専門職のお立場から一文を寄せていただきました。

強迫性障害の治療

みなさん、こんにちは!臨床心理士の新明一星です。私は2012年から現在まで、強迫性障害の治療や研究をしてきました。強迫性障害は、40人に1人が罹病すると言われています。
そして、生活に最も影響を及ぼす疾患の順位の中で10位に位置するとも言われます。
治療は、抗うつ薬(SSRI)に並び、曝露反応妨害法の効果が実証されていますが、「治療にたどり着けない」、「開始できない」、「継続できない」ために、 回復に至らない方が多くいらっしゃいます。強迫性障害は、ストレス、喪失体験、心的外傷体験などが背景にあって発症することが多く、ストレス(引きこもり、家族との葛藤など)により症状は悪化します。 時間の経過で症状が改善することは稀で、むしろ、繰り返し行う洗浄や確認などの儀式を長期間続ければ続けるほど、症状は重篤化します。 儀式をすれば問題は解決すると考え、支援を求める時期が遅くなってしまうのも、この病気の特徴です。
「儀式が長時間化し、疲労し、睡眠時間を削ってもやめられない」、「家族との関係も悪化し居場所がない」という状況になると、症状は悪化の一途を辿ることが多くなります。 ぜひ、強迫性障害について学んでいただき、必要な取り組みについて知っていただきたいと思います。
強迫性障害は治らない病気ではありません。儀式を続ける習慣が確固たるものだからです。長期間続けていると、何が普通で、何が症状なのかの区別に迷う方も多いことでしょう。 儀式をやめるためには、不安・不快感に耐える力を徐々に高めていくことが必要ですが、ある方にとっては、強迫性障害を治すということは、生き方を変えることに等しいかもしれません。 私は治療の中で、どのように症状が出現したか、自分の中での儀式の位置付けを振り返ることがありますが、こういったことが役立つこともあります。治療の仕方は、100人いれば100通りのアプローチがあるものです。
自閉症スペクトラム障害(発達障害)と強迫性障害が重複することも少なくありません。 感覚過敏に相まって不安を強く感じる方が多いのですが、自分の特性を理解し、納得した上で、行動を変えていくことで症状を軽減させることができます。 治療は辛いからやりたくないという声もよく聞きます。実際には、辛いだけではなく、誰かと一緒に不安・不快感に向き合うことで得られる感動や成長があります。
ご家族の方の関わり方でも、症状が変わっていくのがこの病気の特徴です。 そして、ご家族もまた、苦労や孤独感が癒される必要があります。このような観点からも、強迫友の会OBRIの取り組みは、非常に貴重なもので、 支援者としても必要性を強く感じています。皆様の人生が明るく、希望に満ちたものとなりますことをお祈りいたします。

児童期の強迫性障害について

強迫性障害は、強迫神経症ともよばれ、これまで神経症のひとつとされてきましたが、最近の診断基準では不安障害の一つに分 類され、生物学的な要因が強調されるようになりました。
薬物療法も進み、うつ病と同じく、脳の神経伝達物質であるセロトニンを脳の中で増やす(近年、日本で市販された)選択的セロトニン再吸収阻害剤 (SSRI)が有効であることがよく知られるようになりました。
また精神療法も、かつて主流であった精神分析的なものよりも、行動療法に基づくアプローチの方が有効であることがはっきりしてきました。
脳の中でも、前頭葉―辺縁系―基底核の(脳の中の神経ネットワークの)ループの障害が推定され画像研究も出てきています。
強迫性障害の有病率は低く見積もられていましたが、大規模な調査が進むと有病率は2~3%と推定され、児童・青年期においても1%以上あるようです。 発症年齢は、15歳以前の発症は強迫性障害全体の20~35%にものぼり、10歳以前の発症も外国の文献では少なくありません。「発症」を定義してお り、発達障害とは一線を画していますが、上記のように早期発症で継続する場合には、発達障害に準じて考え支援や治療にあたった方がよいのではないかと も思われます。
強迫性障害は、強迫観念と強迫行為からなります。
強迫観念は意に反して侵入的に浮かんでくる思考やイメージ、衝動であり、例えば、身体からの排泄物や汚れなどへの嫌悪、何か怖いことが起こるのではな いかとの恐れ、対称性や秩序や正確さへの心配や欲求、過度な几帳面、幸運や不運な数字のげんを担ぐなどがあります。
また、強迫行為としては、過剰な手洗いや入浴、反復される儀式、鍵などの確認、接触、数かぞえ、買いだめ、などがあります。
症状は、児童期と成人期では、基本的に内容にはに大差はないようです。しかし、児童は養育者に依存して生活しているので、より「他者巻き込み的」とな りやすく、親を強迫儀式に巻き込むことが顕著なようです。
これまで強迫性障害は、精神分析の病理仮説に基づく解釈が多かったので、どうしても家族が責められがちでしたが、これは正しくないことが最近では明ら かです。
強迫性障害において家族は加害者ではなく、患者さん本人と同時に強迫性障害によって苦しめられてきた被害者です。
患者さんのご家族から教えられることですが、巻き込みの症状はとても過酷で、家族なかでも母親をとても追い詰めます。
医療のみならず、児童福祉や、保健、家族会、NPOやボランティアなど様々な立場の人が連携して支援にあたることも必要でしょう。
今でも、勇気を持って相談に行っても、正しい診断や治療が得られず、孤立してしまう患者さんや家族が残念ながら多いようです。精神保健福祉センターや 保健所、児童相談所、教育相談センターなどによる適切なリードがもっと期待されています。