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糖尿病のお話

1.糖尿病とは

 糖尿病は、「膵臓から分泌されるインスリンの作用不足による慢性の高血糖状態を主な症状とする様々な代謝疾患群」と定義されています。

糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があります。

1型糖尿病はインスリンを合成、分泌する膵臓のランゲルハンス島の破壊や消失が主な原因となる糖尿病で小児期に発症するものが有名ですが、成人してから発症することも珍しくありません。

2型糖尿病はインスリンの分泌低下やインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」という状態をきたすような素因を含む複数の遺伝的因子に、過食(特に高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子や加齢が加わって発症するもので、中年以降によく見られる糖尿病です。

しかし、2型糖尿病も成人のみの病気ではなく、若年者でもみられることがあります。

2.10年以上も前から2型糖尿病は前兆がでている

 2型糖尿病は遺伝的因子に環境因子と加齢が加わって発症するので、ある日突然発症するわけではありません。糖尿病を発症するまでには、10年以上に渡る前駆状態の期間があると言われています。

前駆状態にある人では、食事を始めてから1時間後の血糖値(1時間値)は2型糖尿病を発症する12年も前から正常の人よりも高く、2時間後の血糖値(2時間値)も2型糖尿病発症の10年前から高くなっていると言われています。

これに比べ、健康診断などで血糖値として測定する空腹時血糖値(10時間以上絶食した状態の血糖値)は、2型糖尿病発症の1年前になってもほとんどの人が正常の範囲内(110mg/dl未満)であると言われています。

このような食後の一過性の異常な血糖上昇を食後高血糖と呼び、2型糖尿病の前触れとして極めて重要な兆候です。

3.糖負荷試験とは

健診の結果で空腹時血糖値が正常であっても食後高血糖を起こしている可能性があり、決して安心は出来ないということになります。

そこで、糖尿病の疑いのある方は「糖負荷試験(OGTT)」が必要となります。

この試験は、10時間以上絶食した状態で、一定量(ブドウ糖換算で75g)の糖分を含んだジュースを飲んでいただき、30分後、1時間後、2時間後の血糖値を調べるものです。

2時間値が200mg/dl以上の場合「糖尿病型」、140mg/dl未満の場合「正常型」、この中間を「境界型」と判定します。

さらに、空腹時血糖およびOGTT2時間値が正常であっても、OGTT1時間値が180mg/dl以上の方は糖尿病への移行が多いことから、このような方は正常型であっても境界型に準じた扱いが必要とされています。

4.健診と糖尿病

一般の健康診断で調べる項目で糖尿病に関するものは、空腹時血糖およびHbA1cの2つです。

健診の内容によっては、どちらか一つのこともあります。空腹時血糖は110mg/dl未満が正常で、126以上の場合には糖尿病を発症したと考えられます。110から125まではグレーゾーンであり、いわば予備軍と考えられます。

では、空腹時血糖値が正常範囲あるいはグレーゾーンであれば糖尿病ではないと言い切れるのでしょうか。

糖尿病の診断基準では、(1)早朝空腹時血糖値126mg/dl以上、(2)75gOGTTで2時間値200mg/dl以上、(3)随時血糖値200mg/dl以上 の3つのうち1つ以上が原則として2回以上確認された場合糖尿病と判定します。

ただし、他に糖尿病特有の口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状があったり、同時に測定したHbA1cが6.5以上の場合などの際は、1回の異常値確認で糖尿病の診断がつきます。

また、軽症の糖尿病の場合には、空腹時血糖値が125以下でも75gOGTT2時間値が200以上のこともあるため、確定させるには糖負荷試験が必要となります。

5.糖尿病の指標「HbA1c(NGSP)」について

HbA1c(NGSP)はエイチビーエーワンシー(またはヘモグロビンエーワンシー)と読み、過去1-2ヶ月間の平均血糖値を反映する指標です。

食事内容や運動量は毎日変化します。正常な人では変動に応じてインスリン分泌量が適切にコントロールされるため血糖値の変動は極めて狭い範囲で収まります。しかし糖尿病になると、このコントロールがうまくいかず、血糖値の変動が極めて大きくなってしまいます。

このため、単に血糖値を見ただけでは糖尿が良くなっているのか悪くなっているのか直接比較することが難しいのです。そこで、血糖の平均的状態を反映するHbA1c(NGSP)が糖尿病管理の指標としてよく使われます。

毎年の健診でいつも正常範囲内だから安心と考えずに、たとえ正常範囲であっても、年々HbA1c(NGSP)の値が増加していないかをチェックしていく必要があります。

6糖尿病管理のためのHbA1c(NGSP)目標値

糖尿病コントロールの指標としてはHbA1c(NGSP)が重視されています。

平成25年5月に従来の優、良、可(不十分、不良)、不可に分けられていた従来の「血糖コントロール指標と評価」に変わって、より実際の指導に適した目標値に改訂されました。

6.0未満を「血糖正常化を目指す際の目標値」
7.0未満を「合併症予防のための目標値」
8.0未満を「治療強化が困難な際の目標値」

糖尿病の重症度をイメージするためにHbA1c(NGSP)の値を熱に置き換えてみるというやり方を提唱されている方がおられます。

これは、HbA1cが8.0であれば38℃の熱が有る状態と考えるのです。38℃であればかなりの重症であるとイメージできます。10であれば40℃ということですから、相当な重症で場合によっては入院が必要ということも分かります。

また、6.9であればほぼ平熱に近く、5.9であれば心配はないというようにイメージできるので、この方法は優れたイメージ法であると思います。

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