飛鳥の不思議な石造物【奈良県明日香村】  2000.11.23

  •  飛鳥の里の、長閑な田園地帯を散策すると、かつてこの地帯が大化改新、日本国家成立までの激しく激動する時代の中心であったとは思えない。大和朝廷の王権をめぐる争い、それに絡んで二大豪族(蘇我氏、物部氏)の対立、政治・経済・社会が大きく変革したころ、なかでも中国・朝鮮からの仏教伝来は日本人の精神をも古代信仰(飛鳥神南備)から仏教文化へと変転させる。これらさまざまな出来事が、今、のどかな田園に点在する遺跡や遺物に秘められている。
  •   飛鳥には神でもない仏でもない不思議な石像物がいくつかある。なかでも猿石・亀石・二面石と呼ばれる奇怪な石像は、あたかも神から仏へと移り変わる時代を象徴するかのようでおもしろい。これらの石像はいずれも明日香村近辺で産する花崗岩で作られていて、年代は飛鳥時代と考えられている。石像物にまつわる伝説は数々あるが、誰が何の目的で作ったものか・・・・・。日本の石仏に時代的・様式的に直結するものでなく、韓国の慶州博物館などにある民間信仰の石像物の中によく似たものがあるところから、韓国からの渡来人が多かった飛鳥時代に彼らだけの信仰の対象として作られたとの説もあるが定かではない。その永遠の謎は飛鳥の魅力のひとつともなっている。 
  • ⇧高取城址の猿石 右側から

     

     

    ⇩ 橘寺の善悪二面石背中合わせの石像は、人の心の善悪を現わしている。

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  • ⇩ この石像2点はいずれも飛鳥時代の 庭園の噴水施設であったといわれている。底部から上部へ水が通じるようになっていて小さな孔から噴出する仕組みである。1903年(明治36)に明日 香村の石神の地で掘り出されたこれらの石像は、古墳時代の埴輪・石人や後の仏像彫刻の様式とも異なるところから猿石や善悪二面石などと同じ系統の石像であろうといわれている。福相を した爺さん婆さんの抱擁像は道祖神としても親しまれている。              飛鳥資料館所蔵