鳥居誠の作業日記(その二)

2010年3月25日

 今年に入って「本牧亭を聴く会」等々でなかなか復刻作業に手が着かなかったのだが、ようやく1月にトライしてペンディングになっていた超劣化テープの復刻に再チャレンジしてみた。今回はあまりいいお知らせとは行かないのだが・・・。
 記録されたものは、第1回の「本牧亭を聴く会」の当日、当時これらを私費を投じて録音された竹本綾太夫師にお持ちいただいたテープなのだ。師のお宅で保管されてきたテープなので、義太夫協会の倉庫に積まれていたテープよりは状態はよいのではと期待していたのだが、何本か救えたものの現存する某メーカーのテープは全て状態が悪く・・・まずは今回の結果をご報告したい。
 前回の失敗をふまえて、今回は自宅の低音乾燥機(とは言っても炬燵を改良したようなもの)で数時間テープを乾燥させてから、よれよれになったリールをテレコに装着した。綾太夫師のご了解を得た上で、棒状になってしまった再生不能な外周部分は残念ながら処分させていただき、再生可能な部分からコピーを開始。右の写真のような部分を残念ながら撤去したのだが・・・。
棒状になって再生不能になった部分と、べたつきのひどい部分の残骸
 気を取り直していざ再生開始。前回は風通しのつもりでハードディスク(HD)の方は録音モードにしていなかったが、1回しか再生できない可能性もあったのでとにかくHDわ回しっぱなしにして再生をスタートさせた。テープはテープガイド(テープを安定させるテープレコーダーの装置)を調整しないとべたつきによるテープ鳴き(べたついたテープが金属部分と接触することにより細かい振動を起こす)してしまうので、テープに加わるテンション(引っ張る力)を手動で調整しながら再生を行った。テープの状態は悪いものの、記録されている音はしっかりとしたものだ。このまま順調に再生できればよいのだが・・・。それでも、途中で接触部分が汚れて走行が不安定になる度に数回、それらの部分を無水エタノールで清掃しながら再生を繰り返した。
 それでもリールの半分ぐらいまではなんとか再生が出来たのだが、そこから先はもはや手の付けられない状態に。まず、清掃してもテープのべとつきによってまずはキャプスタン(テープを走行させる車輪のような部分)に貼りついてしまってぶち切れてしまったのだ。
 テープをこれ以上痛めないよう慎重にこれをほどいて、切断された部分をつなぎ合わせて再生していくのだが、そのうちどう清掃してもテープ鳴きが納まらなくなってしまった。清掃と再生を繰り返すのだが・・・。

 というわけで、この某メーカーのテープは途中で断念。確認のためその先に早送りも試したが、ある部分からさきは既にテープ同志ががっちりと固まってしまっていて、それ以上テープがはがれてこない状態になっていた。

 なんとか再び巻き戻して、何かの機会にレコード会社のスタジオにあるオーブンでしっかりと焼いてもらってから再び挑戦してみるつもりだ。

今回はこれ以外で義太夫協会所蔵の練習テープなどは幾つか復刻したので、その分は復刻リストに掲載した。どのような方々の演奏が残っているか是非見ていただきたいと思う。また、これまでのものでも是非お聴かせしたい名演奏が多数あるのだから是非「本牧亭を聴く会」の第三弾も計画中だ。