ジュニアサッカー

「全日本に出るには(J下部組織などの)クラブチームに入るしかない」のか?「子供たちのサッカーで、勝利をどの程度求めるべきか」など、いろいろ考えさせられます。

よく、「小学生のサッカーは勝ち負けは関係ない」「小学生のうちは楽しくサッカーができればいい」「試合には、皆が平等に出場できるようにした方がいい」などとよく言われますが、本当にそうでしょうか?
現在の学校教育は競争を否定しているように思えますが、実際社会に出れば競争はつきもの。サッカーを通して人と競うこと、勝負に負けること、チームで戦うことにより生まれる仲間意識、チームプレーなどを教えたいと思います。試合に出る機会の平等が重要なのではなく、練習を受ける機会の平等が重要です。その中で、試合に多く出られる選手とそうでない選手が生まれるのは自然なことなのです。それがスポーツなのです。勉強だって、同じじゃないですか。「教育を受ける機会の平等」といったって、望んでも全員が東大にいけるわけではありません。
また、「楽しさ」についても勘違いしてはいけないと思います。低学年ならまだしも、お遊びの練習ばかりやって子供たちに、「サッカーって楽しくて、大好き」なんて言わせたくありません。徐々に自分のスキルが上がっていくことに楽しさを見出してもらえるようにしたいものです。そのためには、個々の子供にあった目標設定をしています。同じプレーをしても、誉めてもらえる選手と誉めてもらえない選手がいるのは当然です、みんな1人1人のレベルが違うのですから。

最近、少年サッカーについて思うこと、感じることを書いてみました。


(1)小学校サッカーでの全国大会の必要性について

「小学生のサッカーには勝ち負けは重要ではない」と主張される方にとっては、不要なものと感じられるでしょう。しかし、サッカーも勝負ごとです。勝ち負けが関係ないということはありえません。「勝負最優先ではない」ことに、異論はありませんが、「勝負がどうでもいい」という考え方、そこまではいかなくとも、勝負を軽んじる考え方には賛同しかねます。ただえさえ、「なんでも平等主義」の今の学校教育、勝ち負けあるがスポーツを通して「競うこと」「負けて悔しがること」「勝って喜ぶこと」「がんばること」を学んで欲しいと思っています。そのためにも。年に1回、2回、勝負にこだわる大会があってもいいと思います。いや、あるべきだと思います。それでは、全国大会が必要なのでしょうか?
 大蔵FCのような、単一小学校を母体にしたチームにとっては、はっきり言って全国大会は無用です。なにせ、「目指せ都大会出場!」が目標なのですから。つまり、町田で2番か3番になれば万々歳です。大蔵にとって、全日本=町田地区予選(町田市大会)+αなわけです。(α=がんばれば都大会に出られる)ところが、大蔵FCよりレベルのチーム(「都大会出場は当然。できれば都大会で上位に食い込みたい。」というチーム)にとっては、全日本=都大会+β(β=とんでもなくがんばれば、ひょっとしたら全国大会に・・・・)なわけです。さらにレベルの高いJ下部組織などのチームにとっては、全日本=全国大会となるわけです。チームによるレベル差があるのは当然のことで、レベルの高いチームが真剣勝負をするには、レベルの高いチーム同士の大会、つまり全国大会が必要ということになります。ただ、全国少年サッカー大会について要望があります。大蔵のような普通のチームの選手にとっても、レベルの高い小学生(同士)の試合を見ることはとても役に立ちます。できれば、もっとテレビで放映して欲しいと思います。

(2)選抜チームの必要性について

小学校は、サッカーの基礎技術を身につけるのが最優先で、「いい選手をかき集めて選抜チームを作る必要はない」という人がいますが、それは違うと思います。(基礎技術優先という点については異論はありませんが)やはり、レベルの高いサッカーができる子は、レベルの高いサッカーができる子同士で集まってやった方が、より高いレベルのサッカーができるようになると思います。J下部組織を初めとする、名門・強豪チームは、少年サッカーにおいて重要な役割を果たしています。このようなチームに、将来サッカー選手になりたいと思っている子が、こぞって行きたがるのも無理はありません。特にJのチームは、将来のスター選手を発掘、育てるために下部組織として少年サッカーチームを運営しているわけですから、その延長上にはプロサッカーがあるわけです。東大を目指すために、良い中学校に行きたいという考え方と同じで、将来サッカー選手になりたいと思えば、J下部組織のチームに入りたいと思うのは、ごく普通の考え方だと思います。でも、近くにJ下部組織のチームがない場合は困ります。小学生が、電車で1時間以上もかけてサッカーに通うというのは、少し不自然でしょう。そこで、地域トレセンが重要な役割を果たします。確かに、J下部組織のように、延長線上にプロサッカーがあるわけではありませんし、J下部組織のチームほどレベルが高いわけではないのかもしれません。しかし、地域トレセンは、ある程度レベル以上の選手が、自分のチームに所属しながら、よりレベルの高いサッカーを学べる場所です。町田にはFC町田という選抜チームがあり、町田トレセンという意味合いを持っています。(町田市と稲城市で形成する4地区のトレセンというのもあります)大蔵FCからも5名の選手が参加していますが、レベルの高いメンバーの中でサッカーができ、大きな何かを得ていると思います。ただし、このようなトレセンと、クラブチームには大きな違いがあります。それは、トレセンはチームではないということです。よって、東京都のトレセン、地区選抜チームは公式戦に出場することはできないことになっています。それでも、トレセン同士の招待大会などに参加し試合をしていますし、「所定のレベルに達した、将来性のある子供に、よりレベルの高いサッカーを」という目的を十分果たしていると思います。より高いレベルで、サッカーをやりたいという子供たちにとって、選抜チームは必要なもので、その形態として「地域トレセン」と「J下部組織を含むクラブチーム」があるわけです。

(3)選抜チームの全日本少年サッカー大会への出場について

先にお話したとおり、東京都内の選抜チームは公式戦に出場できません。よって、FC町田は全日本(の予選)に出場できません。でも、同じ選抜チームであるJ下部組織チームは参加できますし、東京以外の地域では選抜チームが全国大会に出場することが可能な地域もあります。レベルの高い子供が、より高いレベルの本気勝負を体験するために、全国大会に限ってFC町田がチームとして出場(当然予選から)しても良いのではないかと思います。地域に密着した単一チームに所属しながら、地域の選抜チームで全国大会を夢見てサッカーができる。これは、ある意味理想に近い形態だと思うのですが。別に全国大会でなくても、関東大会でも構わないんです。何か、彼らの目標になるような大会であれば。東京近郊地区で、選抜チーム、クラブチームが入り混じって参加する、メジャーな大会があってもおもしろいと思うのですが・・・・(それに近い形態の大会が年々盛んになっているようで、喜ばしいことです)このあたりの考え方は、「少年サッカーは教育の延長」という面と「少年サッカーが日本のサッカー界の底辺を支えている」という面のいずれかを重んじるかで、意見が食い違うところだと思いますが。

(4)J下部組織などのクラブチームについて

大蔵FC所属のプロを目指している子は非常に素質があるとします。その子は、全国大会出場が狙えるようなJ下部ジュニアチームに行ってもレギュラーになる可能性があるくらいの実力です。ところが大蔵FCにいては、彼一人が頑張っても、全国大会はおろか都大会にも出場がおぼつきません。彼の実力は、FC町田入りは確実ですが、FC町田は公式戦に出られないので、全国大会に出場することはできません。彼が、どんなにすばらしい選手であっても、彼は、町田の弱小チームに所属する名も知れぬ一選手なわけです。プロへの道に乗りたければ、エリート集団たる有名クラブチーム(代表的なのがJ下部組織)のセレクションを受けることが最短コースで、そのようなチームにもぐりこめれば、結果的に、全国大会出場もぐっと近づくわけです。エリート集団というと、何か悪い印象を受けますが、決してそんなことはないと思います。日本語に直せば「精鋭」ですから。
確かに、J下部組織に所属してもプロになることが保証されたわけでは決してありません。J下部組織のユースに所属してもプロになれるのは、1割にも満たないのではないでしょうか。また、そういうエリート集団チームが性格的に合う子と、合わない子がいると思います。合わない子や、すぐうぬぼれて謙虚さを失う子は、J下部組織のようなチームに所属したことが、かえって成長を妨げる場合もあるかもしれません。遅咲きの選手は、最後の最後まで、普通のチームに所属したほうが良いこともあるでしょう。しかし、それでもJ下部組織のチームに所属することがプロへの最短コースであることには変わらないと思います。
いいじゃないですか、サッカーエリートの集団がいたって。エリートだからと言って、必ずしも成功するわけではありません。同じプロになるにしても、いろんなルートがあったほうが面白いじゃないですか。小学校からJ下部組織を歩んだ超エリートあり、高校選手権ではじめてメジャーになり見初められる選手あり、無名だけどセレクションを受けてテスト生を経てプロになる選手あり、道はいろいろあっていいのです。ただ、我々のような、底辺でサッカー界を支えるものとしては切に希望します。エリートチームに所属している選手が、プレーにおいても、人間としてもエリートにふさわしいサッカー選手であるよう育成することを。

3年生の終わりに、わがチームのエースY君が某Jリーグのジュニアチームのセレクションに受かり、親御さんから相談を受けました。わたしはまず、Y君本人と話しをしました。「必ずしもジュニアチームに入ったからといって、プロになれるとは限らないこと」、「レギュラーになれなくて、なかなか試合に出られないかもしれないこと」などを説明した上で、意思を確認したところ、「どうしてもやりたい。」とのことだったので、心配する親御さんに、「是非やらせてあげてください」と答えました。Y君は、5年生ながらも、先の全国少年サッカー大会の神奈川県大会の決勝に出場し、テレビでその勇姿を見せてくれました。残念ながら、決勝で負けてしまい、またポジションも本職外のキーパーでの出場だったので、私としては複雑な気持ちでしたが・・・・しかしながら、彼は、夢であるプロサッカー選手への道をしっかりと歩き始めているのです。今後も、順調に伸びていって欲しいと思います。

(5)大蔵でのサッカー指導

さて、大蔵のような単独チームでどのようなサッカーを目指しましょうか?どうせ都大会で優勝して、全国大会を目指すなんていうのは困難だから、「勝負にはこだわらず、楽しさ最優先のサッカーを・・・」などという気はまったくありません。学校で教えてくれないからこそ、競争することの厳しさ、勝つことの難しさ、負けることの悔しさなどをサッカー(スポーツ)を通して学んで欲しいと思っています。ただし、勝負に対するこだわり方のバランスが難しいですね。勝ちにこだわりすぎると、良いサッカーができない、つまり子供たちの将来のサッカーにつながらないと思います。ついつい勝負にこだわりすぎ反省することしきりですが、私個人としては、「良いサッカーをしたい。あるいは、今はそこまでできなけれど、いずれ良いサッカーが出来るように、基本技術をきちんと身につけて欲しい」という思いが、指導の基本です。だから、試合では、結果も当然のことながら、内容をすごく気にします。(試合結果のコメントを見ていただければわかると思いますが)それこそ、強豪クラブチームと戦った時に、0−5で完敗しても、「結構いいサッカーしますねぇ」と言ってもらえるよう、子供たちと頑張っています。
大蔵の選手達が高校生くらいになった時、お互い別々のチームの主力選手として対戦して欲しいですね。「おたがいキャプテンマークをつけて対戦した」なんてことになってくれたら、いうことなしですよね。そんな場面が沢山生まれてくれたらいいなあ。そのためには、基礎技術をきちんと身につけて欲しいと思います。基礎を身につけていないために、中学時代に伸び悩み、高校になったらほとんどの子がサッカーをやめてしまった、なんていうことになると悲しいですから。


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