回想録「オホーツクの大地に生きる」から

十九、凍み芋(127頁) 

今の時代ではこんなことを書いても誰も分からないだろう。
 二月頃から北海道は寒い日が続く。その頃に芋を屋外に出して置いてカチカチに凍らせる。その凍み芋に煮湯をかける。すると芋の薄皮が剥けやすくなる。一つ一つきれいに剥くとお餅のようにふわふわした裸芋のできあがり。
 それを針金に一つ一つ串刺しにして三尺ほどの輪にし、灰汁抜きするために雪解けの冷たい川で晒す。家では裏の小川で氷に穴を開け、横棒を渡し、これに串刺しにした芋を吊して二十日ほど晒しておく。 更にこの灰汁抜き晒し芋を、カラカラになるまで小屋の梁に吊して乾燥させる。乾燥させた芋は何年置いても変わらない、これを凍み芋という。
 この凍み芋はその後臼で潰しただけではだめ、これを挽き臼で粉にするのです。粉に挽いてしまえば後は簡単です。食べるときはただお湯をいれて捏ねるだけでいいのです。
 なんと時間と手間のかかることですが、売れ残った芋やあまりそうな芋を利用します。凍み芋にしておくと保存も利いて何よりもダンゴが美味しかった。

 臼といえばとバッタリという臼があった。春になるとこの臼で裸麦を精麦した思いが頭にうかんでくる。