すべての大会を終えて                 (執筆 03.03.20)


最後の2ヶ月、代表チームはラストスパートをかけました。

鶴川カップ 優勝
町田チャンピオンズカップ 準優勝
明正招待  優勝
境川招待  優勝


もうジュニア生活もあとわずかのここへ来て、伸びている子が何人もいて、その結果いい成績が残せているのは嬉しい限りです。普通なら、MFAが終了するとモチベーションが下がるのですが、鶴川カップがあり、さらにはチャンピオンズカップの出場権利を獲得したことが、皆のモチベーションを最後まで維持できたのだと思います。最後の最後まで、子供達のモチベーションを保ちたいという意図で、この時期に開かれている2つの大会の思惑通りになりました。

高いモチベーションで最後までサッカーに取り組んでいる選手達ですが、ジュニアサッカーの終盤に来て、最も伸びているのは、KTR、OT、MR、王です。

元々フィジカルでは定評のあるKTRでしたが、試合中の集中力に大きな課題を持っていました。しかしここへきて、カバーリング意識も高くなり、1試合集中力を持続させミスのないプレーができるようになりました。この安定感は、他チームのコーチたちも認めるところです。4月からはFC町田Jrユースで活躍すること間違いないと確信しています。
OTは元々マンマークに定評がありました。ドリブラーへの対応能力は非常に高く、コーチ陣たちでもドリブルをカットされることもしばしばです。ただ、ボランチには有力選手が多く、出場の機会に恵まれませんでした。特に、プレースタイルが似ている5年生Iチャンとのフィジカルの差はいかんともしがたく、レギュラーの座を確保できない状態がずっと続きました。しかし、全日終了以降は、ベストメンバーが揃っての試合は全くなかったため、出場機会に恵まれるようになり、徐々に頭角を現しました。体も少ししっかりしてきた上に、ポジショニング、読みがいいため、鋭い出足でインターセプトして攻撃につばげる場面も多くなってきました。1試合を通した集中力なども含め総合すると、Iチャンに匹敵する戦力になりました。攻撃に関する、パスミスが多いという課題についてはまだまだですが、最近ではシュートに対する意識が高まっており(最後の大会となった境川招待で、見事なロングシートを決めた)これからまだまだ伸びそうです。
MRは、サッカーを始めてまだ2年程度で、技術的な課題は山積状態です。しかし、サッカーに対するセンスがあるので、ここへきて一気にレギュラーポジションを確保し、非常に大きな戦力になっています。本当は、もう少し技術的な部分をきちんとして送り出してあげたいのですが、こればかりは一朝一夕ではどうにもなりません。中学に進んでもサッカーを続けるようなので、きちんとした技術を身につけていって欲しいと思います。
最大の成長株は王です。元々サッカーセンスには定評がありましたが、肉体的、精神的なひ弱さが弱点でした。しかし、ここに来て、フィジカルがしっかりしてきて、それに伴って気持ちが前に出てくるようになりました。活動量も豊富で、ボランチとして中盤の汗かき役をしっかりこなしてくれています。さらに、攻撃への寄与がぐーんとアップ。攻撃の起点になったり、相手陣に押し込んだときの、2次攻撃、3次攻撃のキープレーヤーになっています。
他にも、今にも、もうひと伸びしそうという選手が何人かいます。ここでお別れになるのは本当に残念ですね。。。。

さて、今年に入ってからの結果については、まあまあ満足のいくものでしたが、プレー内容について総括したいと思います。
鶴川カップの初日は、インターセプト狙うような積極的なプレーが少なく、ディフェンスの連携の悪さも目につきました。ボランチとディフェンス、ボランチとトップ下の位置関係(バランス)が悪く中盤にスペースが空き過ぎたり、攻め込まれるとおしこまれっぱなしになるなどのシーンもありました。しかし、2日目の「いつでもインターセプトを意識すること」「ボランチが2枚共上がったり2枚共下がったりせずバランスを保つこと」という指示に答えて、見違えるように安定していました。この、守備の安定化には、ゴールキーパーMの指示によるところも大きかったですね。的確な指示が、良いタイミングで、大きな声で出ていました。鶴川カップの2日目からチャンピオンズカップの間の守備に関しては、右サイドのDF、MFの連携が悪い場面が何度か見られた以外はほぼ完璧でした。右サイドハーフに起用する選手はオフェンシブな選手なの、守備に関しては、こちらも覚悟の上でのことですから仕方がないでしょう。その後の2つの招待大会では、DFのレギュラーが不出場であるのに守備が安定していたのは、鶴川カップ、チャンピオンズカップで得た自信が、良い方に作用していたと思います。

攻撃に関しては、さわやか杯以降は個人の頑張りに頼る形になっていました。これは、攻撃の要、エースKCがいないため仕方がなかったことだと思います。王とKJが絡んだときに、狭い局面で面白い形も見られましたが、所詮2人の展開ではたかが知れています。3年生の頃、YっちゃんとKC、4年生のKCとKJの2枚の攻撃では、強いチーム相手には通用しなかったことからも明らかです。しかし、個人で頑張らないと得点が入らない状況を体験し、その中でそれなりの結果(招待大会に優勝したり、強豪チームと練習試合で互角に戦ったり)を残せたことは、攻撃の選手たちにとって良い経験になり、自信にもつながったでしょう。6年の終わりの大蔵の攻撃力は、さわやか杯の頃よりも大幅にアップしていると思います。
鶴川カップの序盤戦は、KCがまだチームに馴染みきれず、局面局面で個人ががんばる事による得点が多かったと思います。しかし、鶴川カップを戦うにつれ、徐々にチームでの攻撃が見られるようになりました。「ボールを奪った地点から早く、細かく動かす」という、大蔵本来のプレーも見られるようになってきました。王、KC、KJの3人がからんだ時に、おもしろい展開が沢山見られました。攻撃の絡みが2人から3人に、KC独特のボールさばきが冴え、最後の最後に面白いサッカーを見せてくれたことは、コーチ陣にとって本当に嬉しいことでした。さらに、今まで展開に絡むとボールの流れを止めてしまうことが多かったMが、この3人の中の展開に時々うまく絡めるようになってきました。もともと裏を狙う動きに定評があり、KJからのスルーパスは大蔵の大きな武器だったのですが、Mが展開に絡めるようになり、攻撃の幅がますます広がったように思います。最後の境川招待には、KJ抜きでしたが、KC、M、王の3人を中心に、素晴らしい攻撃を見せていました。高尾さんのように、守備がいい相手になると、展開だけでは打開できない場面もありましたが・・・・・

ディフェンスの攻撃意識については、大蔵の大きな課題でした。大蔵の場合3バックなので攻撃参加というのは難しいと思いますが、DFの攻撃参加は上がって行ってシュート、センターリングというプレーに限りません。ディフェンスがボールを奪ったらクリアというだけではなく、場合によってはきちんとつなぎ攻撃の起点になることは立派な攻撃参加です。危険な場合にきちんとクリアするのは当然ですが、DFも攻撃参加するサッカーを目指すために、単に、フィジカルが強く、ボールが蹴れる選手をディフェンスに起用するのではなく(重要なファクターではありますが)きちんとしたつなぎのプレーができそうな選手を意識して起用しています。そうは言っても、ディフェンスはミスが即失点につながるポジションなのでセーフティー第一でプレーするのが当然で、勝利を意識すると仕方がない一面がありますが、つなげる時にはきちんとつなぐ意識は植え付けたいと思っています。秋以降、ようやくカバーに入った味方にボールを落として展開をするプレーが安定して来ました。まだ、確実につなぐというところまではいっていないのですが、パスに近い意識で狙って蹴れるようになってきました。大きな進歩ではありますがもう一歩という感じでしょうか。中学に進んでも、このあたりは意識してやっていって欲しいと思います。オーバーラップによるDFの攻撃参加するついては、サイドMFの守備意識とDFとのコンビネーションに関わるので、DFの選手の問題だけではなく難しい話ですが、こちらも最近になりごく稀に見られるようになりました。特に左サイドに関しては、DF KTRの個人能力と、左サイドのMF Hの守備意識の高さ生かして、もう少し時間があれば大蔵の攻撃パターンの1つにできたのですが・・・・・ これまた時間切れで残念です。

具体的に印象に残っているプレイをいくつか上げてみました。

(1)GK MSの安定したプレー
大蔵の守備のベースはGK MSのプレーです。ミスがなく安定したプレー。勇気ある前への飛び出し。そしてなにより、時には叱り、時には励まし、的確な指示を出すコーチングは大蔵サッカーには欠かせません。

(2)MKのカバーリング

最終ラインのMKが自分から積極的にボールの処理するようになってきた。後ろから声をかけてボールを落としてもらい、前線に有効なフィードをする場面も増えた。MKのプレーの質が変わることにより、大蔵の守備の安定感が増した。1対1になったときの駆け引き、強さに課題があるが、最近では、ここ一番にスライディングで窮地を救うことも多くなり、本当に頼もしい。

(3)KTRのインターセプトからのロングシュート
相手のパスをカットした時、全部ダイレクトでクリア処理をしていた。それでは勿体ないので、余裕がある場合は、きちんとトラップして落ち着いて処理するようアドバイスしたところ、相手のロングボールをトラップし、ドリブルから目の覚めるようなロングシュートを決めた。今までの大蔵になかったプレイ。今回は、シュートという形になったが、シチュエーションによってはクロスあるいはスルーパスというのもあり得るはず。インターセプト→早いドリブル→シュート、ラストパスというプレーを自分の特徴の1つとして欲しいですね。

(4)中盤の選手のインターセプトのチャレンジ
インターセプトを常に意識することと、完全にマイボールにできなくても、先に触れそうなボールは、積極的にボールに触りに行く事を決勝トーナメントの課題としたが、今までと比較して圧倒的にインターセプトの回数が増え、また、中盤で自由にやられる場面が減った。王、OTのボランチ陣に加え、KTRのインターセプトが目立った。しかし、両サイドのMFに関してはまだまだという感じ。(まだ読みが浅い)

(5)ボランチからの攻撃

(4)で述べたように、ボランチが積極的にインターセプトを狙い、ボールに絡めるようになった。特に、王、OTのコンビでは、1枚が前に出たら1枚がカバーリングというようなコンビネーションがいい良くなってきた。1枚が積極的に出て、こぼれたボールをもう1枚が拾うプレーが出始めている。さらに、奪ったボールをすばやく動かし、攻撃の起点になっています。

(6)サイドのドリブル突破

右サイドのODがサイドでボールを奪ってそのまま突破、左サイドをKCがテクニックで突破、スローインからKJが右サイドを突破という3つのパターンが複数回見られた。ただ、この形からは残念ながら得点にあまり結びついていない。逆サイドのMF、トップ下、ボランチなどがもっとゴール前に殺到しなければ・・・・ 最後の最後まで解決できなかった、最大の課題でした

(7)サイドでのつなぎ

サイドのMFは守備もして、サイドアタックもかけてと、高いフィジカルが要求される。大蔵の中で、スピードと体力的の納涼区が高い選手は、ODとKCだ。KCはつなぎ、ゲームメークもできるので、うってつけの選手といえる。さらに、鶴川カップでは、1試合だけ王をサイドに起用した。王はスピードはないものの、きちんとしたプレーができるのでサイドでボールを落ち着かせることができ、良いゲーム運びができた。しかし、選手の資質から言うとDFのKTRがサイドにうってつけだと思う。別のディフェンスを育て切れなかったこと、最近までケンタロウ自身が丁寧なサッカーを身につけられなかったためトライできなかったのが残念。

(8)中央のドリブル突破

大蔵ではKJと王が得意です。特にKJの半ば強引と思われるドリブル突破は最近では大蔵の武器の一つになっています。力強いドリブルはパワーだけではできません。パワフルに突き進みながらもきちんと足元にボールをキープし続けるのもテクニックだと思います。準決勝高尾戦でドリブル突破してPKをとったプレイ(しかしPKは外した)などは彼らしい中央突破でした。ただ、ドリブルで中央突破する快感に魅せられて、不要にドリブルをしかける場面も多く、的確な判断に基づいたプレーの選択が望まれます。(少年サッカーなんであまり細かいことはいいたくありませんが)一方、練習中のミニゲームなどでは、元々、中央突破は王の専売特許でした。ただし、いざゲームになるとなかなか期待したようなプレーを見ることができませんでした。しかし、ここへきて明正招待で中央突破からのクリーンシュートを見せてくれました。卒団間際、ぎりぎりで彼のベストプレーを見ることが出来ました。

(9)細かいつなぎ

中盤での細かいつなぎは、大蔵の特徴のひとつです。準決勝・決勝戦の中では、何度もそういうプレーがみられました。王→KC→MRと細かくつないでMRがフリーで抜け出したプレーは見事でした。(MRがキーパーと1対1を決めきれず)また、王→KC→KJとつないでいる間に王がDFの裏に飛び出しKJからパスを受けて突破したプレイもすばらしかった。いままでは、ショートパスのあとのプレーはショートパスかドブルになってしまい、細かいプレーが始まると、とことん細かくなっていたが、このプレーでは、ショート→ショート→ロングという素晴らしい展開だった。なお、このショートパス攻撃が有効なのは、3人以上が絡んだ時である。さわやか杯以降コウイチが戦線離脱したため、つなぎに絡むメンバーが3人に満たず、大蔵らしい細かいつなぎは影を潜めていた。ここへきて、KCチが復帰し、かつ、MRが時々展開にからめるようになってきて、良い展開が多く見ることができるようになった。

(10)SK、MRのタイミングが良い飛び出し

大蔵にはディフェンスの裏を絶えず狙っているというタイプが少ない。あまりにも、「なんでもかんでも裏狙い」だと、「ちょっと馬鹿っぽいなぁ」と思うが、引いて受けてばかりの選手よりはよほど良い。大蔵で裏を積極的に狙うタイプは、MRとSKくらいだ。(KCは裏を狙うプレーは好きではない。KJはスピードがないので狙わない)
鶴川カップ予選で、SKはディフェンスの裏に積極的に飛び出し、KTR、KJなどからのパスを受け次々と得点した。彼の特徴が本当に良く出ていたと思う。ただし、強いチームとの対戦で、相手のディフェンスがいい場合、積極的にマークをはずす動きや、タイミングがずれた時の動き直しに課題あり。気持ち、プレーの方向が前に向けている時にはいいプレーをするので、気持ちで引かないこと、前に向くためのプレー上での努力、工夫について考えるようになって欲しいですね。
一方、MRは動きや、技術の点ではまだまだだ。裏を狙う動きは直線的に裏を取りに行く動きと膨らんでタイミングを図り、スペースを確保しながら飛び出すタイミングを狙う動きに大別されるが、今のところNRは前者しかできない。そのためパスの出し手とすれば、パスを出すタイミングが限定される。ここだというタイミングを逃せばオフサイドになるし、直線的に縦に入るため、パスも縦目になる。強すぎればキーパーボールになるため、柔らかいボールを意識しなけばならない。時間的にも、空間的にも精度が要求されるのである。それでも彼に良いパスが通るのは動き出しのタイミングが非常にいいこととスピードの緩急をうまく使っているためである。走るスピードが速いというより、ゼロ発進の加速速性能に目を見張る物がある。膨らむ動きと、一度タイミングが合わなかったときの動き直しが出来るようになれば、本当に怖い選手になる。また、MRはボールの出てくるコースを感じ取る能力が高いようだ。ボールが通るコースをイメージできているから、ゴール前での反応も素早い。チャピオンズカップ準決勝の境川戦の先取点、王のシュートのようなクロスに反応したプレーは、大蔵の外の選手では真似ができないプレーだった。鶴川カップの優勝、チャンピオンズカップの準優勝は、MRの成長なくしてあり得ないものだった。だが彼には、実に大きな課題がある。サッカーを始めたのが遅く、トラップ、キックなどが未だにきちんとできない。中学に進んでも、基本技術の習得はきちんと続けて欲しい。

ここへきて、本当に良いプレイが見られるようになった代表チームですが、大蔵FCというチームでの活動は終了です。これからというところで本当に名残惜しいのですが、これも人生です。中学に進んでも、各チームで頑張って欲しいと思います。思い切りの良いプレイを、丁寧に、かつ精一杯にやって欲しいと思います。

コーチの部屋へ...