で充電していることになります。電池の容量は種類によってさまざまですので、ここに800mAhの充電池があったとしたら、これを1時間で充電することができる計算になります。

800mAh / 800mA = 1h


[充電の際の注意点]

 4本の電池を使うストロボを使ったとします。この4本は均等に使われているはずです。したがって、4本まとめて充電することが可能です。さて、最近のウォークマンは充電池1本で動くものがありますね。ウォークマンでばらばらに使用した充電池が4本あったときにまとめて充電するのはどうでしょうか。実はこれはよくありません。充電池は残りの容量がバラバラのものを充電すると、比較的容量の残っていた充電池が先に満充電します。しかし、他の充電池がまだ充電できるので満充電と検知されず、過充電になってしまいます。こうして過充電となった充電池は寿命を縮めることになります。

 複数の充電池を充電する際の大原則は1本なら1本、2本なら2本、4本なら4本のセットで充電することです。決して別々の機器で使用した充電器をひとつの充電器で充電してはいけません。ただし、充電器によっては例外があります。わたしの手持ちのFUJIFILMの急速充電器は4本の単三充電池を充電可能ですが、A、Bと2つの充電回路がついており、2本単位で充電することができます。つまり、4本の充電時はAに2本、Bに2本単位で充電します。2本セットの充電池が2セットあった場合もA,Bのそれぞれに分ければ残りの容量がセットごとにバラバラでも独立して充電することができます。また2本だけ充電したい場合でも、Aに1本、Bに1本でセットすれば、片方に2本セットしたときよりも倍の早さで充電することができるすぐれものです。

[最後に]

 いかがでしたでしょうか。はじめにも書きましたように、充電は最適な電圧と電流を与えることで、充電池内で発電の逆の化学変化を起こさせることです。今回はニッカドとニッケル水素の充電の特性についてお話しましたが、他にも鉛蓄電池やリチウムイオンなどの充電池があり、それぞれ充電方法が異なります。しかし、電動ラジコンの充電器として有名なシェルツェというドイツのメーカーの充電器はニッカド、ニッケル水素はもちろんのこと、鉛蓄電池やリチウムイオン充電池までも対応しているスーパー充電器もあります。まぁ、これら充電器の話はまた別の機会を設けてお話しようと思います。

おわり

 

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