気管支喘息の治療と管理について


気管支喘息(単に喘息ともいいます)は空気の通り道である気管支がアレルギーなどで炎症を起こし過敏になり、何かの刺激で腫れたり痰がでたりして狭くなり呼吸が苦しくなる慢性の病気です。

喘息の発作を引き起こすたびに気管支の粘膜は傷ついていきます。 これを長年続けると気管支の粘膜は元に戻れなくなるほど荒れた状態になり、ますます喘息発作を生じやすくなります。 そこで、現在の喘息に対する治療法の原則は「喘息の発作を予防的に治療し、症状を出来るだけ発現させない」ということが大切です。

なた、喘息は常に症状があるわけではなく、時間や体調、ストレスなどで強い発作が出たり症状がなかったりします。またダニの除去といった生活環境、習慣を改善する事で症状を軽くすることもでき医師の治療だけでは不十分で自己管理が極めて重要な病気です。


喘息予防・管理ガイドライン
喘息の治療は日本アレルギー学会によって発表された、「喘息予防・管理ガイドライン」により治療の統一化がはかられ基本的な治療方針が決められています。 
もちろん、患者さんの個人差や生活環境の違いもありすべて同じ治療を適用出来るわけではありませんが、医師、患者さんサイドで統一した指針として利用されているのです。 
大まかにその内容を記載します。



1. 喘息の自己管理(セルフケア)とQOL
喘息の状態が続くと、他の慢性疾患と同じく患者の日常生活が影響を受け、肉体活動、精神活動および社会活動が妨げられ、患者さんが幸せな満足のいく生活や人生が送れなくなります。すなわち生活の質、生命の質(QOLと言います)が悪くなります。このQOLを向上させるには、病状をコントロールし、発作のない状態を保ち、正常な肺機能を維持し、健康な人と変わらない日常生活ができるように適切な自己管理を行うことが大切です。自己管理とは、医師との対話を通じて喘息という病気や治療法を良く理解し、自分の喘息の状態とピークフローの測定値の変化に自ら適切に対応して急性発作や増悪を予防することです。医師からの指導を守るだけではなく、自分の健康は自ら守るという積極的は取り組みが重要です。

2. 喘息の重症度
自分の喘息の状態がどの程度悪いのか知ることは、喘息を自己管理する上で極めて重要です。喘息の重症度を症状の程度とピークフロー値の測定値から4段階に分けています。治療はこの重症度に合わせて段階的に軽い内容から重い内容に変わります。

●ステップ1(軽症間欠型):
喘鳴、咳、呼吸困難が間欠的で短く、週1〜2回おきる
夜間症状は月1〜2回
ピークフロー値は自己最良値の80%以上、日内変動率は20%以内

●ステップ2(軽症持続型):
症状が週2回以上、月2回以上日常生活や睡眠が妨げられる
夜間症状は月2回以上
ピークフロー値は自己最良値の70〜80%、変動率は20〜30%

●ステップ3(中等症持続型):
症状は慢性的、週1回以上日常生活や睡眠が妨げられる
夜間症状は週1回以上、吸入β刺激薬の頓用が毎日必要
ピークフロー値は自己最良値の60〜70%、変動率は30%以上

●ステップ4(重症持続型):
症状が持続、しばしば増悪、日常生活が制限され夜間症状も頻回
ピークフロー値は自己最良値の60%未満、変動率は30%以上
※ 日内変動率とは、ピークフロー値の変動する割合のことで、大きいほど症状が不安定

3. ピークフロー値について
喘息は外来診療が中心ですので、診察日以外は、日頃自分で喘息の状態を管理し発作の予防と速やかで適切な対処を心掛けねばなりません。それには患者さん自身が自分自身の喘息の重症度と増悪因子を判断することが必要です。そのため、喘息日記を記入して喘息発作の強さと回数を知り、さらに肺機能を客観的に評価するため自分で携帯用ピークフローメーターを使ってピークフロー値を測定します。これらの記録をみて医師はその後の治療の方法や指導の計画が作成でき、患者さんは自分自身の症状と薬剤の効果を実感できるのです。ピークフローの値は、喘息の発作症状が出るより2〜3日前に下がることもまれではありません。その場合にはたとえ発作を感じなくても治療薬を増量あるいは早めに使用するようにします。自己管理の目安としてピークフローの測定値が予測値あるいは自分の過去の最良値の80%以上かつ一日の変動率が20%以下であればコントロール良好で安心できます。50〜80%は要注意で治療の追加が必要ですし、50%未満は緊急事態ですので直ぐ医師に受診する必要があります。

4. 喘息の治療の目標
喘息は、遺伝因子と環境因子が絡んだ病因が不明な病気です。喘息体質と一括されていますが、いまだ根本的に治癒させる治療法はありません。現在、最善の治療は、気管支の炎症を起こして気管支を収縮させる原因やアレルゲンを除去すること、薬物療法により気管支の炎症を抑えて気管支を拡張し、気流制限と過敏性を改善して日常生活と肺機能を正常化し、患者さんのQOLを高めることです。

具体的にいえば喘息の治療は、次のような状態を目標に置いています。
(1) 建常人と変わらない生活と運動ができる。
(2) 正常に近い肺機能を維持する。
(3) 夜間や早朝の咳、呼吸困難がなく、睡眠が十分できる。
(4) 喘息発作がなく、増悪しない。
(5) 喘息で死亡しない。
(6) 治療薬による副作用がない。

このような状態をいかに維持する事が出来るかが治療の基本方針です。

5. アレルゲンの除去方法
喘息は遺伝的因子(アトピー素因、気道過敏性など)と環境因子が絡み合って、気道の炎症と過敏性の亢進が生じて発病すると考えられます。環境因子には、アレルゲンとなる特異的環境因子とさまざまな増悪因子(大気汚染物質や喫煙、薬物、ウイルスの呼吸器感染など)に分けられます。この環境因子を除去することが喘息の発病予防にとても大切です。アレルゲンは、室内と室外アレルゲンに分かれ、室内では家塵ダニ、カビ、ペット、職業アレルゲン、室外では花粉、昆虫アレルゲンが主要アレルゲンですが、喘息の予防は室内の環境対策が重要です。なかでもダニの除去は喘息の発病予防(一次予防)のみならず喘息症状を改善(二次予防)し、慢性化と重症化を防ぎます。生きているダニよりもダニの糞や死骸が細かくなった家塵のほうが喘息に悪いので殺ダニ剤を使うよりも紙パック集塵袋式の電気掃除機を念入りに使う方に効果があります。

6. 喘息の治療薬について
喘息の治療薬は大きく2種類に分けられます。一つは長期管理薬(コントローラー)と言い、喘息症状を軽減・消失させ肺機能を正常化し、その状態を維持させる薬です。これには吸入ステロイド薬、長期作用型の気管支拡張薬と抗アレルギー薬があります。他の一つは発作治療薬(レリーバー)というもので短期間使用する経口ステロイド薬と短時間作用する気管支拡張薬です。

重症度別に薬の組み合わせが変化します。 それは患者さんの状態で様々に変化します。このさじ加減がアレルギー専門医の腕の見せ所です。 さらに詳しい情報は医師までご質問下さい。


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