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◆112〜115◆ちょっとした思い出 |
【116】平成20年10月15日(水曜)
和歌山競輪の「開設35周年記念・和歌山グランプリ」後節決勝戦は60年1月15日に行われ、馬場圭一のBSまくりに乗った伊藤豊明(愛媛41期)が鋭く抜き去りパーフェクト優勝を飾った。馬場が2着に粘り、中を割った伊藤浩が3着、打鐘から逃げた尾崎雅彦は8着に沈んだ。
前節は松村信定(高知)が優勝。後節配分の伊藤豊明、馬場は、この決勝レースを観戦。そして松村の快走に「よし、後節も四国で優勝」と二人は燃えていた。特選も馬場がまくり、伊藤豊明が差した。
伊藤豊明は「馬場君との呼吸がぴったり合っていた。今回は自分の力より、馬場君の強さがボクの優勝を引き出した」と、勝因を“馬場のお陰”と言った。
スタートは伊藤浩が決め、目標を馬場―伊藤豊明の後位に置いた。尾崎は早くも苦戦を強いられる流れになった。馬場ラインに西村暢一―兼松薫―小川博美も続き、尾崎には塚本昭司―松枝義幸が付いただけ。
赤板前で尾崎が上昇。イン切りのつもりだったが、打鐘前に誘導員が退避してしまった。後ろで塚本が馬場にあっさりさばかれ、尾崎は「松枝君が出てくると思った」とアテがはずれた。
打鐘から逃げては、さすがの尾崎も不利。馬場は「差し勝負でも良かったが、力試し」とバック手前でスパート。尾崎の抵抗を力で崩してしまった。伊藤豊明は難なく馬場を交わした。
今年は花月園に続き連続V。「初めての記念3連勝。このまま波に乗って記念を5本、特別を一つは取りたい」と、伊藤豊明は笑顔をのぞかせ、意欲に胸をふくらませた。
和歌山記念が終わって、翌16日からプロ野球担当記者として出発した。近鉄バファローズの番記者だが、さすがに未知の世界への不安感はぬぐいされなかった。
そんな気持ちでミナミの道頓堀を歩いていると、落車で入院中の中野信行を見舞って、和歌山帰りの千葉・井上馨と大沢仁にバッタリ。「フグを食べに行きたいんですけど」と言われ、馴染みの見せに出向いて一緒に食事をした。二人に励まされ、そして二人を励まして、不安感も吹き飛んだ。
4年後にレースへ戻って、取材先で二人に会うと「戻ってこれて良かったですね。フグ、美味しかったですね」と、懐かしい話しで花が咲いた。
また、馬場圭一、伊藤豊明も「ボクの原稿が最後でしたね」と覚えていてくれて、感激したものだ。
これで競輪、競艇を書きまくった若きころのスクラップはお終い。まだ紹介していない原稿も残っているが、また後日に。プロ野球担当としての4年間もエピソード満載、折りを見て書いていきたいと思います。
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【112】平成20年9月20日(土曜)
和歌山競輪の関西スポーツ5社杯をかけた「紀の国賞争奪戦」(59年12月23〜25に日)は、地元のエース金谷和貞(45期)に挑戦する近畿のホープ桜井邦彦(大阪50期)が話題のマトだった。
表彰台の晴れやかな顔はレース直後の悔しさを、みじんも感じさせなかった。競輪祭・新人王戦のことだ。優勝した小門洋一(神奈川49期)に一発、二発と張られ、それでも必死でペダルを踏んだ。結果は小門に2車身後れの2着。小門が49期1の意地を見せれば、桜井も50期1の意地をぶつけた戦いだった。
「とにかくハナを切りたかったんです。優勝よりも、そのことの方がボクには大事だった。だから着順には満足しても、内容に踏まんだった」
競輪王戦にはS1の強豪がズラリ。“名を売る”若い選手に目を光らせていた。オールスター(51922着)で下地を作り、新人王戦で一気に飛躍―思いはこれだった。
「目標にされる先行選手になりたいです。最近になって、先行のペースがわかりかけてきた。練習でもっと力をつけて、それで逃げ切るようにしないと」
直前の平記念(153着)の準決勝戦で佐々木昭彦が桜井の後位で滝沢正光と競り合った。“先行=桜井”の評価が上がった証拠だ。あとは押し切るパワーを身につけることだ。
「練習仲間は若い人ばかり。いい刺激になります。2期続けてS1も大丈夫です。来年は記念の決勝戦へ常時進出したい。そして、早く記念を取りたいですね。勉強することも多いし、本当の“力”をつけます」
50期の8位で卒業。A特進、S特進、昨年の新人戦には同期で唯一人参加。順調に歩み続け、来年1月にはS1の仲間入りだ。
「今年は準記念勝ちから始まったし、最後も(優勝で)締めくくりたい。でも、自分のレース(先行)をするのが先決です」
同型(先行)の多い今シリーズ。どう切り抜けるか。桜井には今年の集大成の場だ。
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【113】平成20年9月22日(月曜)
和歌山競輪のS級シリーズ「紀の国賞争奪」決勝戦(59年12月25日)は、金谷和貞(和歌山45期)を目標にした東内典之(和歌山48期)が、斎藤哲也(兵庫45期)のまくりにスイッチして抜け出し、4月の和歌山以来の優勝を飾った。
最終バックから4角まで、逃げる金谷と、まくる斎藤で激しいつば競り合いを展開。ジャンから飛び出していた金谷は4角で力尽きてダウン。斎藤もまくりきったが余力はない。
金谷後位から斎藤へ切り替えた東内は、斎藤追走の桑野治行(福井46期)をはねのけてフル回転。80`の巨体を自転車に乗せ、豪快に伸びきった。
「金谷さんのおかげ。ボクが逃げてもよかったが、結果的にああいう展開(金谷追走)になった。うれしい。前の時はインを突いて勝ったが、今回は外へ踏んだから」
ゴールと同時に喜びを前進で表した東内。鎖骨骨折後3場所目で“準記念”を優勝。走る前は「今回は無欲」のつもりだったが、いざ実戦に突入するとあふれんばかりの闘志をぶっつけた。
「来年は岸和田(S級シリーズ)、和歌山記念と続く。優勝の勢いをそのまま持って行く。勝負の年にします。S1にも挑戦します。やります」
希望に胸をふくらます東内。和歌山では金谷に続くS1へ、攻めの競走を確立させるつもりだ。
スタートを決めた桑野は斎藤に目標を置いた。続いて江嶋康光(福岡39期)―早崎敏治(熊本=現千葉=43期)。中団に金谷―東内―萩原操(三重51期)、後方に唐津信一郎(長野=元奈良=41期)、富原忠夫(徳島43期)が控えた。
富原は打鐘前に先行位置を奪ったが、さらに金谷―東内が富原をかぶせてしまった。斎藤以下も富原を捨て、和歌山コンビを追走。流れは東内に絶好となっていた。
東内選手は平成4年、福井競輪の落車事故に巻き込まれ、若くして他界した。ビッグレースにはオールスター競輪4回、高松宮杯競輪2回、全日本選抜競輪3回、ダービー1回、競輪祭2回と計12回出場するなど“近畿の暴れん坊”として活躍した。
【114】平成20年9月30日(火曜)
岸和田競輪の「スターカップ争奪戦」は60年1月6日が初日。馬場圭一(香川45期)、亀川修一(兵庫41期)、細川忠行(愛知46期)らが有力候補だが、地元の伊藤浩(大阪45期)も復活を期して臨む。そんな伊藤にスポットを…。
暮れの平記念146で4ヶ月ぶりの1着。選抜戦とはいえ、今年につながる貴重な勝利だった。
「あの1着でS1班にも残れた。イヤな年の最後に、いいことがあって、新たな年を迎えられました」
計5回の落車。決定的なダメージはなかったが、そのことごとくが打撲。練習に支障をきたした。努力でS1の座をつかんだ者にとって、練習不足は成績にモロに影響した。勝てない、ツキがない。どう考えても浮上の明確な答えはない。
「ガマンするしかなかった。それと練習です。後期(9月―12月)は決勝へ1回しか進めなかったけど、自分自身の動きはよくなっていた。今年は絶対に巻き返す」
賞金は約1千万円のダウン。初日の“特選”から“選抜”への格下げ。それでも音をあげない。平記念では流行の“イン切り”を封じる手も考えた。カマされても飛び付き、そのまま先行と“自在”の片鱗を見せた。
「僕らにとってイン切りは一番イヤな手。だから誘導員を交わして出て、飛び付くこともやらなければならない。平は記憶にないぐらいの先行。結果は6着でも納得がいった」
さあ、地元で“初仕事”だ。相手にとって不足はない。作戦は流動的でも、目はイキイキと輝きだした。
「気合が入ります。このあとも和歌山、甲子園、岸和田と地元ばかり走る。悪い成績だと気落ちするので“ヤル”としか言えません。見ていてください」
苦しみ、悩んだ59年は終わった。60年はバラ色の年へ、持ち前のスタンディングをいかした前攻めで“近畿一”の座を奪えるか。“スターカップ争奪戦”は今後を占う意味でも興味深い。
優勝は同期の馬場に奪われたが、決勝入りで面目は保った。
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【115】平成20年10月3日(金曜)
和歌山競輪の「開設35周年記念・和歌山グランプリ」後節は60年1月13日から3日間の開催。尾崎雅彦(東京)伊藤豊明(愛媛)が双璧の優勝候補だが、飛躍を期す馬場圭一(香川45期)がVに照準を合わせて乗り込んでくる。
昨年の稼ぎが3千500万円。第19位だ。賞金王の井上茂徳とは6千万円の差。あまりにも、かけ離れた数字だが、挑戦への光が見えかけているのは確かだ。
「取りこぼしを少なくしたい。勝てるメンバー、というより“本命”を背負うときは、やっぱり1着を奪う競走。強い人が相手だと挑戦者の気持ちで思い切って攻める。これが今年たてた目標です」
初めて特別の決勝戦へコマを進めた競輪祭(11月=543H着)。一発をねらう手もあったが、力試しの意味をこめて打鐘前から飛び出して先行。中野浩一にまくられたが、清嶋彰一の出バナはくじいた。結果は9着でも、自力=馬場のイメージを観戦中の各選手に与えた。
「自分では迷っていたが、走り出すと“えいっ!”と思って逃げた。納得がいきました。ひとつの経験ですからね」
三本松から高松市内へ移住したのが6月。街道練習ばかりのスケジュールが、街道とバンクを併用できるようになった。もちろん練習量は増えた。梨野英人という格好の相手もいる。
「高松は何かと便利。練習量も多くなっている。梨野君(昨年V6)に先を越されたし、これから巻き返していきますよ」
7月小松島失1@、11月岸和田失1@と、記念勝ちは2つ。この点が、もうひとつ伸び悩む一因だ。昇り目の選手は、記念を連取するものだ。滝沢正光にしても、佐々木昭彦、梨野にしてもそうだ。
直前の岸和田11@は“マクリ、差し、差し”と手堅く走って完全V。60年を順調に滑り出した。
「伊藤君(浩)には悪かったが、本命なら勝つことがファンの期待に応えるすべてでしょう。和歌山は、そんな甘いこともできない。先行もします」
記念V6達成への第一歩は、今回のグランプリ戦。“足馴らし”を終え、本格的に始動だ。尾崎、伊藤のトップランカーを相手に、パワフルに駆け回る。
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