嚥下障害とは

嚥下とは?
 
まず、嚥下は「えんげ」と読みます。 嚥下とは、文字通り、飲み込むことです。 人間にとってもっとも大切な、まさに基本中の基本とも言うべき機能です。 難しく言うと、自分にとって栄養分である食物を理解(認知期)して口に入れ(捕食期)、歯と舌を使って嚥下できる大きさまで咀嚼(咀嚼期)しながら咽頭へ移送(口腔期)し、反射によって(咽頭期)食道へ導き、蠕動運動(食道期)で胃までおくる運動のことです。

嚥下障害とはこの一連の流れがどこかでうまくいかないことなのです。この嚥下という動作はほとんど無意識で行われていますが、実は、多くの脳神経が関わる複雑な動きなのです。 一方、多くの脳神経が関わるということはその経路のどこかが病気で障害されると嚥下の動きがうまくいかないということになります。

 
嚥下障害を診てくれる主治医は?

嚥下に関わる神経に問題を起こす病気や、咽、食道に問題を起こす病気は様々なので入院中に主治医である医師の専門領域が一定していません。 つまり、内科、脳神経外科、整形外科、小児科、あるいは耳鼻科など多岐に渡るのが現状です。 

 
退院後の療養は?

ある程度の時間が経ち、症状が固定すると在宅での療養、リハビリテーションが必要となります。 この時、嚥下障害について詳しい医師が主治医になればいいのですが、なかなか在宅医療で嚥下障害の評価やそれに合わせたリハビリテーションを指導できる医師は少ないのではないか思います。
 
嚥下障害の診察は?
 
箇条書きにしますとまず、元の病気の詳しい情報と現在の状況を詳しくお聞きします。 
1)嚥下障害の程度を診断します。
2)リハビリテーションが行えるかどうかを判断し、必要ならその計画を立てます。
3)リハビリテーション中の全身管理やリスク管理について担当する療法士、看護師、ご家族の方とも相談します。

また、診察の具体的な方法について少しだけ述べますと、

簡単な嚥下機能の評価法として少しの水を口に含み、飲み込んでもらい、喉頭(のどぼとけ)の動きを観察します。
さらに、必要な方は鼻から細いファイバースコープを入れ、直接肉眼でのどや食道の入り口の動きを観察します。 少量の水やゼリー、プリンを食べていただき、飲み込みの具合や誤嚥(気管に食物がはいること)の有無を観察します。 もちろん、これらの診察は在宅でも可能です。 診療所でも同じような診察をいたしますが、ファイバースコープでの映像をモニターで一緒にご覧いただく事が出来ます。
 

リハビリテーションの方法は?
 
実際の食物を使わないリハビリテーション(間接的訓練) と食物を使った リハビリテーション(直接的訓練) があります。 前者は主に口、舌、咽や呼吸、おなかの筋肉の訓練をしたり、口腔内の清掃や刺激を使った訓練です。 後者は食事を使ったリハビリテーションで、いろいろな形状の食物を使い、さらに患者さんの体位を変化させたりして行います。 
これらは、医師の指導のもと、理学療法師や看護師、さらにはご家族の協力が必要です。

 
最後に
 
いうまでもなく口からものを食べるということは 、人間にとって大きな楽しみであります。 この機能が失われるということはご本人にとり大変な身体的、精神的なショックです。 この楽しみを取り戻すためにも、積極的に嚥下障害の診断、治療、リハビリテーションに取り組んでいきたいと思います。

ページを閉じる

2006 (c) Ohnishi - ENT - Clinic All Rights Reserved 当サイト内の文章、画像などの全ての情報の権利は大西耳鼻咽喉科医院に帰属し、無断転用などを禁じます。