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戸祭山緑地のトウキョウサンショウウオ 戻る

     グリーントラストうつのみや   戸祭山緑地  レッドパイン  福田南海男

1 戸祭山緑地とレッドパイン

栃木県庁の北側のわずか1km足らずの距離にある里山は戸祭山緑地と称し、平成元年(1989)に市が地元の地権者から買収し、市有地化して緑地保全を基本として市民の憩いや健康増進の場として活用するとした。「戸祭元町今昔 福田勝美著」 その後グリーントラストうつのみやのの保全地域に指定され、ボランティア団体としてレッドパインが活動している。岡田喜三氏を会長として会員約25名(平成30年現在)が参加している。隣接する八幡山公園はよく整備されて桜の名所として市民から愛される憩いの場所になっているが、戸祭山緑地は以前には斎場があり、市民は訪れることが少なく、杉や赤松の林が長らく放置され、低木層にアオキやカシ類やアズマササが繁茂する昼暗い里山であった。そこを昔の生物の多様性のある明るい自然の里山に戻そうと活動を始めたのがレッドパイン活動グループである。東側に残る赤松林に因んだ名前である。そこにはわずかながら生息する貴重なハルゼミがいる。

2 トウキョウサンショウウオ  Hynobius tokyouensis
かつて県庁の西側の戸祭本町の水田を潤していた求喰川(あさりがわ)の源流の貯水池が3つ残っている。馬蹄形の尾根に囲まれた今の競輪場の駐車場の奥にある西池、中央池、東池である。現在の川は競輪場通りから地下の排水路で田川につながっているので地上では見られない。この池にトウキョウサンショウウオが生き残っていたのである。栃木県博物館の両生類の権威者である林光武先生がかねて調査保護活動していたのをレッドパインも協力を始めた。2014年に加入した私は興味を持ち担当者として参加してきた。そこで得た多少の記録を纒めてみた。
近くに住む私は昆虫少年としてこの山を含めて良く歩いていた。水溜りによく卵嚢を見ていて、後にサンショウウオの権威者 赤羽記念先生からカスミサンショウウオ、のちにトウキョウサンショウウオ(東京都西多摩郡多西村産の標本に1931年田子勝彌氏によって記載された)と教わった。当時は山続きの長岡樹林地を含め広く分布していた。
2-1 産卵期
3月から4月 気温と降雨に左右される。雨後に産卵が活発化する。
初見日の記録は
2016年3月5日 神経溝
2017年3月17日 干上がる卵嚢 球
2018年3月12日 球体 胞胚後期
2019年3月2日 乾燥続きで産卵無し
2019年3月16日 降雨で水が出て卵嚢が多数見られた。ほぼ神経胚で同時に産卵されたようだ。
例年4月中旬の10日前後に卵嚢数を調査している。


2-2 卵嚢の重さ
2018.4.21 言語教室側溝水路にて調査   福田  笹沼

個体番号 卵嚢の重さg 長さmm
1 35 70
2 21 75
3 29 68
4 34 70
5 22
6 26 75
7 32 70
8 32 70
9 32 70
10 28
11 27
12 28
13 26
平均 28.6 71

2-3 卵嚢と産卵状況
産卵場所は止水か緩い流れのあるところで、流量のあるところでは卵嚢あるいは幼生が流失してしまう。広い池など、例えば東池ではアメリカザリガニなどの天敵が多いので繁殖が難しい。そのためアメリカザリガニの駆除によって辛うじて維持できている面がある。1雌で2対の卵嚢を産み付けるが付着するものあると良いのでここではササの茎を刺しておく。まだ産卵する現場は観察していない。
       
暗い森にひっそりと               産卵して間もないまだ膨らまない

  
   新鮮な卵嚢                      産みたての卵嚢にプラナリアが群れている


        
   増水で泥を被って保護色に                  吸水し膨圧で確りした膜で保護している
  
     
干上がっても多少は耐えることができるようだ


2-4 卵嚢の中の胚の
言語学校水路(側溝)のサンショウウオの卵嚢と卵(胚)の数   2017年4月29日調査    

卵のう 長さ mm 幅mm 卵数 死卵 発生段階 胚の長さmm
1 78 25 65 12
2 75 25 53 9
3 75 20 43 2
4 65 20 39 11 尾芽胚中
5 65 20 60 0 尾芽胚中期 7
6 66 20 57 4 尾芽胚中期 8
7 69 20 59 4 尾芽胚中期 9
8 68 20 51 2 尾芽胚後期 12
9 70 22 42 30
10 65 20 40 5 10
11 65 18 40 9 10
12 70 18 47 6
13 65 18 49 13
14 70 20 51 0 尾芽胚中 8
15 66 20 60 7
16 62 20 54 3 11
17 60 21 56 3
18 58 17 30 1 オタマ
19 65 18 25 1 オタマ
20 65 18 42 0 オタマ
21 50 15 48 48 全滅無精卵
22 50 15 52 52 全滅無精卵
23 55 17 42 22
24 80 25 42 1 脱出前
25 85 20 32 4
26 65 20 31 0
27 65 22 33 0 脱出あり
28 65 22 33 0
29 75 25 42 0 脱出前
30 75 20 38 1 脱出前
31 70 21 30 0 脱出前
32 75 20 28 4
33 75 19 47 0
34 70 20 44 7 10
35 65 15 64 0 神経胚
36 70 18 55 0 神経胚
37 45 15 30 7
38 48 15 25 6
39 58 17 44 0
40 58 17 38 7
41 55 20 27 0
42 55 20 43 0
43 68 20 49 3
44 70 20 46 0
45 74 22 70 1
46 54 15 24 0
47 50 16 26 7 10
平均 65.25 19.38 43.53 6.21 9.5
最大値 85 25 70
最小値 45 15 24
卵嚢の数 84 個   そのうち 47個を測定  脱出後のものは測定しなかった。
尾芽胚後期の脱出前は鰓が出来、前足が隆起している状態で 体長10mmぐらい。
北側のものは死卵が多い。水流がないため窒息死か。測定はしていない。

2-5  幼生 

飼育したのでなく野外のものを観察して戻すので生長期間は分からない。7月中にほぼ陸上に上がる。
  
 卵嚢から脱出する幼生                 おたまじゃくし状態


       
小さく肢が出来た。共食いが起こる時期                        外鰓と四肢が発達 


      
   横の姿はサンショウウオ                 立派なウーパールーパー

       


    
   鰓が退化し平衡稈になる。               7月18日  そろそろ陸上に上がる時期   


2-6  成体  
上陸した変態後の成体は3〜4年して繁殖期を迎えるまで水辺には戻らず周辺の森の中で腐葉土の下で生活し湿った環境を好む。乾燥に弱い皮膚は夜行性であり発見は難しい。資料によると行動範囲は200mぐらいらしい。
2017.1.31に産卵場所の整備中、越冬中の成体を見つけた。水場から3mぐらい。4個体が固まっていた。すぐに近くに潜り込んだ。この時の写真を誤って消してしまったので、翌日に見に行ったら1雌が残っていた。その時の写真である。ミミズがいたのでそのトンネルを利用した居たようだ。坑道には彼らの足跡が残っていた。



2018.4.21 卵嚢調査の時にいた成体2雄を測定した記録

成体の測定
成体 体重g 身長cm
1 4 10
2 6 12

成体の記録
いずれも産卵期のものでほとんど雄である。
  


  
繁殖期の雄の生殖器 丸くYの字のすじ  (メスは細長く1本のすじ)

2-7  天敵
アメリカザリガニ
競輪場の暗渠から上流は封鎖された水系で外部から侵入する水生動物はいない。問題は以前から住んでいたアメリカザリガニでその食害は侮れない。3池でも異常な繁殖で、毎年アナゴ籠を使って駆除に励んでいる。

左がザリガニに食べられた卵嚢、右が被害なし

戸祭山トウキョウサンショウウオ卵嚢数確認数 年変化 林光武
卵嚢数 ザリガニ捕獲数
2002 25
2003 27 3200
2004 42 1100
2005 44 4065
2006 93 8820
2007 37 8057
2008 27 7932
2009 82 4512
2010 176 4190
2011 129 5423
2012 140 6387
2013 134 7715
2014 140 5414
2015 139 5169
2016 185 3610
2017 133 3448
2018 162 3112
 2019