システムとポジション(特にコンバートについて)

私は、チームのシステムはどういう選手がいるかによって、決めるべきだと思います。システムを決めて、そこに選手をはめ込んでいくやり方もあるのですが、少年サッカーに限って言えば、子供達の個性を尊重すべきだと思います。たとえ自分が、3−4−3のシステムが好きだとしても、メンバーの中にサイドアタッカータイプの選手が2人いなければ、2トップあるいは1トップにすべきです。戦術に子供達をはめ込むのは、小学生のサッカーでは早すぎると思っています。
(この考え方に関しては異論も多いと思いますが)

ただ、DFの布陣に関して言うのであれば、小学生のうちは3バックの方がいいと思います。理由はカンタン。多くのチームが2トップなので2DF+カバーリング=3バックという方がわかりやすいですよね。ゾーンで守るのであれば、4バックの方が守りやすいと思いますが、それは「ゾーンディフェンスとはなんぞや?」ということを理解した上での話です。2トップ1トップ下という、一般的布陣に4バック+ボランチで対応するときの取り決め、例えば、
@サイドにボールがあるときの逆サイドのポジショニングとボランチ
  とのバランスや、
Aボランチがドリブルで抜かれた場合の対処の仕方、
B相手の攻撃に対する守備人数が多すぎるので、攻撃にも積極的
  に参加しなければならない。誰かが上がってしまった時の穴埋め
  はどうするのか? 
  ・・・・・などなど、沢山の決めごとが必要になります。

有能なコーチが時間をかければ、そのあたりを教えることも可能でしょうが、我々のような「お父さんコーチ」では限界がありますし、そういう戦術的なことに時間を割くより、もっと基本的な技術の修得に時間を割きたいという思いがあります。相手FWをマンツーマンでマークし、1人余らせるというのが小学校レベルのサッカーの基本ではないかと思います。相手がポジション変更をしたときのマークの受け渡し、ドリブル突破された時のマークのずらし方、相手が1トップや、3トップだった場合の対処の仕方など、マンツーマンを基本にしたディフェンスでも、将来的にゾーンディフェンスに切り替えるための基本的事項(小学生として必要な)は十分学べると思います。

大蔵の現在の基本陣形は3−5ー2です。低学年のころは4−4−2(スイーパーあり)でした。現在は、3バックが2トップを受け持ち、ダブルボランチの1枚が相手のトップ下につく形です。でもそれって、4バックで、サイドバックがトップについて、ストッパーがトップ下につくのと同じですよね。ダブルボランチのポジショニングを臨機応変に変えられる(縦関係、横関係)ということ以外、実は両方のシステムで実体は何も変わらないのです。ストッパーとか、センターバックというより「ボランチ」という響きを子供達は好みます。何より「ボランチ」はDFではないと言うことが、子供達にとっては大きいようです。「ストッパー」というとディフェンス意識が強くなりすぎ、づるづる下がって守ってしまいますが、ボランチだとチャンスで前に出ていきます。ダブルボランチが交代でストッパーをやっているのが、現在の大蔵の3−5−2です。しかし、あくまでも基本陣形ですので、そのときの事情で変わります。

ポジションは、核になる選手の特徴を生かして埋めていきますが、そのポジションに別の有力選手が被ったりすると、非常に困ります。例えば、「エースAクンはトップ下だったのですが、別の有力選手が伸びてきて、彼にもトップ下をやらせたい。」なんてことがありました。さてどうするか?我々がとった手段は2つ。
@1トップにして、トップを1枚外し、トップ下を2枚にした(3−6−1)
Aボランチを1枚外し、トップ下を2枚にした(変形3−5−2)
3バック1ボランチという信じられない布陣だったが、なかなか攻撃的な布陣でした。まあ、これはほんの一例です。ポジションを1枚変えるだけならいいのですが、同時に2カ所、3カ所をいじるとなると大変です。あちらを立てればこちらが立たず、という状態になります。そのため、ポジションが重なったとき、「本当はCクンの方がそのポジションに適しているのだが、Dクンは潰しがきかない。Dクンを外すのは勿体ないから、器用なCクンには別のポジションでやってもらおう」なんてこともあります。それがきっかけで、Cクンが移動先のポジションで新境地を開くなんて事もあります。
陣形としては、他にも3−4−3、3−3−3−1などにもトライしていますがしっくりこないですし、試合中に勝手に子供達がポジションを変更しており、陣形はキックオフの時の並び方という感じでしょうか。

さて、振り返って見ますと、ポジション変更の対象になるのはどういう選手でしょうか?
@基本的技術が所定レベル以上であること
足が速いけど、トラップやドリブルが下手な子は、FWとしては生きる道はあると 思いますが、MFにはちょっと難しいと思います。「ある程度、どこのポジションでもこなせるそうという技術が必要です。」
A個性がさほど強くない
これは、性格の問題ではありません。サッカーのプレースタイルの個性です。 @とも大きく関わっています。いい意味ではオールラウンダー、悪い意味では特徴がない選手は対象になりやすいと思います。(なんとか特徴を見いだせないか、コーチ陣は四苦八苦して、ポジションをいじります)
B主力選手でないこと
これは、かならずしも重要なファクターではありません。場合によっては、主力選手だからこそ、コンバートすることもあります。ただし、主力選手をコンバートする場合はインパクトが大きいので、コーチ陣としては勇気がいります。
C性格的に弱くないこと
ポジションを変えると、「オレ、何か悪いプレーしたのかな?」「レギュラー落ちしそうなのかな?」とか、やけに心配する子がいます。(結構多いと思います)ポジションを変えることにより、テンションが下がりそうな子には、気を使います。ただ、「この子には必要だ」「この子のためにはその方がいい」と判断すれば、説明してコンバートのトライをします。

さて、大蔵で一番多くのポジションにチャレンジしたのは誰でしょうか?(練習試合でちょっとやってみたというのは入れません)
<第1位> ムラ(6ポジション)
  トップ、トップ下、サイドMF、ボランチ、サイドバック、スイーパー
<第2位> モリ(5ポジション)
  トップ下、サイドMF、ボランチ、スイーパー、ストッパー
<第2位> コウジ(5ポジション)
  スイーパー、ストッパー、ボランチ、トップ下、トップ
(その他、4つの選手は沢山います。ずっとポジションが変わっていないのは、キーパーのマサシだけです。)
ムラは本当にどこでもできる技術があるので、いろいろトライしてもらっています。足の速さ、フィジカル、技術、どの面でも大蔵では上位に入ってきます。ある意味器用貧乏といえますが、落ち着いたプレーができるので、最近はスイーパーに固定されました。しかし、チャンスがあればもう1度ボランチあたりをやらせたいなぁと思っています。モリはテクニシャンで、非常にカンが良く、プレーにセンスが感じられます。なかなかどのポジションにもフィットしなかったのですが、最近メンタル面での成長が見られ、ボランチ、トップ下で本領を発揮し始めました。素質が感じられる彼らを生かそうと、いろいろトライする過程で、レギュラーポジションからはじき出される選手がでてきます。逆にポジションが空いてラッキーな選手もいます。5年生の半ば過ぎに彼らのポジションがカチッと決まり、ようやく懸案だった両サイドのMFの育成に手をかけられるようになりました。そのころから、大蔵のサッカーが良いサッカーになってきたと思います。
さて、ポジション変更が多かったもう1人のコウジは、モリ・ムラとは少し事情が違います。チーム状況に合わせて、ポジションを変わってもらっています。逆に言うと、とばっちりを受けている選手ということになります。(父親がコーチという不利もあるかもしれません)彼は基本技術レベルが所定以上であるうえに、新しいポジションを前向きになんとかこなそうとします。つまり、使う側としては便利な選手なのです。申し訳なかった一面もありますが、今にして思うと、彼にとっては良い経験になったかなぁとも思います。彼については、また改めて書きます。

ポジション変更により、レギュラーメンバーが変わったり、レギュラーではあるが意中のポジションからはずれたり、悲喜こもごもですが、それもサッカーの一部と割り切れる選手はどんどん伸びていますね。

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